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2009年3月13日 (金)

映画「ラ・ボエーム」

La Boheme

la boheme

ドイツ オーストリア

2008

09年2月公開 

劇場劇賞

プッチーニ生誕150周年を記念して名作オペラ「ラ・ボエーム」を、現代オペラ界の最高キャストで映画化した作品ということで、これは是非とも音響の良い映画館で観なくては!と思い観てきました。

薪を買う金さえない詩人のロドルフォ(ローランド・ビリャソン)、画家のマルチェッロ(ジョージ・フォン・ベルゲン)らの貧しいボヘミアンの芸術家たちが集うアパートで、クリスマスイブの晩、仲間達が酒を飲みに繰り出した後、独り部屋で原稿を書いていたロドルフォのもとに階下に住むお針子のミミ(アンナ・ネトレプコ)がロウソクの火をもらいにやってくる。

恋に落ちたロドルフォとミミは、仲間達と合流し、カフェで楽しいひと時を過ごしていたが、そこで、彼らはマルチェッロの元恋人である踊り子のムゼッタ(ニコル・キャベル)と出会い、2人はよりを戻す。

幸せを手に入れたように見えた2組の恋人達だったが、思わぬ悲劇が彼らを待ち受けていた・・・。

まぁ、「ラ・ボエーム」でした。今さらですがプッチーニは良いメロディ書きますね~。「トゥーランドット」とか大好きです。

で、歌唱のほうはとても素晴らしくて聴き応えばっちりなんですが(特にアンナ・ネトレプコ)、「映画」としては非常に微妙な作品だったと思います。ただ、良い音響で聞ける映画館でこれを楽しむのは非常に価値のあることだと思うので、劇場鑑賞を強くオススメしたい作品です。

舞台を映画にするとなると、舞台上では分かりにくい表情や小物使いなどの細かい動きを見せることができるってのは良いんですが、画面の構成とか、演出がレトロというか、せっかくの映像化なのにちょっと安っぽい印象なんです。建物とかもどう見てもセットだし・・・。

せっかく聴きごたえのある音楽の方も、映像の中の場面ではありえないような歌の響き方をしているため、明らかに別録りだということが分かる上に、たまに口の動きがあってなかったりするので、そこもちょっと残念。

もうちょっと「映画」としても楽しめる1本であって欲しかったかなぁ。舞台を映像化するのってミュージカルだと舞台を生かしつつも、映画としての見せかたも素晴らしい作品があるのに、オペラだと映像化の仕方までクラシカルになってしまうのはちょっともったいないです。

2幕と3幕の間、舞台ではインタミが入る場所だと思うんですが、2つのシーンには時間の経過があるのに、それを一切示さないため、普通に翌日のことをやってるのかと思ったら結構時間が経っていて、もともとストーリーを知らない人が見ると、「??」な感じだったのではないでしょうか。こここそ、「数ヵ月後」みたいな感じで字幕をいれられるのが映画だろうに。

で、インタミがないってのは、特にこの物語ではとても大きな意味があったと思います。この作品、ストーリーにおいて、ミミとロドルフォのラブラブな期間を描くことがなくて、1幕、2幕で出会いの場面を描いて、続く3幕ではもう別れの場面に入ってしまう。インタミがなかったことによって、映画だと、付き合い始めた2人が次のシーンではすぐに別れることになってしまって、2人の別れの重さというのがどうにも伝わりづらくなっていたように思います。しかも病気だと知って別れるってのはロドルフォどうなの!?ってのを強く感じさせてしまったし。

さらに、4幕。何故、病人のミミが超薄着で寒がっている中、他の皆さんはコートを着て突っ立ってるんですか!?マフよりも先に何か着させてあげましょうよ!とか突っ込みたくなる場面もチラホラ。

ま、でも、そんな演出に眉をひそめつつも、ずーっと歌でつないできて、最後の最後、台詞に変わる瞬間はゾクゾクっとしてしまいました。

あと、この映画、1つどうしても解せないのは、一部キャストの歌が吹替えなんですが、演じているキャストのほうもオペラ歌手なんですよねぇ。これ、失礼にも程があるように思うんですが・・・。演技をする上でも、やはりオペラ歌手でないとダメだろうという判断があったんですかね。

と、悪いことばかりズラーっと書いてしまいましたが、ムゼッタを演じたニコル・キャベルは歌も演技もとても情感豊かで楽しませてくれたし、キャスト陣はみんな良かったと思います。やっぱり演出ですよね。個人的にはラストの横たわる映像もちょっと趣味に合わず、つくづくこの監督さんとは相性が悪かったみたいです。

高額な芸術であるオペラを最高のキャストで良い音響の劇場で安価で楽しめるというのは、なかなか嬉しいものです。

映画のエンドロール、オペラであることを大切にしてくれていて、余計な音楽を流すことなく、無音にしたのはなかなか良かったと思います。どうせならカーテンコール欲しかったです。

ついでに。

8月の来日が今から待ちきれないミュージカル「RENT」は、このオペラが下敷きになっています。「RENT」好きな人は、どこが同じでどこが違うかを見比べてみると結構面白いと思いますよ。

てか、「RENT」のロジャー、相手はミミなのにフィーチャーされてる曲が「ムゼッタのワルツ」なのはちょっとどうなんですかね・・・。

この映画版「ラ・ボエーム」、ロウソクの場面でミミが意図的に部屋にやってくるんですが、そこがちょっと「RENT」のミミに近いキャラ設定でしたね。

 

参考過去レビュー

オペラの映画化として記憶に新しいのはこちら。

映画「魔笛」

こちらはアリアのPV集みたいな感じになってしまった、ちょっと頑張りすぎなオペラの映画化。でもブラナー監督は好きなので、結構甘めの評価でそこまで嫌いじゃないです。

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