映画「リリィ、はちみつ色の秘密」
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the secret life of bees
アメリカ
2008
09年3月公開
劇場劇賞
<画像は洋書原作より> |
公開を楽しみにしていたのに、あまりプロモーションもされていない様子でちょっと淋しい作品。主演のダコタ・ファニングをはじめとして、女優陣に注目です!
舞台は公民権法が制定されたばかりの1964年のアメリカ。主人公のリリィ(ダコタ・ファニング)は、4歳の頃、父と口論になっている母親を誤って銃で撃ち殺してしまい、それ以来、そのトラウマに悩まされながら、桃農園を営む冷淡な父T・レイ(ポール・ベタニー)と過ごしていた。
リリィが14歳になった日のこと、公民権法が制定され、選挙権が得られることに喜ぶ家政婦のロザリン(ジェニファ・ハドソン)と2人で町を歩いていたリリィの目の前で、ロザリンは白人達から暴力を受けた上に、警察に連行されてしまう。
翌日、父ともめたリリィは、置手紙を残し、病院に入院中のロザリンを連れ出し旅に出る。亡き母の遺品の聖母像に記されていた町にやってきた2人は、そこで、その聖母像のラベルが印刷されたハチミツが売られているのを見つけ、そのハチミツを作っている黒人女性が暮らすという養蜂場を訪ねる。
やがてリリィとロザリンの2人は養蜂場を営むオーガスト(クイーン・ラティファ)とその妹である、音楽教師のジューン(アリシア・キーズ)とメイ(ソフィー・オコネドー)たちの家に仕事を手伝いながら住まわせてもらうようになるのだが・・・。
ダコタ・ファニングが大人になってる!!子役の成長は早いですねぇ。ティーンになった名子役が今しかできない役を演じ、子役から女優へとはばたく貴重な姿を収めただけでも価値のある作品だと思います。ただ、泣きの演技が完全に子役のそれだったので、この後、どうやってその辺りから脱却していくのかが注目されます。
そして、クイーン・ラティファ、ジェニファ・ハドソン、アリシア・キーズの3人が並ぶ姿は、いつ彼女達が歌いだすのではないかと思ってしまうほどに贅沢な歌姫夢の競演状態(実際、ちょっとだけ歌ってくれます)。そして、ソフィー・オコネドーを加えたこの黒人4女性たちの演技は本当に素晴らしかったです!
ストーリーに関してはほとんど前知識なしで鑑賞したんですが、割と重めのテーマが目白押しでしたね。女優陣のしっかりした演技に支えられて、派手さは無いけれど、色々なことを考えさせられ、泣いて、笑って、感動させてくれて、純粋に観て良かったなと思える良作だったと思います。
上映館が少ないのがちょっともったいないですねぇ。
原題は、ミツバチの隠された生態、みたいな感じなんですが、タイトルがまんまストーリーになっていて、ミツバチの生態が、女性たちの人生に被さってくるのはなんとも味わい深かったです。
(ネタバレな感じなので反転させてください)
ただストーリー的には父親の扱いがちょっと不満。母を殺してしまった我が娘を14歳まで育てた彼への何の感謝もなく、完全に捨てられてしまうようなラストはどうなのかな、と。リリィがここに残りたいと言ったときに、オーガストが父の元に帰るように言うのかなと思ったんですが、3人の母親展開でした・・。この父親も、ちょっと寂しい人間で、そこまで憎めなかっただけに、色々と思ってしまいました。最近のアメリカ映画って、血のつながった親子のつながりよりも、深い愛情によってつながれた絆のほうを重視する作品が非常に多いと思います。
(ネタバレ終わり)
選挙権がもらえると喜んだ女性が男性達から暴行を受け、さらにこの作品で描かれるような理不尽な出事件が繰り返されていた時代、それからわずか45年で初の黒人大統領が誕生するとは誰が予想できたでしょうか。
黒人達に囲まれ、しっかりと愛されながら、自立していく白人の少女という題材が映画で描かれるようになったのも、そんな時代が反映されているのかなと思いました。そういえば「ベンジャミン・バトン」も黒人一家に育てられる少年の映画でしたね。
ところで、またまた邦題が変なことになってる映画です。「はちみつ色の秘密」って・・・。なんだかよく分からないですよねぇ。しかも「リリィ」って入ったために、謎度がアップしてます。
そうそう、TOHOになってからの初シャンテでした。(一応メモ)
* * *
参考過去レビュー
キャストが被ってる上に、時代背景や、強い黒人女性が出てくるという点でも共通する2作品を。あ、どっちもミュージカルだ!
