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2008年12月 7日 (日)

映画「つぐない」

つぐない [DVD]

atonement

2007年

イギリス・フランス

マキューアンの原作を読んだときから(正確には読む前からですが)、ずっと観たかった映画版。時間がうまく合わなかったりで劇場公開を逃し、ようやく観ることができました。

時は1935年のイギリス。空想が好きで小説を書くのが大好きな13歳の少女ブライオニーは久々に帰ってくる兄を迎えるために従姉弟たちと自作の戯曲を上演しようと張り切っていた。そして、その日、彼女は様々な偶然から、使用人の息子であるロビー(ジェームズ・マカヴォイ)と姉のセシーリア(キーラ・ナイトレイ)との間の不自然な場面に何度か遭遇し、その夜、とある事件が起きた際に、ブライオニーの証言により、悲劇が引き起こされる。という物語。

この映画、結構面白かったんですが、いかんせん、原作が素晴らしすぎるので、それを読んだ後だと、どうしても物足りないんですよねぇ。

原作を読んだときに、下手に映画化すると単なるメロドラマになるのではないかという危惧があったのですが、そこまで悪い映画化ではなかったのでほっと一安心だったものの、やはりこの作品の真髄は「小説」であることに必然性を持っているので、映画だと全体的にインパクトに欠けてしまったかなぁと。

ただ、前半の子供時代編は、原作も素晴らしかったのですが、英国大好きな自分としては、あのお屋敷の映像を見られただけで大興奮。原作の緻密な描写にはやはり劣ってしまうものの、割と大満足でした。(完全に評価が甘くなってるます・・・)

途中、戦場の場面があるんですが、この部分の映像がちょっと幻想的な演出になっているのが、最後の展開を知って観ていたので、なるほど上手いな、と感心しちゃいました。戦場の場面だけは、ブライオニーからしてみれば本当に想像するしかありませんからね。(ネタバレになってしまったので反転させてます。)

あと戦場の長回しのシーンは、物語の本筋とはそこまで関係ない感じもしますが、とても印象に残る場面でした。

ラストシーンでテレビを使ったり、冒頭からBGMにずっと仕込まれてる仕掛けも、映画でこの作品を再現しようと頑張ってるのが感じられて、なかなか好感だったんですが、そうなってくると、やっぱりこの作品は「小説」で楽しむのが1番なんですよねぇ・・・。

ただ、この主演&監督コンビの「プライドと偏見」は完全に原作のダイジェスト版みたいな感じになっていたのに対して、今回はエピソードの選び方や演出の仕方が洗練されていて、原作のダイジェストみたいな雰囲気になっていなくて、キャストも皆さん素晴らしいまでの熱演だったので、上述したように、観る前にあった不安が杞憂に終わったのは嬉しかったかなぁと。

「つぐない」(原作の訳では「贖罪」)の本当の意味が分かる場面は、色々な思いがわきあがるんですが、果たして、その罪はつぐなわれるのかどうか、これ、原作だともうちょっと自分の気持ちを語ってくれてるんですが、ただの自己満足なのか、色々と考えさせられますよね。あまりに重過ぎる十字架を背負うのは本当に辛いですよね(←やっぱりタイトルは「贖罪」のほうが良いと思う)。しかも(ネタバレなので反転させてください)この作品を書いたブライオニーは認知症。全ては藪の中という感じですね。(ここまで)

さらにネタバレコメントなので反転させてどうぞ。

再会場面で、ロビーが激しく怒りをあらわにしますが、おそらく彼は誰よりも身分の違いを肌で感じていたはずだし(イギリスでこれはかなり大きいはず)、手紙を渡し間違えた後ろめたさもあっただろうし、果たして彼があそこまで彼女を攻めるのかどうかというのも気になるところです。これはやはりブライオニーの罪の意識が作り上げたロビーなんだろうなぁと。

(ネタバレ終わり)

* * *

参考過去レビュー

これはもう原作ですよ。

「贖罪」 イアン・マキューアン

映画を観た方は是非是非原作の方も読んでいただきたいと思います。
マキューアン作品は外れなしで面白いです!

