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2010年1月11日 (月)

「泰平ヨンの航星日記」 スタニスワフ・レム

泰平ヨンの航星日記〔改訳版〕 (ハヤカワ文庫 SF レ 1-11) (ハヤカワ文庫SF)

泰平ヨンの航星日記 [改訳版]
(dzienniki gwiazdowe)

スタニスワフ・レム
(Stanislaw Lem)

ハヤカワ文庫SF 2009.9.
(original 1957 etc.)

以前『宇宙飛行士ピルクス物語』が結構面白く、いつもお世話になっている『P&M_Blog』のpiaaさんのオススメということもあり、昨年改訳版が出たこちらの作品も結構期待して読んでみました。

泰平ヨンなる男が宇宙を旅して出会った様々なできごとを記した航星日記という形式の連作短編集。

冒頭にある序文やらが、いきなり小説のための序文ではなくて、小説内の「航星日記」のための序文になっていたりと、メタ文学的な構成になっていて、作品全体もかなりユーモアに溢れていて、ここまで笑えるとは思っていなかったので、期待以上に楽しめる1冊でした。

さて、「泰平」って何!?と思い、オリジナルではどのようになっているのかを調べてみたところ、ポーランド語で、Ijon Tichyとなっていて、Tichyってところが「泰平」になると思うんですが、ネットでポーランド⇒英語辞書で調べても、訳語無しになるんですよね。英語版はそのままこの名前を使ってるみたいだし、「泰平」は一体どこからきたんですかねぇ。

なんてことを考えつつ、印象に残ったエピソードをいくつか。

第7回の旅

いきなり第1話目が「第七回」!失われた日記の存在があるというのを感じさせて、続編出版に期待がかかりますね。

さて、このお話、「ドラえもん」でも名作として知られている「ドラえもんだらけ」と似た内容でしたね。時間移動で大量の自分たちとああだこうだ大騒ぎする物語。いきなりの激しいコメディっぷりにこれはもしやかなり楽しい本なのではないかとテンションが上がってしまう一話でした。

 

第8回の旅

人類って・・・。ものすごい脱力感を味わえます。

 

第13回の旅

一番好きだったのはこれですかねぇ。水の中で生活する惑星に滞在することになり、その滑稽かつ風刺のきいた様子がかなりお気に入り。

 

第14回の旅

なんてたってオチが最高です。

 

第20回の旅

歴史作っちゃったよ・・・。やりたい放題な感じが最高です。ここまでくると作者の想像力の豊かさにただただ圧倒されるばかりですよ。

 

第21回の旅

このあたりから急に話が深くなって読書スピードがかなり低下。

 

第25回の旅

ジャガイモの話が興味深い。

 

以上、一部、一言すぎるメモ的な感想もありますが、全体的に前半はサクサクと笑いながら楽しく読み進んで、後半はじっくりと味わいながら楽しむという感じでした。

 

この本、読んでいて思い出したのが藤子F不二雄の『モジャ公』。特に第13回、14回の旅あたりで。ブラックユーモアに溢れて、様々な星を訪れては、地球人の観点からすれば不条理な価値観を持った異星人達に遭遇し、あわやというところで慌てて脱出という基本パターンがよく似ています。『モジャ公』は特に後半の子供向けとは思えないブラックさがとても秀逸で藤子F作品の中でも1,2位を争うくらいに好きな作品なんですよね~。上述のように「ドラえもんだらけ」を彷彿とさせる話もありましたし、もしかしたら藤子F氏はこの作品のファンだったのか!?とか勝手に思ってみたり。

ところで、この泰平ヨンはシリーズ化されていて、『戦場でワルツを』のイスラエル人監督アリ・フォルマンによって『未来学会議』という作品が映画化されることが決定しているみたいですが、日本公開はあるんですかねぇ。

 

* *

参考過去レビュー

「宇宙飛行士ピルクス物語」 スタニスワフ・レム

こちらはもうちょっと正統派なSF宇宙飛行士物語といった感じ。

 

「銀河ヒッチハイクガイド」 ダグラス・アダムス

ただひたすら脱力感に襲われる英国コメディ宇宙譚。

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コメント

私は「第20回の旅」が好きでして。過去に飛ばした部下たちが歴史上の人物になっちゃっているというアレですね。
全体に改訳になって旧訳のドタバタ感が薄れた気はしますがそれでも十分面白いです。
「第14回の旅」は後の「現場検証」という作品に直接繋がっています。このエンテロピア(エンチア)という星からクレームが来てもう一度訪ねる事になるのですが…このあたりも出してくれるといいですね。

投稿: piaa | 2010年1月12日 (火) 22時58分

>piaaさん

コメントどうもありがとうございます!

piaaさんのブログを読んでいなければ、
恐らく手に取らなかったと思いますので、
オススメどうもありがとうございました。
とても面白かったです。

第20回の旅、
レムの想像力に圧倒されっぱなしでした。
自分はとりわけダヴィンチが結構ツボでした。

旧訳はもっとドタバタした感じだったんですね。
機会があったら図書館かどこかで探して
ちょっと見てみようと思います。

14回の旅に続編があるんですか。
このシリーズ、他の作品も気になるので、
是非続けて出していただきたいです。
映画が公開されたらそのタイミングで
一気に復刊されたりしないですかねぇ。

投稿: ANDRE | 2010年1月13日 (水) 01時21分

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