「鴨川ホルモー」 万城目学
鴨川ホルモー 万城目学 角川文庫 2009.2. |
発売当初からずっと気になっていて、その後の新作も気になっている万城目作品、映画化に合わせて文庫が出たので、早速第1作目にあたる本作を読んでみました。
主人公の安倍は二浪の末に入学した京都大学で、空腹をしのぐためにサークルの新歓コンパをはしごして過ごしていた。そんな折、葵祭のバイトで同じく京大1回生の高村と出会い、2人はそこで声をかけられた「京大青竜会」なるサークルの新歓コンパに顔を出す。
コンパで出会った同じく1回生の早良さんに一目惚れした安倍は、活動目的がどうもつかめないまま、サークルの定例会に足を運ぶが、やがて、先輩たちから衝撃の事実を知らされる。
「京大青竜会」は、1000年続いているとも言われる「ホルモー」なる競技で、京都にある他の3大学と対戦をしていたのだ。鬼や式神たちと共に戦うホルモーとは果たしてどのような競技なのか、そして、安倍の恋の行く末は?という物語。
ドラマで「鹿男あおによし」を見ていたのですが、古都を舞台になにやら良く分からない謎の抗争がひっそりと行われているってところはちょっと似てますね。
ただホルモーのアイデアが面白いのに、実際の戦いの場面は思ったよりもあっさりしてて、どっちかというと青春物語部分のほうが熱い作品でした。ま、でも、良くも悪くも漫画みたいな感じの作品ですね・・・。
とにかく「ホルモー」という競技のビジュアル的な面白さが強くて、その名前とともにとてもインパクトはあるんですが、ちょいと物足りない部分が多かったのも事実。
物語の進め方として、[ 重要な会話をごっそりカット⇒物語の進行に合わせて少しずつネタバラシ ] という手法が、数回なら気にならないものの、あまりに多用されすぎていて、ちょっとテンポが悪くなってしまってたような気が。
でも、現代京都舞台にこんなファンタジックな物語を描くってのはとても面白かったと思いますよ。それだけに、ホルモー部分をもうちょっと掘り下げて欲しかったなぁと。青春物語としては、同じく京大生を描いている森見作品のほうが個人的には好きだと思ってしまったので。
あとこれは森見作品でも思ったことなんですが、京都の話なのに登場人物がみんな標準語で会話するってのは、そんなものなんでしょうか?柴崎友香の作品なんかは関西弁の会話が使われているんですが、関東の人間の自分には分からないのですが、関西の方はこのあたりに違和感を覚えたりしないんですかねぇ。
ところで、98年頃の京大って平野啓一郎、万城目学、森見登美彦の3人が在学してたんですねぇ。恐るべし。
■ 関連過去レビュー
京大を舞台に怪しげなサークル活動とそれを巡る人々の物語という共通点がある作品。なんか京都の大学生活ってのは波乱万丈ですねぇ。
全くの余談ですが、書店でチラッと見ただけなんですが、森見氏の新作は三島のレター教室みたいな感じなんでしょうかねぇ。
ついでに京都の大学生といえば・・・
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