映画「ヘアスプレー」
ここでもクイーン・ラティファは白人の少女を温かく包む強い母を熱演。てか、「ヘアスプレー2」が製作されるという話が出てますが、それはちょっとご遠慮いただきたい・・・。
映画「ドリーム・ガールズ」
近頃不幸な事件で話題になってしまったジェニファ・ハドソンですが、この映画を見たとき、大物新人が現れた!とかなりの衝撃を受けました。オスカー受賞は本当に嬉しかったです。
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» リリィ、はちみつ色の秘密 [LOVE Cinemas 調布]
主演のリリィを演じるのはダコタ・ファニング。リリィが家出して身を寄せる養蜂家の主人オーガストをクイーン・ラティファが演じる。ただ本作の場合、むしろウィル・スミス夫妻がプロデュースしたことの方が話題になっているかもしれません。『7つの贈り物』ではさんざんな評価だったウィルですが、直接出演するわけではない本作ではどうなのでしょうか?... [続きを読む]
受信: 2009年3月26日 (木) 01時38分
» [映画『リリィ、ハチミツ色の秘密』を観た] [『甘噛み^^ 天才バカ板!』]
☆・・・神は世に、二人の「ダコタ」と言う名の美少女を生み出した。
かたや、天性の美貌を誇るダコタ・ブルー・リチャーズ。
そして、もう一方は、天才の子、ダコタ・ファニング。
今回は、このファニング嬢の新作を観に行った。
◇
いい作品であった。
私は、何の知識もなく、成長したファニング嬢の、少女の終わりの悲しさを堪能しようと映画館に赴いたのだが、
物語は1960年代、黒人公民権運動を時代背景とした物語だった。
私は、最近、ちょうど、黒人奴隷... [続きを読む]
受信: 2009年3月26日 (木) 07時51分
» リリィ、はちみつ色の秘密 [UkiUkiれいんぼーデイ]
JUGEMテーマ:映画
2009年3月20日(金) 公開
★★★★★+α あぁ〜もぉなんだかとっても好きだこれ♪ 星5つに+α付けちゃう!
姉妹の名前が暦からっていうのが岡倉姉妹(渡鬼)といっしょね♪
予定に無かった作品だったのですが、ご覧になられた方のレビューを拝見したらとても良い作品のようだったのと、出演者が素敵だったので足を伸ばして鑑賞してきました。
スー・モンク・キッドのベストセラー小説の映画化。
14歳のリリィ(ダコタ・ファニング)は母の... [続きを読む]
受信: 2009年3月26日 (木) 09時14分
» リリィ、はちみつ色の秘密 / The Secret Life of Bees [我想一個人映画美的女人blog]
抱え込んだたくさんの悲しみと、めいっぱいの愛と、きらきらした優しさ詰まった物語。{/m_0150/}
14歳になった主演のダコタちゃんがもうとにかく素晴らしい{/hakushu/}
今さら言うこともなく上手いし、可愛いしで、ダコタ最高{/ee_1/}(←大絶賛{/ee_3/})
全米で500万部以上の売り上げを記録した、スー・モンク・キッドのベストセラー小説を、ジーナ・プリンス=バイスウッドが監督・脚色。
心に傷を抱えた少女リリィの、母からの愛を探す旅、3姉妹との運命の出会い、... [続きを読む]
受信: 2009年3月26日 (木) 10時36分
» リリィ、はちみつ色の秘密 [そーれりぽーと]
『着信アリ2』の怨霊リ・リィをダコタ・ファニングが演じる(嘘です)『リリィ、はちみつ色の秘密』を観てきました。
★★★★
『着信アリ2』とは何の関係もありません。
舞台は黒人の公民権が認められたばかりでまだまだ差別意識の強かった頃の合衆国。
リリィは幼い頃に不慮の事故で自らの手によって母親を死なせてしまった女の子。
母親を死なせてしまった罪の意識に苛まれながら、育児の下手な父親に育てられ、ある日黒人家政婦をつれて家を飛び出してしまいます。
彼女達が腰を落ち着かせたのは黒人姉妹が養蜂を営む一家。... [続きを読む]
受信: 2009年3月27日 (金) 00時52分
» 映画「リリィ、はちみつ色の秘密」 [茸茶の想い ∞ ~祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり~]
原題:The Secret Life of Bees
アメリカで1964年といえば7月2日の公民権法制定、ジョン・F・ケネディ亡き後ジョンソン政権下で成立、キング牧師も登場する時代背景に~様々な愛の形~
原作は全米で500万部以上、映画は全米3位スタートながらクチコミで広がり全米ヒッ... [続きを読む]
受信: 2009年3月28日 (土) 11時06分
» *リリィ、はちみつ色の秘密* [Cartouche]
{{{ ***STORY*** 2008年 アメリカ
1964年の夏、14歳のリリィは幼い頃に自分のせいで死んだ母の愛を確かめたくて、父T・レイに黙って旅に出る。制定されたばかりの公民権法の甲斐もなく白人の嫌がらせを受け怪我をした挙げ句警察に連行された黒人家政婦のロザリンを助け出し、向かった先は母に縁のある町ティブロン。そこで2人はボートライト三姉妹と出会う。長女のオーガストは養蜂家で、黒い聖母像のラベルのはちみつを作っていた。
..... [続きを読む]
受信: 2009年3月28日 (土) 16時06分
» 「リリィ、はちみつ色の秘密」:西麻布バス停付近の会話 [【映画がはねたら、都バスに乗って】]
{/kaeru_en4/}西麻布のランドマークといえば、HOBSON’Sだ。
{/hiyo_en2/}あま〜くとろけるようなアイスクリーム。
{/kaeru_en4/}今年いちばん、あま〜くとろけるような映画タイトルといえば「リリィ、はちみつ色の秘密」だろう。
{/hiyo_en2/}主演が天才子役のダコタ・ファニングだし、どんなファンタジックなおとぎ話が始まるのかとウキウキしながら観始めたら、4歳のときに自分の母親を撃ち殺してしまった少女の物語なんだから、驚いたわ。タイトルから思い浮かべるイメー... [続きを読む]
受信: 2009年3月28日 (土) 18時30分
» 『リリィ、はちみつ色の秘密』 [cinema!cinema! ミーハー映画・DVDレビュー]
新宿明治安田生命ホールに、『リリィ、はちみつ色の秘密』の試写会で行ってきました。
今回の試写会は、この『リリィ、はちみつ色の秘密』のPRを担っている学生さんの有志団体「チームリリィ」の方にお声かけいただいて、参加させていただきました。
「チームリリィ」の皆様、... [続きを読む]
受信: 2009年3月28日 (土) 22時39分
» 『リリィ、はちみつ色の秘密』 (2008)/アメリカ・カナダ [NiceOne!!]
