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2008年12月21日 (日)

映画「ダークナイト」

ダークナイト 特別版 [DVD]

the dark knight

2008年

アメリカ

傑作だという話ばかりを聞く1本で、自分も劇場公開時に劇場で観よう!と強く思っていたものの、色々と都合があわなくて、結局DVDでの鑑賞になってしまいました。

バットマン(クリスチャン・ベイル)は、刑事のジェームズ(ゲイリー・オールドマン)と新任の検事ハーヴェイ(アーロン・エッカート)らとマフィアの資金源を摘発し、バットマンはハーヴェイの腕力と人柄に一目置くようになる。そんな折、ジョーカーと名乗る男(ヒース・レジャー)がマフィアらと手を組み、正体を明かさなければ市民達を殺すとバットマンを脅迫し、次々と犠牲者が現れるのだが・・・。

真の正義に生きるハーヴェイと真の悪に生きるジョーカー。ジョーカーからの問いかけに善悪の価値観を揺さぶられるゴッサムシティの行く末とは。そして「ダークナイト(悪の騎士)」の意味とは・・・という作品。

噂に違わず、良くできた作品だと思います。

えっと、そうなんですが、ここまで大絶賛の嵐の中、大変コメントしづらいのですが、最後の一歩で手放しで絶賛できない感じでした。それはティム・バートンのバットマンが大好きな自分は、「バットマン・ビギンズ」にはじまる科学忍者バットマンがどうも苦手なんですよね。大変よくできた作品だとは思うんですが、「バットマン」として苦手というか。ゴッサムシティはおもちゃ箱みたいな街のほうが好きというか。バットマンにこの深さは求めてないというか。

しかしながら、ヒース・レジャーは素晴らしいです。ジョーカーといえば、ジャック・ニコルソンを上まることなぞ不可能ではないかと思っていたのですが、そんな不安は見事に杞憂に終わりました。この作品、とにかくジョーカーが良いですよねぇ。

物語としては、コインの裏と表のように、善と悪が紙一重な状況を描くのですが、それを描くためにバットマンではなく、新たなヒーローを持ってくるんですよね。しかし、単純にそのヒーローが悪に転じるのを描くのではなくて、バットマンや、一般市民、そして、見ている我々の善悪の価値観を問いただしてくるような展開は非常に面白かったです。

この辺りの意図がはっきりと見えてくる後半は本当に見ている間中緊張感が続いて、食い入るように見てしまったのですが、個人的には前半の30分くらいがちょっともっさりした印象で、香港のくだりとかもうちょっとコンパクトにまとめても良かったかなという気が。あの辺りのマフィアとの関係も一瞬理解しづらくて・・・。(これは自分の理解力の問題。)

ヒロインのレイチェル役が前作のケイティ・ホームズからマギー・ギレンホールに代わっていたんですが、この理由はやはり・・・。いやはや、ヒーローものとしてはかなり斬新な展開で、ちょっとビックリしちゃいましたよ。この辺りも、この作品が生易しいヒーロー映画ではないのを如実に表していると思います。

ジョーカーによって振り回されてしまうデント検事ですが、これ、僕はジョーカーがもっと過酷な使命を彼に課すものだと思っていたので、実はちょっと肩透かし。映画「ミスト」級に絶望に陥れるのではないかと冷や冷やしてたんですよね。

ジョーカーもバットマンも紙一重と感じさせる中、囚人達や一般市民たちは、ジョーカーを裏切り、バットマンの力も借りずに、自らの悪と向き合う力を持っているというのが、この作品で一番グッときたところです。フェリーのシーンは素晴らしかった!そして、作中でジョーカーよりももっと強くバットマンを追い詰めたのが一般市民だったというのも見逃せませんでした。

キャストはなんといってもヒース・レジャーですが、デントを演じたアーロン・エッカートも負けず劣らずの熱演だったと思います。その他の豪華レギュラー陣もあいかわらず良い。

そうそう、このシリーズ、ゲイリー・オールドマンがいつキレて本性を出すんじゃないかと思ってしまうのは前作と変わらず。「レオン」のイメージがいつまでもたっても払拭されません(笑)

