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2009年6月10日 (水)

「墨東綺譚」 永井荷風

墨東綺譚 (角川文庫)

墨東綺譚

永井荷風

角川文庫 2009.3.
(original 1937)

今年が永井荷風の没50年ということで、関連作品が多数出版されていますが、その代表作が装いも新たに文庫化したものを読んでみました。こういう近代の古典ももうちょっとしっかりと読んでいきたいなと思っていたところなので、丁度良いタイミングでした。

舞台は昭和初期の東京。主人公は、『失踪』というタイトルの小説を執筆中の50代の作家、大江匡。あるとき、散策中に突然の大雨に見舞われ、大江は通りがかりのお雪という名の娼婦の女性を自分の傘にいれてやる。やがて、近所のラジオの音に悩まされていたこともあり、大江はお雪のもとに通うようになるのだが・・・。

タイトルだけはかなり昔から知っていたのですが、この「墨東」というのが隅田川の東だということに今の今まで気づいていませんでした。昭和初期の東京の姿を割と丁寧に面白く描いているので、風景描写などだけでも十分に興味深い作品でした。

で、墨田区にあった玉の井という私娼街を舞台にした作品ですが、特に艶っぽい話だというわけでもなく、かといって主人公とお雪の関係にそこまでの面白さも感じられず、肝心の本編のストーリーはあまり楽しめなかったのですが、上述のように風景や主人公の散歩の様子などの日常描写は非常に面白く読むことができました。

でもって全く同じ理由で、本編後に収録されている作者によるあとがき的な「作後贅言」のほうが本編よりもずーっと面白かったかなぁと。

昭和初期の銀座の様子などとても興味深いです。今の自分が知っている風景が過去とつながっていくのが感じられてワクワクしちゃいました。先日読んだ柴崎友香の『その街の今は』の主人公が自分の暮らす街の古い写真にひきつけられる気分が分かります。

荷風はとにかく情景描写が上手いなという印象でしたので、気になっている「ふらんす物語」と「あめりか物語」も機会をみて読んでみようかなと思います。

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コメント

情景描写の妙が気に入ったのなら、泉鏡花作品などもお薦めです。
とてもキラキラしい幻想的な情景描写が美しい作品が多いです。
好みは分かれそうだし全作品お薦めではないですが
筒井康孝や平井一正や星新一など今では古本屋のが多くありそうな作家さんも読み応えありますよ。
あととっても横ですが、デスノートを好きだったならニコ動の
sm81208やsm4160482をお薦め。
まさかこう使われるとは思わなかっただろうな~と。

投稿: たけ | 2009年6月10日 (水) 03時42分

>たけさん

コメントどうもありがとうございます。

泉鏡花、一時期好きでよく読んでました。
あの幻想的で繊細な世界観は良いですよねぇ。
平野啓一郎の『一月物語』を読んだときは、
泉鏡花チックな作品だ!とちょっと嬉しかったものです。

荷風の情景描写はあくまで現実世界を描くものなので、
鏡花の作り出す幻想世界とはまた違った味わいがありました。

星新一は最近またちょっとブームなのか、
再版されたりTVでミニシリーズが放送されたりしてますね。
こちらも筒井康隆とあわせてかなり読んでいた頃があります。
ショートショート1001話コンプリートしたいのですが、
ちょっと大変そうで未だ叶わず。

デスノはどっぷりとハマってましたね~。
動画、見てみますね。どうもありがとうございます。

投稿: ANDRE | 2009年6月11日 (木) 01時13分

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