ついでに同じく映画化されてるマキューアン作品を。

映画「Jの悲劇

原作はコチラ

「愛の続き」 イアン・マキューアン

ちなみにこちらは映画化としては割りと残念な感じです。

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コメント

こんばんは。

わたしは普段、滅多に映画を観て、原作を読みたいと思わないのですが、
この映画を観た時、これこそ、小説でなければならなかった…
映画の原作としてではなく、小説として先に出会うべきだった…と
かなり後悔してしまいました。
『アヒルと鴨のコインロッカー』で、「小説で騙されたかった」と思った時と、
似て非なる残念さでした。
早速小説を買ってきて、これから下巻に入るところです。
読み終えたら、今度は『贖罪』のほうへお邪魔しますね。

『プライドと偏見』は、わたしもダイジェスト版だと感じてしまった上に
Mr.ダーシーにちっとも惹かれなかったので^^;
世間の評判の良さをよそに、なんだかなぁ、だったのですが、
今回は、やはり小説には勝てないものの、
うまく作られているんじゃないか、と上巻を読む限りでは思いました。
ジェームズ・マカヴォイがとってもよかったせいもあるんでしょうが(笑)
マキューアンの小説にもまた、興味が出てきました。

投稿: 悠雅 | 2008年12月 8日 (月) 22時13分

私は原作に関しては未読なんですが、この小説的な世界を持ったこの映画に出会えたことが凄く嬉しかったです。
タイプライターを叩く音をBGMとして用いたところなど、本当に素晴らしいと思える映画でした。

是非機会あらば原作も読んでみたいと思います。

投稿: にゃむばなな | 2008年12月 9日 (火) 15時48分

>悠雅さん

コメントありがとうございます。

原作モノは、先に原作を読んでいると、
映画にがっかりしてしまうことが多いので、
どちらを先に見るかはなかなか難しい問題ですよね。

でも、『日の名残り』や、『その名にちなんで』、
そしてこの作品のように、映画化されても
満足のいく内容のものに出会えるととても嬉しいです。

『プライドと偏見』は恐らく
BBCのドラマを観てしまってるのが原因だとも思いますが、
やっぱりダイジェストっぽかったですよねぇ。

マキューアン、興味をもたれましたら、
是非「愛の続き」を読んでください。
これこそ原作を読んで、映画のイメージを
払拭してもらいたい作品なので。


>にゃむばななさん

コメントどうもありがとうございます。

この作品は、大きなお屋敷やら、戦争やら
文芸大作の見本みたいな場面が多くて、
映画化したら良い作品になるだろうなとは思いつつ、
内容が、本当に「小説」であることがキーだったので、
結構不安いっぱいで鑑賞しました。

しかし、しかし、
そんな不安を晴らしてくれるような映画化だったので、
とても嬉しかったです。

原作、上下巻に分かれていて、
ちょっと量が多いですけど、
良い作品ですので、是非是非機会があれば
お読みになってください。

投稿: ANDRE | 2008年12月10日 (水) 01時17分

はじめまして。私のブログにコメントを頂きありがとうございました。

テーマ的にメロドラマになるのを危惧(というか、そうだろうと思いこんでました)したのは私も同様。
でもそうじゃなくていい映画でした。
…でも原作はもっと良いんですね。
…探してるけど古本屋には無いんだよなぁ今のところ。

私のブログでも頂いたコメントへの返事を書かせていただいています。良かったら読みに来てくださいね。
では、また来させていただきます。今後とも宜しくお願いいたします。

投稿: ピロEK | 2008年12月14日 (日) 00時38分

>ピロEKさん

コメントどうもありがとうございます!
こちらこそ、よろしくお願いします。

原作を読んで、
物語の表面的なところだけをなぞったら
昼メロになってしまうのではとかなり心配したんですが、
多少の不満はあるものの、
映画化としては十分な合格点で、
とても嬉しい作品となりました。

原作はオチを含めて、
ほとんど同じ内容ですが、
やはり原作のほうが作品の奥行きが深いように思います。
機会がありましたら是非お読みになってみてください。

投稿: ANDRE | 2008年12月15日 (月) 20時57分

こんにちは。

何の気なしにこの映画を見てみたんですが、あまりの映像の美しさに3回見てしまいました。
初めて映画に恋しちゃいましたよ。

とくに戦場のシーンが綺麗だなーと思ったんですが、そうかー、「想像」の映像化だから、幻想的で、ちょっとありえないようなところもあるんですね。
ブライオニーの原風景である英国の田園風景にちょっと似ているのも、そのせいなんですかね。
そうかー、深いなー…。

mixi日記にcaps画像満載で記事を書いたので、そっちもぜひみてみてね!

投稿: リスト係 | 2010年4月 2日 (金) 05時26分

>リスト係

この映画、面白かったでしょ!!!

原作のイメージを壊すことなく見事に映画化してくれて
感謝せずにはいられない作品で、
本当に映像は美しいよね~。

しかし、原作はもっと面白いのですよ。
機会があれば是非読んでみてください。

投稿: ANDRE | 2010年4月 4日 (日) 01時18分

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