「沖で待つ」 絲山秋子
・「勤労感謝の日」
失業中の主人公の過ごす勤労感謝の1日を描く。
この手の作品は、共感要素が多いほど面白いんだろうなと思うのですが、自分はあまりに共通点がなさすぎるので、こういう環境の人はこういうことを思うのかとフムフムと読む感じになってしまいました。結構ズバっと毒を吐く感じが面白い。
・「沖で待つ」
同期入社で一緒に福岡の支店に配属になった太っちゃんとの男女の仲を越えた友情を描く。
正直、これが芥川賞なのかという疑問もあるのですが、内容としては結構好きな作品でした。なんといっても、以下の台詞が良かった!
「同期って、不思議だよね」
「え」
「いつあっても楽しいじゃん」
これ、本当に的を射た言葉ですよね。大学院でも相当上の学年になってしまった自分なのですが、同期で一緒に入学した仲間と会うと、なんともいえない居心地の良さがあります。大学のサークル仲間もそうですよね。同期ということで、共に苦楽を味わった連帯感がありますからね。主人公と太っちゃん、2人で一緒に地方に配属されたとあっては、その連帯感は本当に強かったんだろうなというのが想像され、恋愛モノではなく、友情物語におさまっていたところが非常に良かったと思います。
でも、この連帯感にしばられてしまうのって常に過去の一時期に縛られているような気がしないでもないですね。いつ会っても楽しいけど、そのとき、我々は過去の一時点における我々に戻ってるわけですから。
・「みなみのしまのぶんたろう」
全編ひらがなとカタカナだけを使い、童話タッチの語り口で、政治家だったり、文学者だったりする「しいはらぶんたろう」の数奇な運命を描く作品。
これはちょっと苦手な作品。てか、「しいはらぶんたろう」という名前があからさますぎて、風刺としてもちょっと笑えなかったかなぁ。
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 「足音がやってくる」マーガレット・マーヒー(2013.05.30)
- 「SOSの猿」伊坂幸太郎(2013.05.05)
- 「死美人辻馬車」北原尚彦(2013.05.16)
- 「俺の職歴」ミハイル・ゾーシチェンコ(2013.04.01)
- 「エムズワース卿の受難録」ウッドハウス(2013.03.24)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント