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2009年12月 9日 (水)

「拳闘士の休息」 トム・ジョーンズ

拳闘士の休息 (河出文庫 シ 7-1)

拳闘士の休息
(the pugilist at rest)

トム・ジョーンズ
(Thom Jones)

河出文庫 2009.10.
(original 1993)

全く予備知識なしになんとなく面白そうだと思って手に取った1冊。他の翻訳作品もエッセイも面白い岸本佐知子訳だというのが最大の決め手。

アメリカの作家による短編集で、作者自らの経歴がベースになっている作品が多く、ベトナム戦争での経験や、ボクサー、そして、癲癇発作とそれによる不安定な精神状態などが共通して多くの作品に登場します。

作者自身が何度も死の瀬戸際を経験しているからか、肉体的にも精神的にもどんなに過酷な状況にあっても、はいつくばって生きていくような姿が多く描かれていて、彼らの声がとても力強く胸に響いてくるような短編でした。

特に、作者の経験が色濃く反映されていると思われる表題作と女性癌患者を描いた「わたしは生きたい!」はすさまじい声の力を感じる作品だったと思います。「わたし~」の最後なんか、とんでもないインパクト。

正直言うと、自分は、テレビの格闘技中継なんかあまりに痛そうで5分と見ることができないし、戦争映画なんかも血が流れるような作品はたとえ名作と謳われようとよほどのことがない限り見る気にはなれいような人間です。基本的に痛い映像が苦手。

で、この短編集、作者の体験をベースにしいてることもあって、上述のような場面が非常に生々しく描かれていて、自分には結構読むのが辛い1冊でした。しかもそうした描写がやたらめったらと上手いんですよ・・・。

そんなこともあって、全体的にはあまり楽しめなかったのも事実で、実は途中まで読んで飛ばしちゃった作品もあったります。

平和ボケ万歳な自分にはこの作者の抱えているものはあまりに重過ぎて受け止め切れなかったです。

ただ、そんな自分でも完全に心を奪われてしまったのが表題作。戦争という不条理がいつまでも続く様子がとても怖い。

ところで、戦争体験を書いていることもあって、20世紀中盤ころの作品のような気分でいたんですが、93年の小説なんですよね。作中に出てくる固有名詞が普通によく聞くものだったりして、ベトナム戦争とその後の人生が、普通に現在進行形で続いてるんだということを改めて感じさせてくれる1冊でもありました。

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