「グラン・ヴァカンス」 飛浩隆
グラン・ヴァカンス 飛浩隆 ハヤカワ文庫 2006.9. |
久々に和製SFを何か読んでみたいなと思い手に取った1冊。
物語の舞台は、仮想リゾート内にある「夏の区界」。ここでは南欧の夏休みをテーマに、AIたちがそれぞれに与えられた役割を演じながら、訪れる人間達に夏の1日を擬似体験させていたが、あるとき突然、ゲストの来訪が途絶え、それから1000年が経過していた。
1000年間、誰も訪れない状況の中、AIたちは永遠に続く夏休みを淡々と過ごしていたが、あるとき、突如現れた「蜘蛛」たちによって、彼らの暮らす世界が破壊されはじめ、AIたちは存亡をかけて戦いを始める。
AIだけが取り残されてしまった仮想リゾートって設定がなかなか良いです。しかもAIたちは自分達がAIで、その記憶もプログラミングで作られたものだということを自覚していたり。
映像的に美しかったり、グロ描写だったり、意外にも官能シーンが多かったりなんですが、作者の美学みたいなものがダイレクトに伝わってくる作風は嫌いではありません。
この作品、やたらと読み手の想像力を刺激してくるのもちょっと面白いところ。どんな映像を浮かべるかで、好き嫌いが出てきそうです。
でも、シリーズものの第1作ということもあって、500ページ近く読んで、割と謎がいっぱい残されたまま終わってしまうってのは、色々とスッキリしないですねぇ。でもって、第2作以降はまだ文庫化されていないので、色々と分かるまではしばし待たなければいけないようです。
そういえば、1年以上放置されている自分の「どう○つの森」の村の住人達は今頃どんな状況なんだろ、なんてことをふと思ってみたり。大量の草むしりが必要かと思うと、久々に訪れてみる勇気はなかなか出ません・・・。
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コメント
ANDREさん、ご無沙汰してます、こんばんは!
やたらめったらイメージ喚起力のある作品でしたよね。
美しく残酷な世界に痺れました。
(トラバが飛ばないみたいなので、アドレス欄に記事URLを入れました)
投稿: つな | 2009年3月31日 (火) 22時57分
>つなさん
コメントどうもありがとうございます!
和製のSF作品はそれほど読んだことがないので
ちょっと軽く思っていたのですが、
読み応えのある作品で、
頭の中でめくるめく映像世界を楽しんで読みました。
気になる謎も残っているので、
今後のシリーズ展開が楽しみです。
投稿: ANDRE | 2009年4月 1日 (水) 23時45分