映画「フィッシュストーリー」
フィッシュストーリー 日本 2009 2009年3月公開 DVD鑑賞 |
1つ前の原作の感想記事で予告した通り、原作を読み終えてすぐに映画版をDVDで鑑賞。原作は文庫版で追いかけていて、さらに伊坂作品はどうしても原作を先に読みたいので、劇場公開時もできる限り予告編を見ないようにするなどグググッと我慢していたのをようやく観ることができました。
そんなわけで、短編集『フィッシュストーリー』に収録されている表題作の映画化。
2012年
隕石がまもなく地球に衝突しようとしている時、谷口(石丸謙二郎)は誰もいなくなった町でレコード店に残る店員(大森南朋)と客がいることに気づき、店へと入っていく。そこで、店員は逆鱗というバンドの「FISH STORY」という曲のレコードをかけるのだが・・・。
1980年
気の弱い大学生の雅志(濱田岳)は合コンに行く友人達の運転手をさせられていた。そこで恐怖のテープを収集している友人の悟(波岡一喜)が車内で「FISH STORY」をかける。間奏途中にある無音の部分に女性の叫び声が聞こえることがあるというのだが・・・。
2009年
修学旅行中の高校生の麻美(多部未華子)は寝過ごしてフェリーから降りそびれてしまい、北海道へと向かうフェリーの船内に取り残されてしまう。やがて、彼女の乗るフェリーがシージャックされてしまうのだが、正義の味方(森山未来)が現れ・・・。
1975年
売れないバンド逆鱗のメンバーたち(伊藤淳史、高良健吾ら)は最後のレコーディングに臨むことになるのだが・・・
時代を超えて紡がれる物語。
何に驚いたかって、いきなり『終末のフール』!?な冒頭から始まったこと。映画版のオリジナル要素がこんな形で入ってくるとは!!どうせなら団地を舞台にしてー。とか思ってしまったり。
他、細かな違いはあるものの、概ね原作通りの映画化。ただ、どのエピソードも原作よりも1つ1つの描き方が細かく、深くなっていて、原作のあっさりとした感じがやや物足りなかった自分には嬉しい映像化。あと、原作ではちょっと不満だったネタバレのタイミングが、映画のほうがしっくりくるように変えてあったのもポイント高し。中村監督はとは気が合うのかもしれません。
それそれの物語の中では一番物足りなかったのは2012年パート。レコード店でのやりとりがちょっと舞台っぽい台詞回しになっていて(石丸氏のせいか)、全体的にわざとらしい印象が強いかったんですよねぇ。
そんんわけで、各パートごとにサクッと感想を。
1980年編
濱田岳くんは上手い!『アヒルと鴨』でも良かったけど、今回も『金八先生』にて学級崩壊の中心にいる超問題児を演じていたのが嘘かのように、見事なまでに気弱な学生役にはまってました!金八のときから圧倒的な演技力だったし、今後の活躍が楽しみだよ狩野くん。
あと、怖いテープを集めてる友人が『ちりとてちん』の尊建兄さん!
たまに邦画を見ると、ドラマっ子の血が騒いでしまってよくないですね。
そんなわけで80年編は濱田くんの活躍っぷりにとにかく注目しまくりなのでした。
2009年編
原作のハイジャックがシージャックに変更。そこに怪しげな宗教がうまいことにからんでました。
多部ちゃんも、森山くんも演技力の高い役者なので、こちらも見ごたえたっぷり。多部未華子は朝ドラの半年分よりも、この映画の30分ほどの方がずっと魅力的だったと思うよ。森山未来はTVドラマ版の「ウォーターボーイズ」のときから注目してますが、本当に何をやっても上手くこなしますよねぇ。おっと、またドラマの話が・・・。
てか、このパートが一番「ホラ話」っぽいよね。あのアクションとか。かっこいいけど。なぜにしてパティシエ!?
