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2009年12月22日 (火)

「寄宿生テルレスの混乱」 ムージル

寄宿生テルレスの混乱 (光文社古典新訳文庫)

寄宿生テルレスの混乱
(die verwirrungen des Zöglings Törleß)

ロベルト・ムージル
(Robert Musil)

光文社古典新訳文庫 2008.8.
(original 1908)

古典新訳文庫のドイツもの。ケストナーの『飛ぶ教室』なんかでも御馴染みのギムナジウムを舞台にした作品ということでちょっと面白そうだな、と。

主人公は寄宿学校に入った少年テルレス。仲間達とともに過ごす中、大人の階段をのぼりはじめる彼だったが、あるとき、お金を盗んだ同級生バジーニが仲間達からいじめにあい始め、テルレスもまた彼を前にしたとき、不思議な感覚を覚えてしまう・・・

前半はちょっと退屈な印象だったんですが、バジーニ事件が起こる後半以降、テルレスの激しい混乱っぷりが描かれ始め、結構エンタメしてるテンポの良い展開でなかなか面白い作品でした。

このところ、一人称で書かれた小説を読む機会が非常に多いこともあって、この小説の語り手が、主人公テルレスが自分自身でも気づいていない思いや感情を綴り、さらには、未来の彼がこのことをどのように振り返るのかというようなことまで語られていて、まさに神の視点で、「そこまで彼のことを知ってるあなたは何者!?」な気持にさせてくれる語りが久々でちょっと新鮮な感覚を受けてしまいました。

虚数に関する議論がそのままテルレスの混乱につながって語られる様子なんかはなかなか面白いですね。テルレスが数学教師と面談する場面は結構好きです。

バジーニのいじめ、サディスティックな快感に酔いしれる子供達という感じで、読み応えがあったんですけど、思春期の性の目覚めに揺らぐ少年達の姿がその中に上手く溶け込まれていたように思います。

文学作品とか映画とかのイメージだと、陰湿なイジメって西洋の国だとイギリスとドイツの作品によく出てきますよね。日本とイギリスは島国つながりでなんとなく分かるんだけど、ドイツはなんでなんでしょ。真面目な厳しさ(超ステレオタイプなイメージ)に抑圧される反動でしょうか。ま、全寮制の学校てのがそもそも起こりやすい環境なんだろうけど。

さて、帯やら解説やらで、この作品がボーイズラブだなどと書かれているんですが、多分、BLっぽい要素はこの作品のメインではないと思いますよ、はい。

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コメント

こんばんは。

どこの国でも、青春期の少年は同じような自己葛藤の悩みを抱えているのだなあと思う一方で、その衝動が虚数やカントに向かうあたりに「ドイツらしさ」を感じました。

確かに、この本はどう見ても「BL」ではないですよね……(BLを理解しきれていない素人がいうのも何ですが)

投稿: ふくろう男 | 2009年12月26日 (土) 23時17分

>ふくろう男さん

コメントどうもありがとうございます。

数学教師とのやりとりが自分も特に印象に残ったのですが、自分の10代を思い返しても、どう考えても、虚数やカントには向かわなかったでしょうね(笑)。

BL、ほとんど読んだこともないので分からないんですが、帯にまで書いてこの本を売ろうとするのはちょっとどうかな、という感じもしましたね。

投稿: ANDRE | 2009年12月27日 (日) 00時53分

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