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2009年9月 2日 (水)

「故郷/阿Q正伝」 魯迅

故郷/阿Q正伝 (光文社古典新訳文庫)

故郷/ 阿Q正伝

魯迅

光文社古典新訳文庫 2009.4.
(original 1923 etc.)

やはりにたまには、所謂世界の名作ものも読んでおこうということで。

中学だかで国語の授業で「故郷」を読んだのと、どこかでいくつか短編を目にしたことがある程度で、しっかりと短編集を読むのは今回が初です。

魯迅といえば、貧しい中国の暮らしや、伝統的な価値観に縛られた人々を描き、新しい時代の西洋的価値観を理想とする作風というイメージですが、思ったよりも、痛烈な風刺という感じでもなくて、読みやすい短編が多かったです。

以下、特に気になった作品。

・「孔乙己」

収録されている1作品目。

居酒屋の情景がとても鮮明に想像される描写の妙と、やたらといつまでも心に残るラストのちょっとため息をつきたくなるような読後感。でも、決して暗くてどんよりとした作品ではないのが良い。

 

・「故郷」

こうして改めて読んでみても、この作品はやっぱり飛びぬけてよくできているなぁと思います。

非常に深い余韻を感じさせる詩情豊かな表現で描かれた物語は、かつての友人の思い出という割と共感しやすいシチュエーションにより非常に読みやすいのだけれど、それでいて、とても深く考えさせる作品です。

そして、最後に思いを馳せられる主人公達の子供たちの物語が、名言されない中でしっかりと感じられて、物語の世界が非常に奥深いものになっているのも本当に良い。

これ、中学校の国語で読ませる作品だけれど、ある程度「故郷」というものを強く感じられる大人になってから読んだ方がずっとその良さを認識できるように思います。中学生くらいだとどうしても、閏土と主人公の少年時代の描写くらいにしか共感できませんからね。そこからもう一歩踏み込んだこの味わい深さは当時はまだ分からなかったなぁ。

国語の教科書で読んだときと翻訳が違うなぁというのがすぐに感じられました。やたらと記憶に残り、今でも友人などと話をしていて話題に上がることが多い(?)のが「豆腐屋小町の楊おばさん」なんですが、実際は「豆腐屋西施」なんですね。「小町」はなかなかの名訳だなぁと思います。あと「紺碧の空には金色の丸い月」って表現だったところなんかは「藍色の大空には金色の満月」となっていて、ちょっと味気ない気が。なんとなくこの作品に関しては旧訳がやたらと記憶に残ってます。

 

・「小さな出来事」

これ、どこかで読んだことあるんですけど、果たしてどこだったのやら・・・。

本当に短い作品なんですが、ほんの小さな出来事にはっと何かが変えられてしまう瞬間にドキッとさせられる。

 

・「藤野先生」

魯迅の日本留学時代の恩師のことを描いた作品。

一生再会することはないけれど、いつまでも恩師としてその記憶が残る関係がなんともいえずに素敵です。

 

・「狂人日記」

わりと衝撃作。でも非常に面白かった。

当時の中国でこの作品を書いたということに純粋に驚きました。

「阿Q正伝」は読んでいてちょっと疲れちゃいました。やるせない。

 

参考過去レビュー

「人間の運命」 ショーロホフ

ズシリと重いロシア。魯迅の描く中国の重さが人間の内側からくるものだとすれば、こちらはもっと大地に染み付いた重さのようなものが感じられる気がする。 

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