正義の味方になるまでの生い立ち映像がかなりお気に入りです♪
1975年編
いやはや、この映画、キャスティングが上手いですねぇ。どの時代もちゃんと演技のできる役者さんが見事にはまってるのが嬉しいです。
原作読んでても、ヴォーカル五郎の叫びの部分はグッときてしまいましたね。
最後の最後に大掛かりにネタバラシがあるんですが、「バタフライ・エフェクト」、「風が吹けば桶屋が儲かる」な感じでつながっていくのはなんとも爽快。ネタバレの爽快感は映画版ならでは、という感じでした。できすぎちゃってる感じもあるんだけど、そこはやっぱり「ホラ話」ですからね。
自分の人生も様々な小さな偶然の積み重ねの上で成立してるんだろうなとか思ったり、もしかしたら、この些細できごとが将来地球を救うかも!?とか思ってみたり。
でも、音楽が地球を救ったのは事実だけど、地球を救うのに関与したできごとは無数に存在するわけで、全人類の全ての歴史の歯車の上に今が存在しているんだよなぁ、てのを改めて感じさせてくれる作品でもありました。
中村監督、『アヒルと鴨』も、『ルート225』も原作の見事に生かした映画化をしてくれていて、未見の『ジャージの2人』もあの長嶋有特有の空気感を再現してくれてるのでは!?という期待がちょっとかかって、観てみたくなっちゃいました。
監督、『サクリファイス』も映画化して~。てか、『砂漠』とかも観てみたい!
あと、斉藤和義の音楽が抜群に素晴らしい。こういう作品って、劇中音楽が微妙だと全てが台無しなんですが、「俺の孤独が~」って旋律がいつまでも頭に残り、かなり良かったのではないでしょうか。
斉藤氏は伊坂幸太郎のコラボが多いですよね。以前、斉藤氏のCDの特典に伊坂氏の小説「アイネクライネ」がついたりしてましたし。Wikipedia先生を調べたところ、どうやら伊坂氏が専業作家になる決心をつけたきっかけが斉藤氏の曲だったらしい。ふむふむ。
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コメント
こんにちは♪
映画の感想、お待ちしておりました。
小説を読んでいても、しっかり楽しめる、というか、
映画化でプラスされた要素が、小説を巧く補強してみせてくれた感じで、
1つ1つのエピソードを心底楽しんで観れた作品でした。
伊坂ファンの娘と、伊坂の文章がどうも合わないので読みにくい、という息子、
それぞれと一緒に観たのですが、
娘はわたしと同じような感想、息子は単純に[面白い!」と。
ちなみに息子は、カラオケで冗談半分で探したら、
「ちゃんと『逆鱗』の『フィッシュストーリー』があった」と妙に大喜び。
たった1回しか映画を観てないのに、ちゃんと歌えたと大満足でした(大笑)
伊坂作品の映像化が続いていますが、舞台化された『死神の精度』が
NHK BS2で今日の深夜に放送されるので、
是非録画して、香川照之演じる千葉を観てみようと思っています。
ANDREさんもご覧になれるといいのですが。
投稿: 悠雅 | 2009年12月26日 (土) 08時40分
再度のお邪魔ですみません。
↑のコメントで、『死神の精度』の舞台、今夜放送と書いてるんですけど、
昨夜遅く放送されていて、わたしは予約録画済みだったことに今気づきました。
録画されてたらいいんですけど…
投稿: 悠雅 | 2009年12月26日 (土) 15時28分
>悠雅さん
コメントどうもありがとうございます。
小説をうまく膨らませてくれていて
1つ1つのエピソードがそれぞれに
楽しめる仕上がりだったのが嬉しい映画化でしたね~。
なんと逆鱗がカラオケに入ってるんですか!
