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2009年6月17日 (水)

映画「路上のソリスト」

The Soloist [Music from the Motion Picture]

the soloist

米 英 仏 

2009

2009年5月公開

劇場鑑賞

音楽系の映画はやっぱり良い音響で観たいので、劇場まで足を運んできました。監督は『プライドと偏見』、『つぐない』と文芸モノが続いた英国の新星ジョー・ライト。

舞台はLA。ロサンゼルス・タイムズの人気コラムニストであるスティーヴ(ロバート・ダウニーJr.)はあるとき、路上で見事なヴァイオリンを演奏するホームレスの男ナサニエル・エアーズ(ジェイミー・フォックス)と出会う。彼が名門ジュリアード音楽院に入学した過去を持ちながらも路上生活者となっていることを知ったスティーヴは彼のことを記事にしようと取材を始める。

やがて彼のコラムは評判を呼び、感銘を受けた読者からナサニエルにチェロが寄付されるまでになる。スティーヴはナサニエルに再び演奏家として歩み始める機会を与えようとするが、統合失調症を病むナサニエルは屋内に入ることを拒み、自らの生活を守ろうとする。

実際にLAタイムズに掲載され好評を博したコラムを基に人気コラムニストと天才的な音楽の才能を持った路上生活者の友情を描く。

もっとサクセスストーリー的な映画なのかと思っていたんですが、どうもすっきりしないまま強引にまとめてしまっているような部分が妙に実話っぽかったです。

つまらなくはないんだけど、どこか物足りない。そんな印象の作品でした。ただ、主演2人が素晴らしいので、この2人のおかげで映画としての価値は大分上がっているように思います。ジェイミー・フォックスは作品のたびに上手くなっている気がする。

これ、映画化するのちょっと早かったのではないでしょうか。映画がどうもすっきりしないところで終わるのは、彼らの友情の芽生えを描くだけで終わってしまい、もう一歩深い洞察やテーマ、感動を盛り込めそうなエピソードが現在進行形でまさに今育まれている、もしくは、今後の彼らの人生で起こるんだろうな、と。

コラムニストというのはそもそもどこか上から目線なことが多いと思うのですが(何かを評するのだから仕方がない)、ナサニエルとの交流も、結果的に名声のために彼を利用したような形になってしまうのは当然の流れとはいえ、なかなか難しいところ。ただ、ナサニエルのほうも、そんなことは分かっていたはずで、終盤で、「え?今さら、そこでキレるんですか!?」とちょっと思ってしまったり・・・。ま、実話だと言われてしまえば何も言えませんが。

あと、もう1つちょっと残念だったのは、ナサニエルが素晴らしいチェロ演奏を初めてスティーヴに聞かせるシーン。チェロをもっと聴きたいと思うのに、すぐにオケの音を被せてしまって、結果的にチェロの素晴らしさが感じられなかったのです。あの場面は、オケは一切入れないで、チェロの音だけで鳩を飛ばして欲しかったな、と思います。それこそ、見ている我々がそのチェロ演奏の向こうに広がるオケの壮大さを、チェロの音だけから感じることができれば良かったなと。

あと、劇中でも「ファンタジア」の名前がチラッと出ましたが、中盤のオケ演奏シーンのアニメーションはまさに「ファンタジア」のベートーベンの第5(「運命」)を思わせる演出でしたね~。ただ、これもアニメがちょっとくどいというか、饒舌というか。

全体的に音楽の力を信じ切れてないような印象が残る作品で、チェロ単体でも、余計な映像がなくても、伝わるものはちゃんと伝わるのになぁと。それこそ『奇跡のシンフォニー』なんかはその辺りが上手かったよなぁと思います。

実際のコラムのバックナンバーと本人達の映像(演奏もちょっと)はLAタイムズのサイト(コチラ)で見られます。ちなみに、コラムは映画よりも面白いです。英語も読みやすいし。

 

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コメント

こんばんは^^
コメントありがとうございます。
確かに2人の俳優、特にサミュエルの演技は素晴らしいものが
あり、彼らの力で最後まで観れたという感じです。

おっしゃる通り上から目線は仕方ないことで、そこに不快感を抱い
たのはある種思うつぼにはまっていたのだと思うのですが、その
後のフォローというか…。
何だか最後に駆け足で「俺が悪かったよごめん。」って言われて
それで全部丸く収まっちゃったの?って。

ナサニエルに思うところが色々あったのと同じようにロペスにだって
色々考えるところがあったんだと思うんですが、どうもそこがナサニ
エル寄りに過ぎたような気がしました。

投稿: KLY | 2009年6月18日 (木) 23時54分

>KLYさん

コメントどうもありがとうございます。

この作品は出演者に大分支えられてましたね~。
ジェイミー・フォックスは
実際にジュリアード音楽院卒業ということもあってか、
音楽系作品では本当に見事な演技を見せてくれますね。

描き方がナサニエル寄りなのは、
なんとなく実在のご本人に気をつかったのかなという
気がしないでもないです。
存命中の実在の人物を題材にした作品は
どうしてもその制約がかかってしまいますよね・・・。

投稿: ANDRE | 2009年6月19日 (金) 01時08分

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