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2009年8月 4日 (火)

映画「この自由な世界で」

この自由な世界で [DVD]

It's a free world...

英・伊・独・西

2007

2008年8月公開

DVD鑑賞

ケン・ローチ監督の作品ということでとても楽しみにしていた1本。ヴェニチア映画祭では脚本賞など3賞を受賞しています。

舞台はロンドン。主人公アンジーは祖父母に息子のジェイミーを預け、外国人労働者のための職業紹介所で働くシングルマザー。あるとき、彼女は突然解雇されてしまい、友人のローズと共にそれまでのノウハウを生かして自分たちで新しく職業紹介の会社を設立する。

彼女は労働者たちを集め、彼らの勤め先と契約を交わしなんとか軌道に乗せようと奮闘していた。そんなとき、彼女は不法移民たちに仕事を紹介するほうが儲かるということを知るのだが・・・

あぁ、ケン・ローチのいるイギリスが羨ましい!と、思わず感じてしまうくらいの傑作です。

いつものローチ作品と同様に、社会の底辺にいる人々が、ささやかな幸せを求めるあまり、越えてはいけない一線を越えてしまいさらなる深みにはまっていくやるせなさを描いた作品なんですが、今回は主人公の立場の設定が絶妙すぎだったと思います。

会社を解雇されて起業した彼女ですが、子供一人を養うこともできず、社会における彼女の立場は極めて低い。しかし、そんな彼女が相手にするのは、さらに低い立場にいる外国人労働者や不法移民たち。彼女自身が社会全体からかなりの圧力を受けている一方で、彼女がまた移民たちに圧力をかける側にもなっていて、我々の社会の縮図がそのまま底辺まで繰り返されていく様子には多くのことを考えさせられました。

「自由」というのは、良いものように見えるけれど、我々は常に何らかの制約された範囲の中でしか自由にはなれず、結局はどこかに皺寄せができてしまうことも多いと思います。ここで描かれる様々な立場の人々の悲劇はそんな自由な社会が生んだものではありますが、しかしまた、自由な世界だからこそ、我々は夢を見ることができて、労働者たちはロンドンへやってくるし、アンジーも自らの会社を立ち上げて頑張ろうと思うことができるわけです。

そんなわけで、原題の通りに「自由な世界」というものを見事に描き、我々に色々なことを考えるきっかけを与えてくれたケン・ローチ監督に感謝。

あと、見ながら、ローズはよく付き合って一緒に働いてくれてるなぁと思ってましたが、彼女の堪忍袋の緒が切れるエピソードはアンジーのエゴを感じさせ、確かに彼女の行った行為は酷いと思うんだけれど、もっと小さなレベルでこれに近いことは日常的に見られるような気もして、これもまた色々と考えさせるエピソードでした。

監督の次回作はコメディテイストに仕上がっているとのことで、ますます楽しみ。日本での公開が待ち遠しいです。

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