「アマリア」 シルヴィ・ケッコネン
アマリア シルヴィ・ケッコネン 1000点世界文学大系(北欧編1) |
友人がフィンランドで働くかもしれないという話をきいて、ちょっとフィンランドの小説でも読もうかなと書店で探していたところ、たまたま見つけた1冊。作者は、元フィンランドの大統領夫人という経歴を持つ方だそうです。
舞台は20世紀中期のフィンランド。主人公のアマリアは家にきていた小作人と結婚し、両親の死後は住んでいた家を相続し、子供にも恵まれ、兄弟たちやその家族らとも交流しながら毎日家畜の世話などの仕事に励んでいた。そんなあるとき、戦争にいった夫の訃報が届くのだが・・・。強くたくましく生きる一人の女性の姿を描く物語。
とーっても面白そうなシリーズ名がついている割には、出版社もマイナーなら、このシリーズが刊行されていることさえほとんど知られていないのでは。今年の6月に刊行されたこの本が1冊目でその後も数冊刊行されているものの、ネットで検索してもほとんど話題が出てきません(ちなみに本の形式は新書です)。広告的なものも見かけた記憶がないですし、大型書店の片隅でひっそりと見つけたんですが、このような意欲的なシリーズは尻切れトンボにならずにできるところまで頑張って刊行していただきたいところです。1000点とかなり強気にでてますし。ただ、横書きなのはちょっとどうかなと思いますが。
と、シリーズそのものは褒めておきつつ、肝心の作品のほうは正直ちょっと肌に合いませんでした。横書きで小説を読むことに慣れていないので、はじめはそのせいでのれてないのかなとも思ったんですが、物語そのものにあまりハマれなかった感じ。フィンランドの近代史なんかもよく分からないので、作品背景もちょっと分かりづらかったんですよね。
ただ、20世紀中期のフィンランドの人々の生活の様子がとても詳しく描写されている作品なので、そういう点では、自分があまり知らなかった地域の人々の暮らしを知ることができて、興味深い1冊でした。風呂に入るべき場面で出てくるのがサウナだったり、なかなかのカルチャーショックです。
夫に先立たれ、家族や地元の人々に支えられながら強くたくましく生きるアマリアの姿は確かにグッとくるものがあるんですが、全体的に淡々としていて、主人公達の思いとかが感じづらかったんですよねぇ。
あと、ちょっと気になった点が。この本、校正ミスがありました。少し気になる漢字とか句読点の位置とかはもしかしたら訳者のこだわりなのかもしれませんが、「。」がピリオドの「.」になってる箇所があるとかってのは完全なミス。こういうのって、大手出版社だとなかなか見かけないので、逆に新鮮ではあったのですが・・・。
参考過去レビュー
フィンランド作家といえば「ムーミン」でおなじみのこの方。
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