映画「路上のソリスト」
|
the soloist
米 英 仏
2009
2009年5月公開
劇場鑑賞 |
音楽系の映画はやっぱり良い音響で観たいので、劇場まで足を運んできました。監督は『プライドと偏見』、『つぐない』と文芸モノが続いた英国の新星ジョー・ライト。
舞台はLA。ロサンゼルス・タイムズの人気コラムニストであるスティーヴ(ロバート・ダウニーJr.)はあるとき、路上で見事なヴァイオリンを演奏するホームレスの男ナサニエル・エアーズ(ジェイミー・フォックス)と出会う。彼が名門ジュリアード音楽院に入学した過去を持ちながらも路上生活者となっていることを知ったスティーヴは彼のことを記事にしようと取材を始める。
やがて彼のコラムは評判を呼び、感銘を受けた読者からナサニエルにチェロが寄付されるまでになる。スティーヴはナサニエルに再び演奏家として歩み始める機会を与えようとするが、統合失調症を病むナサニエルは屋内に入ることを拒み、自らの生活を守ろうとする。
実際にLAタイムズに掲載され好評を博したコラムを基に人気コラムニストと天才的な音楽の才能を持った路上生活者の友情を描く。
もっとサクセスストーリー的な映画なのかと思っていたんですが、どうもすっきりしないまま強引にまとめてしまっているような部分が妙に実話っぽかったです。
つまらなくはないんだけど、どこか物足りない。そんな印象の作品でした。ただ、主演2人が素晴らしいので、この2人のおかげで映画としての価値は大分上がっているように思います。ジェイミー・フォックスは作品のたびに上手くなっている気がする。
これ、映画化するのちょっと早かったのではないでしょうか。映画がどうもすっきりしないところで終わるのは、彼らの友情の芽生えを描くだけで終わってしまい、もう一歩深い洞察やテーマ、感動を盛り込めそうなエピソードが現在進行形でまさに今育まれている、もしくは、今後の彼らの人生で起こるんだろうな、と。
コラムニストというのはそもそもどこか上から目線なことが多いと思うのですが(何かを評するのだから仕方がない)、ナサニエルとの交流も、結果的に名声のために彼を利用したような形になってしまうのは当然の流れとはいえ、なかなか難しいところ。ただ、ナサニエルのほうも、そんなことは分かっていたはずで、終盤で、「え?今さら、そこでキレるんですか!?」とちょっと思ってしまったり・・・。ま、実話だと言われてしまえば何も言えませんが。
あと、もう1つちょっと残念だったのは、ナサニエルが素晴らしいチェロ演奏を初めてスティーヴに聞かせるシーン。チェロをもっと聴きたいと思うのに、すぐにオケの音を被せてしまって、結果的にチェロの素晴らしさが感じられなかったのです。あの場面は、オケは一切入れないで、チェロの音だけで鳩を飛ばして欲しかったな、と思います。それこそ、見ている我々がそのチェロ演奏の向こうに広がるオケの壮大さを、チェロの音だけから感じることができれば良かったなと。
あと、劇中でも「ファンタジア」の名前がチラッと出ましたが、中盤のオケ演奏シーンのアニメーションはまさに「ファンタジア」のベートーベンの第5(「運命」)を思わせる演出でしたね~。ただ、これもアニメがちょっとくどいというか、饒舌というか。
全体的に音楽の力を信じ切れてないような印象が残る作品で、チェロ単体でも、余計な映像がなくても、伝わるものはちゃんと伝わるのになぁと。それこそ『奇跡のシンフォニー』なんかはその辺りが上手かったよなぁと思います。
実際のコラムのバックナンバーと本人達の映像(演奏もちょっと)はLAタイムズのサイト(コチラ)で見られます。ちなみに、コラムは映画よりも面白いです。英語も読みやすいし。
| 固定リンク
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: 映画「路上のソリスト」:
» 路上のソリスト [だらだら無気力ブログ]
LAタイムズの記者スティーヴ・ロペスのコラムを基に、路上で暮らす ホームレスの天才音楽家ナサニエル・エアーズとの交流を描いたドラマ。LAタイムズの記者ロペスは、偶然街中でバイオリンを弾いている ホームレス、ナサニエル・エアーズと出会う。 ロペスは彼がジュリア..... [続きを読む]
受信: 2009年6月17日 (水) 01時42分
» 路上のソリスト [LOVE Cinemas 調布]
『プライドと偏見』、『つぐない』のジョー・ライト監督最新作。主演は『Ray/レイ』でオスカー俳優の仲間入りをしたジェイミー・フォックス。共演に『アイアンマン』のロバート・ダウニー・Jr。製作総指揮に最近では『消されたヘッドライン』、『バーン・アフター・リーディング』、『フロスト×ニクソン』などに係わったティム・ビーヴァンが加わっています。鑑賞前から期待を持たせてくれる作品、シャンテシネに行ってきました。... [続きを読む]
受信: 2009年6月17日 (水) 02時08分
» 路上のソリスト [☆彡映画鑑賞日記☆彡]
『奏で続ければ、いつかきっと誰かに届く。』
コチラの「路上のソリスト」は、かつて天才と呼ばれたチェリストだった路上で暮らす男ナサニエル(ジェイミー・フォックス)をLAタイムズのコラムニストのスティーヴ・ロペス(ロバート・ダウニー・Jr)が追った、実在の....... [続きを読む]
受信: 2009年6月18日 (木) 06時32分
» 『路上のソリスト』 (2009)/アメリカ [NiceOne!!]
