映画「譜めくりの女」
la tourneuse de pages 2006年 フランス |
ここ数年すっかりファンになっているカトリーヌ・フロの主演作ということで、気になっていた作品。独特の見せ方をするフレンチミステリーでした。
物語はいつもピアノの練習に励んでいた肉屋の娘メラニーの音楽学校の受験から始まる。彼女がピアノを弾いている最中に、試験官の一人でピアニストのアリアーヌ(カトリーヌ・フロ)は入室してきた女性にサインを求められ、アリアーヌがそれに応じたことに気を取られたメラニーは演奏を中断してしまい、受験に失敗してしまう。
年月が過ぎ、成長したメラニーは弁護士事務所で実習生として働いていたが、弁護士のジャンが住みこみの子守りを探していることを知り、彼の家で働くことになる。ジャンの妻だったアリアーヌは楽譜がよめるメラニーのことを気に入り、彼女に譜めくりを依頼するのだが・・・。
いやはや、とにかく地味に怖い作品でした。この作品、とにかく登場人物が多くを語らなくて、心に秘めた思いをちょっとした表情や仕草で見せる場面が多いんですけど、その無言の中に感じられる、様々な思惑にゾクゾクさせられました。ラストもほとんど台詞を使わずに全てを描くんですけど、下手な台詞や映像でみせるよりもずっと多くを語っている作品だったと思います。
過去のことなど当然忘れてしまっているアリアーヌとの距離が縮まっていくほどに、メラニーの狙いは一体何なのかとあれこれ推理させて、最後の最後、ジワジワと仕掛けていた罠が全貌を見せたときの怖さといったら!
しかも、メラニーは誰からも責められる事がないっていうのが、また怖い。
派手に血が飛んだり、わざとらしい仕草や台詞、アングルで彩られたサスペンスって、何かを企んでいる人物が、いかにも悪いことをしそうな雰囲気だったり、これみよがしに悪さをするんですけど、こういう何ともない日常の中のちょっとした些細なゆがみを積み重ねていく見せ方がとてもリアルであっという間の85分でした。
メラニーの少女時代のトラウマとなったであろう出来事、少女メラニーのピアノがそこまで上手くなかったところがまた彼女の不条理さをよく表していたように思います。あんなできごとがなくてもきっと彼女は落ちていたと思うんですよねぇ。そりゃ、アリアーヌにも落ち度はあったと思うけれど、勝手に思い込まれて、恨みを買われることほど嫌なものはないですよね。
この作品、割と好きなサスペンス映画「ゆりかごを揺らす手」を思い出させますが、それよりもずーっと地味に進行していくのがある意味新鮮。
カトリーヌ・フロはちょいと重めの役柄を好演しているんですが、やっぱり、「奥さまは名探偵」とか、「地上5センチの恋心」のような明るい作品のほうが似合っていると思います。
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