「12歳の文学」 小学生作家たち
12歳の文学 小学生作家たち 小学館文庫 2009.4. |
小学館が主催している応募資格を小学生に限定した文学賞の第1回上位入賞作品を集めた1冊ということで、コンセプトの面白さにひかれて読んでみました。
大賞受賞作品が2作品を含めて全部で9作品が収録されているのですが、どの作品も文章力は未熟だと言わざるを得ないものの、しっかりと読み応えのある作品が多く、なかなか面白く読むことができました。
こういう賞って、「子供にしては」という作品ではなくて、「子供ならでは」の作品に出会えたときのほうが嬉しいですね。
でもって、とりわけ好きだったのは実は大賞受賞作品ではなく、『夏時間』、『オトナのひとへ。』、『夕日の丘に』の3作品。この3つは本当に面白かったです!!
以下気になった作品をいくつか取り上げて雑感。
・「月のさかな」
大賞受賞作。
確かに雰囲気は素晴らしいんだけど、ちょっと背伸びしすぎな気も。描こうとしている世界に文章力が届ききれていないというのを強く感じてしまい、「子供にしては」の印象が強い作品でした。
・「夏時計」
友人関係の描き方なども上手くて、とても面白く読みました。小学生にとっての夏休みは、友情&宿題が大部分を占めますよね。ラスト、ある意味で大人っぽく成長していく姿も印象的。
・「オトナのひとへ。」
こういう文って、それこそ大人が擬似子供目線で書いてしまうと、どこか寒い感じがすることも多いんですけど、「子供ならでは」の良さが存分に発揮された作品だったと思います。
この作品の持つパワーが結構好きです。
・「夕日の丘に」
これはとても良かった!下手すれば「子供にしては」になりそうなんですが、このテーマでここまで書けるというのは大人でもなかなか難しいのではないかと思います。何か、天性の作家力みたいなものを持ってるのではないかという感じがする作品でした。
この作品を書いた少年がそんなに文学少年って感じじゃないのも非常に興味深い。
・「ジャンの冒険」
自分は子供のころ、壮大な冒険活劇を頭の中で色々と思い描いて遊んでいることが多かったのですが、そういう頭の中で繰りひろげられた壮大なファンタジーを描いた作品で、内容も、文章も決して上手くはないんだけど、なんだかとても好感を持ってしまいました。
・「『明太子王国』と『たらこ王国』」
こちらも大賞受賞作。
発想がとにかく面白い!これに尽きます。パワフルで微笑ましい作品でした。
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