「リズム」/「ゴールド・フィッシュ」 森絵都
リズム ゴールド・フィッシュ 森絵都 角川文庫 2009.6. |
森絵都さんのデビュー作『リズム』とその続編である『ゴールド・フィッシュ』が同時に文庫化されたのを読んでみました。
主人公さゆきは近所に住む従兄の真ちゃんに憧れる中学1年生。高校には通わずミュージシャンを夢みながらバイトをしている金髪の真ちゃんと親しくすることを周囲はよく思わないのだが・・・。(『リズム』)
中学3年になったさゆき。夢を求めていた真ちゃんと連絡が取れなくなったり、幼馴染のテツが大人びていく中、高校受験を控え、自分の将来を考え始めるのだが・・・。(『ゴールド・フィッシュ』)
どちらもあまり長い作品ではないので、2冊まとめて気軽に読むことができ、結果、感想も1つにまとめてしまいました。
森さんのデビュー作ということですが、しっかりとまとめられていて、どうやら改稿されてるようではあるものの、今の作家としての成功があるのも納得な作品でした。20代前半の作品かと思うと、流石!の一言に尽きます。
『リズム』のタイトルのもとになっている真ちゃんのラストの言葉が、当たり前ではあるけれど、中学生くらいだと見失いがちなことだと思うので、そこに収束していく物語の流れが、YA作品としてなかなか良かったと思います。
ところが、続編である『ゴールド・フィッシュ』では、『リズム』で築き上げた夢や憧れの世界に対して、非常に厳しい現実が描かれていて、予想外の展開にちょっとビックリしてしまいました。『リズム』だけ読むと、ちょっと甘い感じの物語なんですが、『ゴールド・フィッシュ』を読むことで、長編として物語が引き締まったように思います。
まぁ、でも、甘いんだけど・・・。女性の描く10代の男子って、やっぱり繊細な存在なんだよねぇ。もっとバカでバカで仕方ない部分があるはずなんだけど、そこがどうしても描かれないのがどの作家さんを読んでも気になってしまいます。
ついでに、この手の作品の感想に、しばしば「10代の頃に読みたかった」的なものがあるんですが、この作品関して言えば、自分はそんなことは全く思いませんでした。10代の自分は、そもそもこの手のYA的作品全般をくだらないと思ってましたし。当時の自分がこれを読んでも、説教臭いし、当たり前のことを書いているだけじゃん、としか思わなかったと思うんですよね。
自分がまるで悩みのない極めて能天気な超ポジティブ思考の学生だったこともあるんですが、悩める10代とかってものに何の共感も得られない子供だったのです。愛読書はスティーブン・キングとかだったし・・・。
しかし、今は、そもそも「10代であること」の輝きや、貴重さを強く実感することができて、結構この手の作品を読むの好きなんですよね。頑張れ若者!とか思いながら読んでます。
ま、自分の学生時代に重ね合わせられないのはあまり変わってないんですけどね。
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