「クレヨン王国の十二か月」 福永令三
クレヨン王国の十二か月 福永令三 講談社文庫 2006.9. |
小学生の頃に結構好きで読んでいたシリーズです。講談社文庫で第1作目が出版されたのは知っていたのですが、それが、初版出版時に削除されたという約100枚の原稿も収録したという「完全版」であることを最近知って、読んでみることにしました。
クレヨン王国のゴールデン王さまはシルバー王妃の12の悪い癖が直るまで戻らないと言って行方をくらませてしまう。小学生のユカは大みそかの晩、クレヨンたちの会話を聞き、シルバー王妃とともに、王さまを探しに12の町をめぐる旅に出ることになるのだが・・・。
最後に読んだのが大分昔なので、正直、どこが今回新たに加えられた部分なのかとかは分からないのですが、意外とストーリーは覚えているもので、新しい町に到着するたびに、「あ、この町はこんな事件が起こるんだっけ」と記憶がよみがえってきました。
こういう名作は40年以上前の作品とは思えないくらいに、今読んでも十分通用する内容で、普遍的な面白さがあったのですが、大人になってから読むと、子供の時よりも説教臭い物語だということのが気になりましたね。こういうのって意外と子供が読んだほうが気にならないんですかねぇ。
シルバー王妃の癖というのが、子供なら(大人でも?)だれでも心当たりのありそうなものが多いので、その癖を1つずつ克服していくという物語が、次の町では何か起こって、癖のせいでどんな悪い目にあってしまうのかというちょっと不謹慎なワクワク感を感じさせてくれますよね~。
ごっそりカットされていたという「だるま裁判」の部分、裁判というのが全体の中でもちょっと難しい題材になってしまっているのが原因かとも思いますが、これがないと、癖を直す部分につながりにくくないですか?オリジナルだとどうなってたんでしたっけ??ちょっと探してオリジナルのほうでチェックしてみようかな。
クレヨン王国シリーズは結構読んでいたのですが、一番のお気に入りは『黒の銀行』という作品で、これは何度読んだか分からないくらいに愛読していました。シリーズの中では中学生が主人公で、活字も小さめで、ちょっと上級生向きの作品だったんだと思いますが、黒の銀行のアイデアも、強盗が出てくるストーリーもとても面白かったのをよく覚えています。
ついでにもう1つ好きだったのは『水色の魔界』という作品。これも、今思うとかなり説教っぽい話なんですが、魚たちが純粋な悪として登場しないところなんかよくできたストーリーだったと思います。シリーズの中では割と暗めの話ですが・・・。
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