ところで、ジョーカーの行為の1つ1つが、ひっそりとツッコミどころが多かったんですが、この辺りは目をつぶるしかないんでしょうか・・・。

ヒース・レジャーのジョーカーが二度と見られないというのは本当に残念ですが、ここまで人々の心をつかむ見事なジョーカー(ただの悪役とは呼べない)を演じきったことにただただ感謝です。

* * *

以上、作品としては素晴らしかったし、面白かったんですが、そこまで絶賛するほどか!?という気がしないでもなく(自分、やや天邪鬼だし)、バットマンシリーズのあまりの変わりように未だついていけないため、色々と複雑な思いのある結果となりました。

この作品、よくよく考えてみると、猟奇的な狂人も、正義の検事も、一般市民たちも、マフィアやら警察やらの汚職も全部がリアルに存在しうる作品で、結局は、そういう現実世界の中で、果たして正義のヒーローがどこまで受け入れられるのかということを問うのが目的だったんだろうなぁと思います。

そのためにはやはり、誰もが知ってるヒーローを使いたいわけで、バットマンが絶好の材料だったのかなと。そうなるとこのリアル路線バットマンの製作意図もはっきりしてきて、前作の「ビギンズ」は、この「ダークナイト」を撮影するための世界観を構築するためにどうしても必要なプロローグに過ぎなかったということですよね。まさに「ビギンズ」。

そう思うと、まぁ、このバットマンシリーズの変わりようも納得はできるし、ますますその完成度の高さには驚きなんですが、やっぱり世界観として好きなのはバートン版なんだよなぁ。

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コメント

こちらにもお邪魔します。
この夏、そんなに長くなかった上映期間の中で、4回足を運んだ作品で、
DVDまで購入したほどの、わたしの今年№1の作品です。

先日、息子と娘と共にDVDを観た際、
娘はわたし同様、「ヒーローものとは思えない内容」と驚いていたのですが、
ティム・バートン版を観ていた息子が、ANDREさんとよく似たことを言っていて、
(わたしも娘も『バットマン』はビギンズとこれしか観てないので)
「とってもいいと思うけど、微妙」な感じだったようです。

この時期、どの映画祭でも受賞しているヒースを思うと、
授賞式のステージに上がる彼が見たかった、と別の思いがこみ上げます。

投稿: 悠雅 | 2008年12月23日 (火) 00時39分

>悠雅さん

こちらにもコメント&TBどうもありがとうございます。

本当に作品の素晴らしさも分かるんですが、
バートン版にすっかり洗脳されてしまったのか
作品が素晴らしければ素晴らしいほどに、
これを受け入れて良いのかという
迷いが生じてしまんですよね。
息子さんと同じ意見ということで
ちょっと安心しました。

このような素晴らしい演技を見せられると
ヒースの急逝は本当に惜しまれます。

投稿: ANDRE | 2008年12月23日 (火) 20時15分

ANDREさん、こんばんは。
>バットマンにこの深さは求めてないというか。

もともとは漫画で、実写TVシリーズを見た記憶がありますが子供向けの勧善懲悪ものでしたものね。
バートン版のほうはコミック色が残ってましたね。

>リアルに存在しうる現実世界の中で、果たして正義のヒーローがどこまで受け入れられるのかということを問うのが目的

このくだりを読んで、何故か「必殺シリーズ」を思い出しました。
どちらかというと、「バートン版のバットマンと一線を画したいと取り組んだら超現実的になっちゃった~」かなと思ってました。

投稿: ryoko | 2008年12月25日 (木) 23時15分

>ryokoさん

コメントありがとうございます!

自分はバートン版のおもちゃ箱のような世界観が結構好きだったので、
ゴッサムシティが普通の大都市というだけで
ちょっと抵抗があったんですよね。

これだけリアルにするには何か理由があるに違いないと
色々と考えた結果、上記の結論に達したんですが、
実際のところどうなんですかね。
劇場パンフとかに書いてあったりするんでしょうか。

「必殺シリーズ」ですか!?
自分はそこまで詳しくないのですが、
裏稼業の活躍という点では、ちょっと似たところが
あるかもしれませんね。

投稿: ANDRE | 2008年12月27日 (土) 11時23分

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