映画「真夏の夜の夢」
真夏の夜の夢
2009年
日本
2009年8月公開
試写会鑑賞
シェイクスピアの「真夏の夜の夢」を、『ナビィの恋』や『ホテル・ハイビスカス』の中江裕司監督が、沖縄を舞台に翻案した作品。ちょうど1週間前になりますが、試写会に当選し、一足先に観ることができました。
沖縄の離島、世嘉冨島では、古くから島に暮らす精霊達が人間達に忘れ去られ、その存在そのものが消えようとしていた。
ゆり子は妻のいる恋人の敦との関係に疲れ、東京から故郷である世嘉冨島へと帰ってくる。同じ頃、島では村長の息子の結婚式を前に、青年団の若者達が余興の劇の練習に勤しんでいた。
青年団の男達の劇に参加することになったゆり子だったが、そこに、東京から敦がゆり子を追ってやってきて、さらには、敦の妻の梨花もまた夫を追って島までやってくる。
そんな中、ゆり子は幼い頃に出会った島の大きなガジュマルの木に宿るキジムン(精霊)のマジルーと再会する。マジルーはゆり子のために、目覚めて最初に出会った人と恋に落ちるという秘薬を使うのだが・・・。
「真夏の夜の夢」はイギリスの本家ロイヤル・シェイクスピア・カンパニの来日舞台公演をはじめ、舞台でも何度か観たことがありますし、映画化されたものもほとんど観ているくらいに好きな作品の1つ。
基本の物語はシェイクスピアに忠実なのですが、ところどころでアレンジが加わっていて、オリジナル要素も結構多い作品でした。
ただ、沖縄のキジムンなどの精霊達の文化が非常に上手いこと「真夏の夜の夢」の世界観と一致していて、何の違和感もなく、沖縄を舞台に翻案されてしまったところに、シェイクスピアの奥深さを再認識させられました。
ラストのパックの挨拶もしっかり沖縄言葉でやってくれるところが憎いです。
オリジナル部分がちょっとメッセージが強い気もしましたが、「真夏の夜の夢」の映画化作品としては、かなりの個性を持って、インパクトのある仕上がりで、非常に面白かったです。ただ、沖縄文化にもシェイクスピアにも興味が全くないという人にとっては、ちょっと退屈になってしまうかなぁとも。
一部、台詞もそのまま使ってるんですが、一番面白かったのは、劇中劇が、ラスト以外はオリジナルのシェイクスピアの劇中劇をそのまま使っているにも関わらず、しっかりと、「島の古い伝説」として成立させてしまっていたこと。
そんでもって、この劇中劇、過去に映画化されたどの「真夏の夜の夢」よりも、舞台の空気を感じさせてくれるもので、たっぷりと笑わせていただきました。
あと、沖縄の言葉、字幕付でしたが、正直、字幕がないほうが、たとえ伝わりづらくとも、それがかえって、作品の雰囲気を盛り上げたかなという気もします。
* * *
さてさて、今回の試写会、上映後に監督によるトークと映画にも出演されていた照屋政雄氏による三線&歌の演奏がありました。
マイクの調子が悪そうだったのが気になりましたが、そのおかげで、監督の人柄の良さが垣間見られたのが良かったです。監督と照屋氏のやりとりはちょっとした漫才のようで、マイペースの照屋氏とそれに温かくつっこむ中江監督が微笑ましかったです。
最後は、三線にあわせて、試写会に来ていたお客さん全員を巻き込んで、みんなで踊りを踊ってきました。試写会で監督と一緒に踊るなんて経験はなかなかできません。
両手をひらひらさせながら踊る、よく沖縄モノのTVや映画なんかで目にする踊り。ここでも監督が客席まで降りてきて、ダイナミックな踊りで会場全体を一周し、映画のみならず、試写会の会場となったシネマート新宿の映画館全体で沖縄の風を感じることができ非常に楽しかったです。そして、あの踊りは見た目よりも難しかったです・・・。
中江監督、照屋政雄さん、楽しい夜を本当にどうもありがとうございました!
* * *
シェイクスピアの「a midsummernight's dream」の映画化作品といえば、99年のケヴィン・クライン、キャリスタ・フロックハート、ミシェル・ファイファー、ルパート・エヴェレット、クリスチャン・ベールなど、まさにオールスターキャストだった作品が代表的なものになるかと思いますが、個人的に一番オススメなのは、96年のイギリスのロイヤル・シェイクスピア・カンパニの舞台をそのまま映画にした作品が一番のお気に入りです。機会がありましたら是非!
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