原題:THESECRETLIFEOFBEES監督・脚本:ジーナ・プリンス=バイスウッド原作:スー・モンク・キッド出演:ダコタ・ファニング、ジェニファー・ハドソン、アリシア・キーズ、クイーン・ラティファ、ソフィー・オコネドー鑑賞劇場 : TOHOシネマズシャンテ公式サイトはこ...... [続きを読む]
受信: 2009年3月29日 (日) 07時03分
» リリィ、はちみつ色の秘密/ダコタ・ファニング [カノンな日々]
予告編を初めて目にした時点でかなり惹かれた作品なんですが、孤独感と喪失感から立ち直り再生する少女の姿を描いたスー・モンク・キッドの小説をウィル・スミスと妻ジェイダ・ピンケット・スミスがプロデュースして映画化した作品です。名子役ダコタ・ファニングとジェニフ....... [続きを読む]
受信: 2009年3月29日 (日) 07時49分
» 『リリィ、はちみつ色の秘密』 試写会鑑賞 [映画な日々。読書な日々。]
1964年の夏、14歳のリリィは幼い頃に自分のせいで死んだ母の愛を確かめたくて、父T・レイに黙って旅に出る。制定されたばかりの公民権法の甲斐もなく白人の嫌がらせを受け怪我をした挙げ句警察に連行された黒人家政婦のロザリンを助け出し、向かった先は母に縁のある町テ... [続きを読む]
受信: 2009年3月30日 (月) 22時33分
» 「リリィ、はちみつ色の秘密」見てきました! [粉雪の日々是、映画なり]
まあ一週間ぐらい前から、何度か言ったと思いますが(あれ?ここじゃなかったっけ?? [続きを読む]
受信: 2009年4月 5日 (日) 18時10分
» 「リリィ、はちみつ色の秘密」 [Zooey's Diary]
派手さは少しもないが、優しい陽だまりのような映画です。
心に深い傷を持つ少女の苦しみ、人種差別問題と、扱うテーマは非常に重いのですが…
幼少期に過失で母親を死なせたトラウマを抱える14歳のリリィ(ダコタ・ファニング)。
その娘に向かって、母親はお前のことを愛してなんかいなかった、
お前を捨てたんだ、と残酷なことを告げる粗暴な父親。
父親に反発し、母親の軌跡を求めて、リリィは家を出る。
黒人三姉妹のボートライト家に身を寄せ、養蜂を手伝いながら、
自分を愛し受け入れてくれる場所を見つけてい... [続きを読む]
受信: 2009年4月 8日 (水) 22時56分
コメント
こんにちは。
この作品、地味ながら味わい深いものでしたね。
孤独な少女がようやく自分の居場所を見つける過程を
とても丁寧に描いていたと思います。
ところで私もリニューアルされてから初めての日比谷シャンテでした。
それほど変わったようにも思えなかったのですが…
ネットで予約購入ができるようになったみたいですね!
投稿: zooey | 2009年4月 8日 (水) 22時55分
>zooeyさん
コメント、TBありがとうございました!
この作品は、
安心して見られる演技力を持った出演者たちが
それぞれにとても良い演技を見せてくれたのも
良かったと思います。
良い作品なのに、
上映館数も少なく、あまりPRもされてないのが
非常にもったないと思います。
シャンテ、TOHO関連のサービスが使えるというだけで
映画館自体は変わった印象はありませんでしたね。
TOHOになっても上質の単館系作品を上映してくれるようなので
ほっと一安心です。
投稿: ANDRE | 2009年4月11日 (土) 11時35分