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2009年2月 7日 (土)

「ベンジャミン・バトン」 フィツジェラルド

ベンジャミン・バトン  数奇な人生 (角川文庫)

ベンジャミン・バトン 数奇な人生
(the curious case of Bnjamin Button)

スコット・フィツジェラルド
(Scott Fitzgerald)

角川文庫 2009.1.
(original 1922 etc.)

本日より公開の映画版が気になったので、とりあえず原作を。近いうちに映画も観ます。

表題作を含む7作を収録した短編集です。

フィツジェラルドを読むのは中学のときに読んだギャツビー以来なので、10数年ぶりなのですが、幻想譚やら、推理ものやらを含むなかなかバラエティに富んだラインナップの1冊となっています。

映画原作になっている表題作は、なんとこれが本邦初訳なんですね。確かにフィツジェラルドのイメージにはない幻想短編ですけど。

角川文庫さんの良いところは、映画仕様ではなくて、ちゃんと同文庫から出ている他のフィツジェラルド作品に合わせてホッパーの絵を表紙に使ってくれたこと。

以下、それぞれの作品にコメントを。

・「ベンジャミン・バトン」

老人の姿で生まれ、歳をとるとともに若返っていく男の一生を描く。

フィツジェラルドってこういうのも書くんですねぇ。

非常に読みやすいブラックユーモアに溢れた作品ですが、なんだか哀しい話です。

ちょっと悲哀を感じる場面も多いのですが、最後のほう、老齢の主人公が、「子供」でありながら、彼の受けている扱いが実は老人への扱いとそれほど変わらないのではないかと感じさせる皮肉さがピリリときいていました。

映画は未見ですが、原作を読む限り、映画に出演しているケイト・ブランシェットの登場する余地はないように思えるので、恐らく映画版は「若返る男」という設定だけを借りて大幅にアレンジされているんでしょうね。

 

・「レイモンドの謎」

探偵小説です。

色々とものたりなかったんですが、フィツジェラルドが13歳のときに学校新聞に載せた作品ということで、なんとなく納得。てか、そういうのを「処女作」って呼んでいいのか!?

 

・「モコモコの朝」

犬の視点で描かれるとある朝の風景。

吾輩は猫である調の犬が語り手になっている作品ですが、ラストが上手いですね。語り手が犬だと、やっぱりそうなっちゃうんですかね。

 

・「最後の美女」

アメリカ南部を舞台にした青春小説。

この中では珍しくギャツビーの作者だなと思わせる短編です。

さらば青春という感じのラストの余韻がなんともいえませんねぇ。

 

・「ダンスパーティーの惨劇」

こちらはまた打って変わっての本格推理もの。

面白いんですが、推理の内容どうこうよりも、主人公の語りのほうが面白かったです。

 

・「異邦人」

北アフリカ~ヨーロッパを旅して回るアメリカ人夫妻を描く。

これが一番面白かったです。

こういう生活良いなぁなんて思ってしまう設定ですが、最初はラブラブの新婚夫妻が、年月を経て、旅を続ける中で、どんどん倦怠期に突入していく様子にハラハラドキドキでした。

これまたラストで、幻想的に落とす余韻が上手い。

 

・「家具工房の外で」

人形の家を作ってもらっている間、父と娘が工房の外でお話を作る。

短い作品ですが、中盤のファンタジーで読ませておきつつ、ラストの現実に戻ったときの落とし方が見事な作品でした。

 

全体的に、どの作品もラストが印象に残りましたねぇ。基本的に語りが良いです。

新訳も出てるし、久々にフィツジェラルドを色々と読んでみようかなぁ。

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コメント

はじめまして
突然失礼いたします
書籍関連でどこからともなくたどりつきました。
が、私も合唱やってるしベルセバ好きだしムソルグスキー好きだし浅野いにお好きだし…と、接点を見つけてしまったので思わずコメントしてしまいました。

またしばしばのぞきに来ても良いですか?

