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2008年11月15日 (土)

「野ブタ。をプロデュース」 白岩玄

野ブタ。をプロデュース (河出文庫 し 14-1)

野ブタ。をプロデュース

白岩玄

河出文庫 2008.10. 
(original 2004)

文藝賞を受賞したときに、ちょっと気になって、その後、アイドル主演のドラマ化によって大ブレイクしてしまった作品。ようやく文庫化したので早速読んでみました。

主人公は高校2年生の桐谷修二。彼は常に、いつどこで何をすれば良いのかを計算し、キャラを作ることで、人気者になることに全てをかけているような少年。ある日、彼のクラスに転校生がやってくるが、それはクラス中が「キモイ」と思いひいてしまうような少年、信太(シンタ)。修二もまた彼を「野ブタ」と呼び、ネタにすることでクラスメイトの笑いをとっていた。

そんなある日、不良グループに目をつけられイジメを受けそうになった信太はひょんなことから修二に助けられ、修二に弟子入りを申し出る。こうして、修二はプロデューサーとして信太をクラスの人気者にすべく動き始めるのだが・・・。

どうしても受け入れがたい部分が何点かあって、思ったほど楽しめない作品でした。

確かにテンポは良いし、いかに「キャラ」を作るかということに全てをつぎ込んでいる主人公なんかはとても現代的だし、本当の自分と演じる自分とか、色々と面白いテーマもあるんだけど、なんかなぁ・・・という感じ。

この作品、文体がちょっと稚拙な部分がある上に、「(笑)」とかを普通に使っているのがまず受け入れがたいところ。しかし、これはまだ、高校生の修二の独白形式ということから、彼のような高校生が書いた文を想定して敢えてそう書いているのだと思えば、まぁ許容できる範囲。ま、それでも、会話の鍵括弧内の最後に「(笑)」を入れるってのは無しにも程があるんですが・・・。こういうのを使ってても、気にならない作品もあるのにねぇ。

あとはですね、「野ブタ」くんを、愛されるいじられキャラに仕立て上げることで人気者にしようとするという展開があまりに酷い。修二が笑いをとらせるために信太に課すことは、どれもやりすぎで、結局、修二は自分の言いなりになる信太を使って楽しんでいるようにしか思えず、結果的に人気者になったとはいえ、信太はそこにたどり着くまで、どれだけの我慢をしたのだろうか、というのが気になってしまったのですよ。

でもって、ま、やはりというか、それなりに因果応報が訪れる終盤ですが、その後の締めくくり方が完全に無しでしょ。実際にはこういう懲りないプロデューサーってのは沢山いるけれど、完全に「逃げ」ってのは・・・。ダメだったら全てを捨てて新天地へ行ってやり直せばいいみたいな結末は(重大なネタバレを含むため反転)、それこそ多くの中高生が読んだであろう小説としては不適切だったと思います。(YA作品として書かれてるわけではないだろうし、教育のための小説ではないけれど、少なくとも、普段あまり読書をしないような子供たちは影響を受けてしまいかねません。)

この路線のラストを作るんだったら自分だったら、転落した修二君は、たとえば、3年生になってやってきた担任が新任の先生で、他の生徒達からは総スカンをくらうも、今度はこっそりと先生をプロデュースして、人気者になった先生の姿を見て、未だに自分の手中で転がっている同級生達を見て一人悦に入ってるようなラストのほうがまだ良かったなぁと。「転校」ってのは、完全にフィールドを移してしまって「逃げ」以外の何ものでもないですからね。(以上妄想ラスト企画でした。)

今って、テレビでもやたら「キャラ」をいかにして構築して、それを守るかみたいなのが主流になってしまっていて、いつどの番組を見ても、同じ人が同じ言動を繰り返すようなものばかりなんですが、10数年前の自分の中高時代の生活でも「キャラ」って概念は既に見られるようになっていたように思います。これって、絶対にいつかは「キャラ」を守るために自分の気持ちに反するようなことをしなければいけない時が訪れるわけで、とても疲れる生き方だなぁと思います。

そんな彼らを「お疲れ様~」と思って、相手にせずに過ごそうものなら、「孤高キャラ」を与えられてしまうという、なんとも息苦しいことこの上ない現実です。ま、僕は、適当に乗って、適当に距離を置いて、自分で楽しんじゃうタイプですが。

これ、テレビ版は見てないんだけれど、野ブタ。を女生徒にしてしまったら、色々と話が作りづらいんじゃないかと思うんですけど、どうなんですかね。キャスティングに微妙に抵抗を感じてしまって見てなかったんですが、個人的に名作だと思う作品を非常に多くてがけている木皿泉の脚本ということなので、どのようにまとめているのかがちょっと気になります。

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