「夜は短し歩けよ乙女」 森見登美彦
夜は短し歩けよ乙女 森見登美彦 角川文庫 2008.12. |
07年の本屋大賞で僅差で2位になった作品が早くも文庫化。タイトルがやたらと頭に残って気になっていました。
サークルの後輩に恋をした主人公は偶然をよそおって何度も彼女に接近する。先斗町、古本市、学園祭、そして、風邪が大流行する京都の町を舞台に突っ走る妄想男子学生と、ほんわか天然少女が巻き込まれていく騒動を、男の子、女の子それぞれの視点から描き出していく。
森見作品を読むのはこれで3冊目ですが、相変わらず、もてない京大生がインテリぶった語りで妄想を爆発させる内容ですね。ただし今回は、男の子目線と女の子目線の両方で物語が進むところがちょっと新鮮。
今回は京都を舞台に見事なまでにファンタジーを成立させているところがなかなか面白くて、不可思議な人々と出会いながら方々を彷徨っていく様は「不思議の国のアリス」的な面白さもあってなかなか面白かったです。
この人の作品は相変わらず登場するエピソードの命名の仕方やら、ちょっとした一言やらの勢いとユーモアがとても上手くて、いつまでたっても忘れられない不思議なパワーも健在。『太陽の塔』なんか読んでから数年経つのに、未だにクリスマス=ええじゃないか、と思ってしまいますからね。
毎回毎回京都大学が舞台の森見作品ですが、映画サークル「みそぎ」、まさかの再登場。羽貫&樋口も出てきて、微妙に世界がリンクしてますね~。伊坂幸太郎といい、こういうのはファンにとっては結構嬉しいですね。
4つのエピソードが出てきますが、個人的には文化祭が一番面白かったかなぁ。
1つ目はビジュアル的なパワーがとにかく激しくて、めくりめく幻想世界に酔いしれる感じでしたが、ちょっと疲れちゃいました。今回、今までの作品よりも読むのに体力がいる感じでしたよね。
でも、個人的には前2作のどうしようもなく悶々とした内容のほうが面白かったのですが。あちらのほうが、この独特の語り口が生かされていたように思います。「夜は短し
~」はファンタジーとしての面白さはあったけど、青春小説としての面白さがちょっと物足りなかったかなぁ。
* * *
参考過去レビュー
過去に読んだ森見作品を。
「太陽の塔」
初めて読んだときの衝撃はかなり。漫画みたいな感じですが。
「四畳半神話大系」
今のところ、これが一番好きですね。サラリと読めて楽しめる1冊。
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