映画「宮廷画家ゴヤは見た」
Goya's ghosts アメリカ スペイン 2006 2008年10月公開 DVD鑑賞 |
昨年、友人と観にいく約束をしていたにもかかわらず、急用が入ってしまってドタキャンしてしまい、大変申し訳なかった作品。結局チャンスを逃してしまい、ようやくDVDで鑑賞できました。
舞台は18世紀末スペイン。画家ゴヤ(ステラン・スカルスガルド)は宮廷画家として肖像画などを描く一方で、世相を風刺した版画を精力的に発表していた。あるとき、ゴヤは商人の娘イネス(ナタリー・ポートマン)と神父のロレンソ(ハビエル・バルデム)をそれぞれモデルにして肖像画を描く。
そんな折、教会による異端者の摘発が厳しくなり、酒場で豚肉を食べなかったイネスはユダヤ教徒と疑われ異端審問にかけられ、酷い拷問の末、彼女は異端者として囚われの身となってしまう。ゴヤは彼女を救う手助けとしてロレンソをイネスの父親に紹介するのだが・・・。
やがてフランス革命が起こり、ナポレオン軍がスペインに侵攻してくる中、ゴヤはかつて自らの絵のモデルとなったイネスとロレンソの2人の数奇な運命を目撃する・・・
「カッコーの巣の上で」や「アマデウス」のミロス・フォアマン監督ということで、かなり期待して観たのですが、裏切られることのない素晴らしい作品でした!
この監督の作品は扱うテーマが深く思い一方で、しっかりとエンターテイメント作品に仕上げてくれるため、「アマデウス」同様に豪華な映像も楽しめ、目の離せないエピソードの連続の中に、深く考えさせるテーマをつきつけてくるのは、本当に見事でした!
ただ、どのキャラクターもちょっとインパクトに欠けるというか、邦題の通り、ゴヤは完全に傍観者ですし、メインとなるロレンソとイネスは俳優陣の熱演によって見ごたえはあるものの、もうちょっとガツーンとくるような場面があると良かったかなぁと思います。
この作品、自分はなんといってもナタリー・ポートマンに釘付けでした。年齢がとても近いこともあって、「レオン」の頃からずっと好きなんですが、彼女の演技の幅は本当に広いですね~。しかもこの作品ではその幅の広さを如何なく発揮していて、様々な彼女を見ることができるというのも嬉しいじゃないですか!
ラストは純真無垢な存在として描きたかったのかもしれないけれど、そうなってしまう過程の説得力がちょっと足りなかったような気がしないもでありません。
一方、チラリとしか映らないもう1人の彼女は、どうやら幸せをつかんだようでほっと一安心。でも、やっぱり、出会って欲しかったなぁ。
ハビエル・バルデムは、ちょっとやらしい感じの役柄をこれまた熱演。超曲者なこの男のせいで!と思うとイネスへの同情心がふつふつと湧き上がり、観ているこちら側は一体どうなってしまうのかとハラハラしっぱなしでした。
ゴヤといえば巨人の絵とか「裸のマハ」くらいしか知りませんでしたが、宮廷画家をしながら、風刺画を描き続けたというのはとても面白いですね~。しかも、宮廷の肖像画まで変に美化せずに皮肉たっぷりに描いているってのが。よくクビになりませんでしたよねぇ・・・。
この邦題、珍しく良いです。原題はちょっと分かりづらいですよねぇ。ゴヤの作品で描かれた人々(⇒幽霊たち<複数形がポイントですね>)を通して当時の社会を描き出すといったところなんだと思いますが、邦題のほうは作中のゴヤがまさしく傍観者にすぎないというこの映画の本質をしっかりと捉えた上に、「一体何を見たの?」とちょっと気をひくタイトルになっていて良いなぁと思います。
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コメント
時代の流れは、歴史の通りのようですが、
ロレンツォとイネスは架空の人物のようです。
ヨーロッパの異端審問の中でも異質だったらしい
スペインの異端審問という負の歴史を描きたいのは
わかりますが、少し散漫でした。
もう少し時間軸を絞って描いた方がすっきりしたような気がします。
なお、邦題はいいとしてキャッチコピーの「立ち入り禁止の愛」は、
勘違いとしか思えません。
投稿: KGR | 2009年5月19日 (火) 13時58分
>KGRさん
コメント/TBどうもありがとうございます!
突然15年後となったのには
自分も驚きましたが、
スペインの異端審問は興味深く
自分は割と面白く観ることができました。
序盤で宮廷のことも描いていたので
後半もう少しその後の宮廷が描いて欲しかったなとは
思いますが、詰め込みすぎになってしまうと思うので
難しいですねぇ。
「立ち入り禁止の愛」というのは
もはや作品を観ているのかどうかさえ
疑われてしまうコピーですね・・・
投稿: ANDRE | 2009年5月21日 (木) 00時33分