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2009年1月17日 (土)

「愚者が出てくる、城寨が見える」 マンシェット

愚者(あほ)が出てくる、城寨(おしろ)が見える (光文社古典新訳文庫)

愚者(あほ)が出てくる、城寨(おしろ)が見える
(Ô dingos, ô châteaux!)

ジャン=パトリック・マンシェット
(Jean-Patrick Manchette  )

光文社古典新訳文庫 2009.1. 
(original 1972)

古典新訳文庫の今月の新作。フランスのハードボイルド作品ということで、新訳文庫の他のラインナップからするとやや異色な印象を受けるんですが、それがかえって気になって手に取りました。

精神病院に入院していたジュリーは、大富豪のアルトグ氏の甥のペテールの子守りをするために氏の家に行くことになる。ところが赴任した翌朝、買い物に出たペテールとジュリーは殺し屋トンプソン率いるギャング達にさらわれ、さらに、世間では、ジュリーがペテールを誘拐したということになってしまう。

その後、2人は命からがらギャングたちの下から逃げ出すのだが、幼少期のトラウマで警察アレルギーになっているジュリーは警察へは向かわず、ペテールを連れてアルトグ氏の別荘を目指して逃亡をはじめるのだが・・・。行く先々で凶行の限りを尽くす波乱の逃亡劇を描く。

テンポ良く進んでいくスピード感と、スリリングな展開、ユニークな登場人物たちに彩られた物語であっという間に最後まで読みきってしまいました。

この作品、何がすごいって、ギャング達よりも、精神を病んでいるという主人公のジュリーのキレっぷりの激しさ!行く先々で凶行の限りを尽くすのが殺し屋たちだけじゃなくて、ジュリーのほうもかなり派手に色々とやらかすので、もはや何が善で何が悪かなんて単純に割り切れない物語になっていて、なかなか面白い作品でした。

最終的なクライマックスが迷宮のような不思議な建物が舞台になるのも、破壊と殺戮に彩られた(?)、狂気の物語には非常によくマッチしてましたね。

破壊的な物語である一方で、とても淡々とした文体で、狂気といっても、そこまで狂った感じもなくて、フランスものとはいえシュールさも控えめで、冷静に物語をおえる作品なので、読者としては傍観者に徹して楽しめることができたのも良かったです。

そうそう、この作品、車での逃亡劇を描いているんですけど、さまざまな車がメーカー名やら車種名やらで登場するので車好きな人にはかなり面白いんじゃないでしょうか。自分はそんなに詳しいわけではないので、ネットでどんな車か検索して調べちゃったりしたんですけど、車の映像が出てくると、物語がますます活気付く感じがしました。

* * *

参考過去レビュー

狂気なフランス小説つながりで

「幻の下宿人」 ローランド・トポール

こっちはもっともっと理性を失う狂気の物語。

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コメント

旧訳を読んだんですが、わけがわからんな、というのが正直な印象です。

たしかに「ノワール小説」だし、面白いと思えなくはないんですが、どうもノリが軽い。しかし、「軽さ」と「不条理さ」と「恐怖」をともなった白昼夢のような雰囲気を狙っているとしたら、それはそれで成功しているのではないかと思います。

投稿: prankette | 2009年1月17日 (土) 23時19分

>pranketteさん

コメントいただきましてどうもありがとうございます。

新訳版の解説によると、
旧訳ではべらんめい口調になってるとのことで、
そうなると、この新訳とはかなり印象が変わるのかなと思いました。

実際に読み比べたわけではないので分かりませんが、
自分はそこまでの軽さは感じなかったので、
(かといって重厚さも感じてませんが)
もしかしたら訳の違いによるものがあるのかもしれません。

ただ、「白昼夢」のような雰囲気は自分も感じましたね。

投稿: ANDRE | 2009年1月17日 (土) 23時33分

こんばんは。
今月の光文社新刊はどちらも気になっていたのですが、まずマンの方からいきました。
どうやら今月は、どちらも曲者のようですねえ。

そういえば、どうにか論文をしあげることができました。
諮問までは、のんびり読書三昧をしようともくろんでいます。

投稿: ふくろう男 | 2009年1月19日 (月) 20時30分

>ふくろう男さん

コメントどうもありがとうございます。

自分も今月は2冊そろってお買い上げしました。
なかなか興味をそそられるラインナップでしたよね。
マンの方も近いうちに読もうと思います。

無事論文を提出されたとのことで、お疲れ様です!!
諮問のほうも上手くいかれることをお祈りしています。

投稿: ANDRE | 2009年1月20日 (火) 00時23分

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