今度カラオケに行く機会があったら
自分も探してみようかと思います。
間奏部分の無音もちゃんと再現されてるんでしょうかねぇ。
カラオケで1分の無音って
曲を知らない人にはかなりの衝撃になりそうです。
「死神の精度」、
昨日、まさに記事を書き終えた頃くらいの
放送だったんですね。
完全にチェックしそびれてました・・・。
香川さんの千葉はかなり期待できそうですねぇ。
NHKの舞台公演は結構
ハイビジョンや地上波で再放送してくれる率が高いので、
次回の放送に期待します。
投稿: ANDRE | 2009年12月27日 (日) 00時48分
伊坂作品の映画版、個人的には
◎ 「アヒル~」
○ なし
△ 「ラッシュライフ」
× 「陽気な~」「死神の~」
未見 「フィッシュ~」「重力~」
というカンジです。「ラッシュライフ」は雰囲気は完璧だったんだけど、あの原作の見事な物語構成がカケラも再現されてなかったことが残念でした。「陽気」に至っては雰囲気も構成も何もかもダメだった……。
中村監督は、原作の良い部分をきちんと抽出して映画に合った演出をしてくれる良い監督さんだと思います。「ジェネラル・ルージュの凱旋」も、原作の鼻につく部分(主に台詞回しとか地の文とかだけど)をすっきり落としていて映画的に良かったし。
「ジャージ」、原作は未読なんですが、他の長島作品の雰囲気から推察するに、映画は多分良くできてると思う。多少コミカルさ、泥臭さが増してるかなぁ。『空気』重視な映画な気がしたので、夏に観るのをオススメします。
投稿: verde | 2009年12月28日 (月) 00時18分
ちなみに、中村監督は来年早々に「ゴールデンスランバー」が公開されるですよ! あれは特に映画向きな作品なので、楽しみ。
でも中村監督は堺雅人が好きすぎだと思う(笑)
投稿: verde | 2009年12月28日 (月) 00時21分
>verdeさん
コメントどうもありがとうございます♪
伊坂作品の映画、
「死神」と「陽気」は地雷っぽさを強く感じてしまい
気になりつつもまだ観れてません。
「ラッシュライフ」は新宿まで観に行こうかとも
思ったのですが、オムニバス形式に抵抗を感じてしまい、
そちらも未見・・・。
「重力ピエロ」はちょっと気になっているので、
そのうちDVDで観て見ようかなと。
中村監督、
脚本を書いた「仄暗い水の底から」は
原作のほうが圧倒的に怖いと感じたんですが、
自らメガホンをとっている作品はなかなか良いですね。
「ジャージ」、かなり気になってます。
『ゴールデンスランバー』、
文庫派な自分はとにかく早く文庫化してくれ!
と願う作品第1位です。
映画化に合わせて文庫化してくれないかなぁと思いつつ、
単行本から逆算すると、来年の秋以降の文庫化かと
思われるため、DVD待ちかなぁと思ってます。
あ、verdeさん、
「ゴールデンスランバー」は
色々な意味で見逃せない作品なんですね!!
そういえば、今日書店で
堺雅人のエッセイ集が出てるのを発見して
立ち読みしたんですが、
なかなか面白かったです。
釈迦に説法なコメントですが・・・
投稿: ANDRE | 2009年12月28日 (月) 01時10分
ANDREさん、今頃わざわざ何でココへ?とお思いになるであろうところにお邪魔してすみません。
本日は、わがブログにコメントありがとうございました。
さっき、映画関連情報をチェックしていたら、
『わたしを離さないで』の映画化で、10年ぶりにカズオ・イシグロが来日、
インタビューに答えている記事があったんです。
そこで、「最近観た日本映画で面白かったのは『フィッシュストーリー』」と言っているのを読んで、
何だか嬉しくなって、この嬉しさを分かち合えるのはANDREさんだ~、と思ってやってきてしまいました。
何だか、嬉しくありません?カズオ・イシグロがこの映画を観たの?一番面白かったの?って思うだけで、「やった!」とか思っちゃう(何で…)
そうそう、『わたしを離さないで』も『日の名残り』も読んだ伊坂ファンの娘にも知らせてやろう・・・
って、わたし、何をそんなに興奮してるのやら・・・
投稿: 悠雅 | 2011年1月24日 (月) 21時16分
>悠雅さん
カズオ・イシグロが現在来日中なのは知っていて、
(どうやら相撲中継に観戦されているところが映っていたらしいとの
情報も伺っています。)
そろそろインタビューなどが出始める頃かなとは思っていたのですが、
すでに記事が出ているんですね!
そしてそして、
「フィッシュ・ストーリー」が一番面白かったと言ってるんですか!?
カズオ・イシグロと伊坂幸太郎はなかなか
つながらないと思っていましたが、
これはとっても嬉しいニュースで、
なんだかとてもテンションが上がりますね~。
他の伊坂×中村映画もご覧になられているのかとか
色々と気になってしまいます。
イシグロ氏、「夜想曲」で結構エンタメ性の高いものも
好きなのかなという感じは受けていましたが、
そうかぁ、「フィッシュ・ストーリー」かぁ。
(感慨深くなってしまって、レスのはずが独り言っぽく
なってしまい申し訳ありません)
教えていただかなければ確実に見落としていたと思いますので、
コメントどうもありがとうございました!!
投稿: ANDRE | 2011年1月25日 (火) 01時13分