原題:THESOLOIST監督:ジョー・ライト原作:スティーヴ・ロペス出演:ジェイミー・フォックス、ロバート・ダウニーJr.、キャサリン・キーナー、トム・ホランダー、リサ・ゲイ・ハミルトン鑑賞劇場 : TOHOシネマズシャンテ公式サイトはこちら。<Story>ロペス...... [続きを読む]
受信: 2009年6月18日 (木) 07時45分
» 路上のソリスト/ The Soloist [我想一個人映画美的女人blog]
{/hikari_blue/}{/heratss_blue/}ランキングクリックしてね{/heratss_blue/}{/hikari_blue/}
←please click
『つぐない』のジョー・ライト監督最新作。
ロバート・ダウニーJr×ジェイミー・フォックス、演技派二人の共演が見どころ!
5月公開。先日試写で観てきました〜。
L.A.タイムズの有名コラムニスト、スティーヴ・ロペスが書いた実話の映画化。
そのコラムニストを、近年もっともノってる俳優の一人、ロバート・ダウニーJrが演じ... [続きを読む]
受信: 2009年6月18日 (木) 23時34分
» 【映画】路上のソリスト…アライグマと尿は何を象徴してんですか? [ピロEK脱オタ宣言!…ただし長期計画]
え〜っと、今日{/kaeru_fine/}
は昨日{/hiyoko_cloud/}{/kaeru_rain/}の行動記録詳細をば…
ということで、映画観に行ったのでそちらと合わせての報告って事になります。
レンタルDVDでは先に観た映画も沢山報告せずに残っているのですが{/ase/}、とりあえずこちらを忘れないうちに…。
「路上のソリスト」
(監督:ジョー・ライト、出演:ジェイミー・フォックス、ロバート・ダウニー・Jr、キャサリン・キーナー、2009年アメリカ)
2009年6月7日(日曜日)... [続きを読む]
受信: 2009年6月20日 (土) 05時21分
» 路上のソリスト [映画君の毎日]
●ストーリー●バイオリンを演奏する路上生活者のナサニエル(ジェイミー・フォックス)に出会ったロサンゼルス・タイムズの記者ロペス(ロバート・ダウニー・Jr)。かつてジュリアード音楽院に在籍し、チェロを演奏していたというナサニエルに興味を抱いたロペスは、ナサニエル... [続きを読む]
受信: 2009年6月22日 (月) 01時35分
» 【路上のソリスト】 [日々のつぶやき]
監督:ジョー・ライト
出演:ロバート・ダウニーJr.、ジェイミー・フォックス、キャサリン・キーナー、トム・ホランダー、リサ・ゲイ・ハミルトン
奏で続ければ、いつかきっと誰かに届く。
「ナサニエル・エアーズは路上でヴァイオリンを弾くホームレス... [続きを読む]
受信: 2009年6月23日 (火) 15時42分
» 路上のソリスト / The Soloist [勝手に映画評]
ロサンゼルス・タイムズの有名コラムニスト、スティーヴ・ロペスが書いた実話の映画化。昨年公開されたとき、行くか行くまいか悩んだ結果、行かなかった作品。再度公開しているところがあり、やっぱり行けばよかったなぁと思っていたので、見てきました。
ロバー...... [続きを読む]
受信: 2010年10月16日 (土) 21時38分
コメント
こんばんは^^
コメントありがとうございます。
確かに2人の俳優、特にサミュエルの演技は素晴らしいものが
あり、彼らの力で最後まで観れたという感じです。
おっしゃる通り上から目線は仕方ないことで、そこに不快感を抱い
たのはある種思うつぼにはまっていたのだと思うのですが、その
後のフォローというか…。
何だか最後に駆け足で「俺が悪かったよごめん。」って言われて
それで全部丸く収まっちゃったの?って。
ナサニエルに思うところが色々あったのと同じようにロペスにだって
色々考えるところがあったんだと思うんですが、どうもそこがナサニ
エル寄りに過ぎたような気がしました。
投稿: KLY | 2009年6月18日 (木) 23時54分
>KLYさん
コメントどうもありがとうございます。
この作品は出演者に大分支えられてましたね~。
ジェイミー・フォックスは
実際にジュリアード音楽院卒業ということもあってか、
音楽系作品では本当に見事な演技を見せてくれますね。
描き方がナサニエル寄りなのは、
なんとなく実在のご本人に気をつかったのかなという
気がしないでもないです。
存命中の実在の人物を題材にした作品は
どうしてもその制約がかかってしまいますよね・・・。
投稿: ANDRE | 2009年6月19日 (金) 01時08分