映画「あの日の指輪を待つきみへ」
closing the ring 2007年 イギリス・カナダ・アメリカ |
夏に公開してて、ちょっと気になっていた作品です。最近、DVD化するのが早いですねぇ。
1991年、アメリカ。夫デヴィッドを亡くした老婦エセルは夫の友人だったテディに恋をしていた50年前の思い出に浸っていた。同じ頃、不安定な情勢が続くアイルランドのベルファストでは、近所の老人と一緒に50年前に飛行機が墜落した丘を掘り起こしていた青年がそこで1つの指輪を発見するのだが・・・。
もっと、大河ロマンみたいな感じの作品なのかと思っていたのですが、アイルランド問題などをからめてきて、割と硬派なサイドストーリーもあって、思っていたよりもずっと重厚感(?)のある作品でした。良くも悪くも80歳を越えるリチャード・アッテンボロー監督の作品にかける意欲がバシバシと伝わってきました。
91年のエセルをシャーリー・マクレーン、50年間、エセルを見守ってきた友人ジャックをクリストファー・プラマー、アイルランドで墜落機を発掘する男クィンランをピート・ボスルスウェイト(英国映画ファンとしては嬉しいキャスティング)とベテラン俳優達の存在感がとにかく素晴らしかったです。
あとは、若き日のエセルを演じたミーシャ・バートンがとても綺麗でした☆彼女、「The OC」のときよりも可愛さが引き出されていたように思います。別に脱ぐ必要はなかったと思うけど。
ただ、ちょっと盛り込みすぎだったような気も。これ、純粋にストーリーだけを取り出してみると、まるで内容がないというかなんというか。結局このメインのストーリーの薄さみたいのがどんなに一生懸命演出してもカバーしきれてないんですよね。時間や空間を複雑に入組ませてくる割には、謎解きの面白さみたいなものもあまりなかったように思います。
さて、この物語、エセルが主人公ですが、彼女よりも印象に残ったのは50年間、エセルと同じくらいに葛藤してきたであろうジャック。純粋で奥手なジャックが呪縛から解き放たれる姿はとても良かったです。クリストファー・プラマーは相変わらずカッコイイですよね。今でもトラップ大佐のときと変わらぬりりしさがあります。
アイルランドの問題って結構複雑で、その辺りの背景を知らないと色々と分かりづらい部分もある作品なんですが、本編とはあまり関係のないサイドストーリーがちょっと難しいというのは、結局どっちに集中して見れば良いのかが良く分からないですよねぇ。(これは単に自分の理解力の問題ですが)無理して詰め込まなくても良い気がしないでもないです。
50年間秘めた思いの重さというものが、今の自分には想像の域をでないもので、そう意味では、監督をはじめとして、しっかりと歳を重ねてきたキャスト陣の熱演と、その本当の意味を理解するためにも、数十年後にまた見直してみたいなと思える作品でもありました。そしたらもっと面白いと思えるかもしれません。
てかさ、これ、なんだかんだでエセルが独身を貫けばよかったのでは?とか思ってしまうのはダメなんでしょうか・・・。
ところで、またまた、変な邦題シリーズに新しく1作品が加わりましたね。別に待ってないし・・・。これだと渡せなかった結婚指輪の話だと思っちゃいますよねぇ。原題は「輪を閉じる」ということで、登場人物たちが抱えた50年間の様々な思いがゆっくりと閉じていく様が感じられて良いタイトルだと思います。
* * *
参考過去レビュー
映画「麦の穂をゆらす風」
アイルランド問題はこちらでお勉強を。ちょっと時代が前だけど。
映画「きみに読む物語」
50年前の恋ということで、見る前のイメージはこの映画のような感じだったんですが・・・。
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コメント
こんにちは!
TB&コメントありがとうございます。
エセルかジャックに感情移入できないと、秘めた愛に感動できませんよねぇ。
いらだっている娘にはちょっと感情移入できました。
投稿: チヒルカ | 2008年12月29日 (月) 02時39分
>チヒルカさん
コメントどうもありがとうございます。
割と良い作品だったいう褒め言葉ばかりが多い中、
自分も何かひっかかってそこまでハマれなかったので、
チヒルカさんの記事を読んで、
そうなんだよ!、と思わず共感してしまいました。
年齢的な問題もあるのかもしれませんが、
自分もジャックやエセルの気持ちが
そこまで理解しきれないので
(そういう思いが生じるというのは頭では分かるのですが)、
また年月を経てから鑑賞すると違う感想が得られるのかなと
思った次第です。
投稿: ANDRE | 2008年12月29日 (月) 23時31分
こんばんは。
ANDREさんならこの映画をどうご覧になるかとお邪魔しました。
やっぱり、お若い方にとって、50年って言われてもわかんないですよねぇ。
わたしだってまだ、50年しか生きてないもの。
わたしは、大多数のヒロインへの不評に反し、
「21歳で純粋に交わした約束に縛られた人間たちの物語」として
かなり俯瞰して観ていました。
一方で、エセル・アンは実は、長い年月の間に、無意識のうちに夫や娘を愛していて、
それが、恋人への裏切り行為だと後ろめたく、約束に縋るように生きてきたのかな、と思ったり。
なので、あの丘で全てが許されるのだと泣くことができ、解放されたのかな…とか。
まぁ、自分が納得しやすい想像なんですが。
IRAが絡んで来なくてもいいんじゃないか、と思ったりする反面、
言わんとすることもわからなくもなく、
ピート・ポスルスウェイトやブレンダ・フリッカーはじめ、
よく英国作品の脇役に登場するおじさん(名前、覚えてません)の顔もあったことも嬉しく、
全体で、なんとなく○、なのでした。
投稿: 悠雅 | 2009年6月 2日 (火) 21時02分
>悠雅さん
コメントどうもありがとうございます!
イギリス好きとしては見逃せない作品ですよね~。
メインキャストはもちろんのこと、
英国の名脇役俳優たちがしっかりと脇を固めていたのは
嬉しかったのですが、
どうもヒロインの気持ちが分からず・・・。
ただ、
>無意識のうちに夫や娘を愛していて、
>それが、恋人への裏切り行為だと後ろめたく
この部分で、なるほど!と思いました。
流石、悠雅さんです!!
こう考えるとヒロインへの不信感がかなり和らぐし、
作品をもうちょっと理解できますね!!
ちょっと目から鱗でした!
投稿: ANDRE | 2009年6月 4日 (木) 01時22分