投稿: harubelle | 2009年2月 8日 (日) 00時25分

>harubelleさん

はじめまして。
コメントどうもありがとうございます。

ブログをやってると本や映画の趣味が合う方には
ちょくちょくお会いできるのですが、
合唱をやってる方というのはとても珍しいので、
コメントいただけて嬉しいです。

勝手な記事ばかりのブログですが
よろしければまたお訪ねください。

投稿: ANDRE | 2009年2月 9日 (月) 01時57分

角川のフィツジェラルドの装丁、いつもいいですよね。
ついつい気になって手にとってしまいます。
最近、アメリカ文学からはなれてしまっているので、ひさしぶりに読んでみようかなと。

投稿: ふくろう男 | 2009年2月 9日 (月) 20時57分

>ふくろう男さん

コメントありがとうございます。

角川文庫のフィツジェラルド、
自分もかなりお気に入りで、
書店で何度も手にしてます。
ポッパー、いいですよね。

映画化に合わせての刊行ながら、
映画に媚びない装丁をしたばかりか、
「隠れたフィツジェラルド」をテーマにした
作品選びも面白くて、
かなり好感が持てる1冊でした。

投稿: ANDRE | 2009年2月10日 (火) 11時33分

私も映画が好きで、今現在、納得できない不当解雇で失業中なので、時間があるとほとんど映画三昧です。

・・・本日より公開の映画版が気になったので、とりあえず原作を・・・。私も、「ベンジャミン」を見た後で原作の翻訳を読みました。

ブラッド・ピットとデヴィッド・フィンチャー監督といえば、映画『セブン』が衝撃的でしたが、あの作品も凄いと思います。この作品の原作は誰でしょうかね?
先日もテレビで放映して居たので、もう一度みました。

やはり、映画は、原作まで読まないと理解できない事が多すぎます。特に今回、他のフィッジェラルドの原作の影響を色濃く受けていると感じました。私は、ついでに映画「華麗なるギャッビー」と「雨の朝、パリに死す」も見ました。

私も「ベンジャミン・バトン」の映画を観て、感動しました。少しこの作品について考えてみました。よかったら私の「ブログ」にもコメントを下さい。

「フォレスト・ガンプ」の脚本を書いたエリック・ロスは、「ベンジャミン」でも脚本を書いてます。日本では、脚本家が余り注目されませんが、映画によっては、単に原作を脚色するだけでなく、原作を凌駕する内容もあります。


投稿: 流石埜魚水 | 2009年3月 7日 (土) 12時07分

>流石埜魚水さん

コメントいただきまして
どうもありがとうございます。

時間などの制限がある映画と違い、
小説はやっぱり余すことなく描写することができますし、
やはりオリジナルの持つ絶対的な強さというのは
存在しますよね。

しかし、それでも、映画化した作品が
とんでもなく素晴らしいことも
たまにあるので、自分もついつい映画も原作もどちらも
みてみようと思ってしまいます。

『セブン』は原作がないオリジナル作品じゃないですかね。
自分も結構好きな作品です。

日本でもクドカンなど一部の人気作家だけではなく
もっともっと脚本に脚光があたっても良いというのは同感です。

投稿: ANDRE | 2009年3月 8日 (日) 01時18分

こんにちは。フィッツジェラルドの作品はもちろんなのですが、おっしゃるとおりホッパーの絵を表紙に使っているのは本当に素敵ですね。とても贅沢な気分。「Nighthawks(夜更かしの人々)」というタイトルの絵なんですね。夜更かしをしてフィッツジェラルドの作品をもっと読みふけってみたい気持ちになりました。

投稿: ETCマンツーマン英会話 | 2012年11月25日 (日) 13時04分

>ETCマンツーマン英会話さま、

コメントをどうもありがとうございます。

角川文庫のフィツジェラルド作品はホッパーで統一されているのが結構お気に入りです。

投稿: ANDRE | 2013年1月 2日 (水) 01時02分

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