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2009年5月18日 (月)

「夕子ちゃんの近道」 長嶋有

夕子ちゃんの近道 (講談社文庫)

夕子ちゃんの近道

長嶋有

講談社文庫 2009.4.
(original 2006)

第1回大江健三郎賞を受賞したことで話題となった作品。当時、長嶋作品がそのような賞をとったことにとても驚いた(良い意味で)のを覚えていて、どんな作品なのかずっと楽しみにしてました。

主人公は30代の青年。ふとしたきっかけで骨董品店のフラココ屋の2階に居候させてもらうようになった主人公が、店の常連の瑞枝さん、店長、隣に暮らす大家さん一家の娘たち夕子ちゃん&朝子さん、店長の友人であるフランス人のフランソワーズさんら個性豊かな人々と過ごす日々を描く連作短編集。

7作品+αが収録されているんですけど、文庫本の栞が特別仕様になっていて、上記の「+α」と併せて講談社さんは非常に良い仕事をしているなぁと思います。グッジョブです!

連作短編で一話ごとに焦点があてられる人物が違うものの(主人公は一貫して語り手である青年ですが)、一話進むごとに物語全体がちょっとずつ進行するので、作品的には長編の趣が強いですね。

ちょっとしたエピソードや会話、描写から、それぞれに味わい深い登場人物たちのキャラクターが生き生きと動き出して、日常的な描写が続く作品なのにまったりといつまでもこの世界に浸っていたいなぁと感じさせてくれる1冊でもともと好きな長嶋作品の中でもかなりのお気に入りとなりました。

登場する人々が、クセがありながらも、みな人間味があり愛らしく、さらには、人間的に良くできているなぁと思わせるキャラクターばかりなんですよねぇ。

タイトルにも使われている夕子ちゃんはとりわけ気になるキャラクターだったんですが、まさかまさかの展開にビックリ。そして彼女の強さにまたビックリ。色々な道を歩きながら、いつも何を考えていたんだろうかなんて思ってみたり。

主人公がまだまだ大人になりきれてない30代なんですが、なんとなくその気持ちも分かる今日この頃なので、その辺りも読んでいて面白いところでした。

最終章はちょっととってつけたような感じでしたが、爽やかな読後感だったのでそれも良かったです。

そんわけで、とても満足度の高い作品だったんですが、この作品を広く海外に紹介したいということで賞を与えた大江氏の真意はどうも伝わらず。これって翻訳でこの空気感を伝えるのは難しいのではないでしょうか。特に長嶋氏って言葉の使い回しが結構独特な気がするので。

あと、解説にて大江氏が、主人公の本名は作者と同じと語っていますが、僕も同じように思って読んでました。しかし、僕は漢字の読み方も作者と同じで、「そっちじゃない」ほうは「優」だと思ったんですよねぇ。店長が主人公の名前を「優」だと思ってるってのもなんとなく作品の雰囲気にあってませんか?

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コメント

こんばんは。ストーカーみたいに度々お邪魔してすみません。

ANDREさんの感想で、「これは絶対読まなくちゃ」と本まで買っておきながら、
すっかり積読だったこの本、やっと読み終えました。
日常の何気ない、とっても小さな小さな部分に目を留めて描写されていること自体、
よくその光景を言葉にしてるな、と思うのですが、
それが巧く生かされていて、なんだか、凄いなぁ…と感服してしまいました。
わたしもこれはかなりお気に入り度が高いです。

わたしも「にんべんのほう」は「優」だと思ったんですよ!
大江さんの推察が正しいのかもしれないけど、何かピンと来なくて、
店長は「優」だと思っていたというほうが、やっぱり合ってる気がします。

投稿: 悠雅 | 2010年5月12日 (水) 00時09分

>悠雅さん

コメントどうもありがとうございます!

風邪でダウンしてしまい、
お返事が遅くなってしまい申し訳ありませんでした。

こちらの感想をきっかけに
読んでいただいたとのことどうもありがとうございます!!

こういうなんともない日常から
物語を紡ぎだしていく巧さは本当に見事ですよね。
長嶋作品の中でもかなりのお気に入りです。

「にんべん」の名前、同じご意見だとのこと、
とても嬉しいです。
「優」という字はよく合ってますよね。
大江氏の推測はちょっと考えすぎな気もして、
自分もあまりピンときませんでした。

そうそう、読書メーターのほうも、
お気に入りに登録していただき、
どうもありがとうございました!

投稿: ANDRE | 2010年5月16日 (日) 00時10分

再びお邪魔します。
先日、娘宅にあれこれ物を送る用事があったので、この本を同封したら、
早速読んだらしく、とても気に入ったらしい様子のメールが来ました。
おかげさまで、彼女のお気に入りも1作品増えたみたいです。

でも、わたしね、「+α」に気づけなかったのでした。
せっかくANDREさんがわざわざ書かれているのに、特製の栞にばかり気を取られていて、
娘に指摘されるまで、全く気にもしてなかったの…
悔しいから、今度本屋さんでそこだけ立ち読みしてきます・・・

そうそう。こちらこそ、知れた読書量なのに、お気に入り登録していただいて、申し訳ありません。
これからも、ぼちぼち行きますわ。

投稿: 悠雅 | 2010年5月20日 (木) 19時33分

>悠雅さん

ふたたびのコメントどうもありがとうございます!

お嬢様もお気に召されたとのこと、
大変嬉しいです。

+α、「まさかこんなところに!?」
というような場所にありましたから
気付いてない人も結構多いのではないかと思います。
栞と帯を特別仕様にしてくれるだなんて、
作品の内容とあわせてとても粋な1冊ですよね。
是非、+αも楽しまれてください!!

投稿: ANDRE | 2010年5月24日 (月) 01時28分

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