「グアテマラ伝説集」 アストゥリアス
グアテマラ伝説集 M.A.アストゥリアス 岩波文庫 2009.12. |
グアテマラのノーベル賞作家アストゥリアスの作品。昨年コルタサルの短編が面白かったので、南米つながりで気になり読んでみました。
古代マヤの伝説をモチーフにした作品を収録した短編集なんですが、全体の構成がちょっと面白く、導入的な作品の後に伝説集が続き、最後は戯曲で終わるという内容でした。
もうちょっと古代マヤの世界観で書かれた伝説集を期待してたんですが(「ギリシア神話」真マヤ版みたいな)、そんな簡単な書物ではなくて、マヤの神話をモチーフにして、西洋人たちが南米を支配した後のグアテマラを舞台に語られる内容で、THEマジック・リアリズム的な感じの趣の強い作品でした。
一番読みやすかったのは「グアテマラ」と題された一番最初の作品。これは、叙情性豊かにグアテマラの風土を語る内容で、上手い具合に作品全体の導入の役割を果たしていましたね。
その後、今度は「伝説集」の導入的な話が入って、いよいよ伝説集本編がはじまるんですが、なんか、もう自分には正直この世界観は受け止め切れませんでした。もともとのマヤのモチーフをちゃんと分かってないから理解しづらいというのもあるんですが、自然と人間の境目が非常にあやふやな感じで語られるものだから、なんだかイメージの洪水にクラクラしてしまって、最終的に何が何やら良く分からないまま終わりを迎えてしまうという感じで・・・。
そんな中、お気に入りは「刺青女」と「大帽子の男」ですかねぇ。特に後者は何がどうって言いにくいんだけど、かなり好き。
最後の戯曲は読みながら結構疲れちゃいました。なんだかんだで「クワッククワック」ばかりが記憶に残ってしまって・・・。なんか難しいよ・・・。
南米文学の世界は読みやすいものに気をよくしてると、とんでもない落とし穴にずぼっとはまってしまう感じで、奥深いのは分かるんだけど、徐々に攻めていかないとぽつんと置いていかれてしまいそうな感じが。ま、そんなことは大分前に『ペドロパロモ』を読んだときに既に気づいていましたが。
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コメント
わあ偶然だ、私も先週衝動買いして、最後の戯曲を読んでいる処です。
訳が分からないのがラ米文学の醍醐味かしらね、
と思って流し読みしてます。
北上すればするほど(※北限はメキシコね)、
奇妙奇天烈になる気がする…いやコロンビアも相当か。
どうしてこんなにハマり易いのかしら?(笑)
投稿: 中村眞希 | 2010年1月27日 (水) 22時05分
>中村眞希さん
コメントどうもありがとうございます。
イスパニア語関係の皆さんには
やはり注目度が高い1冊なのですね。
西語できる知人の方々皆さん読んでいらっしゃいます。
ギリシア神話みたいな伝説集を期待していたら
見事に物凄い方向に裏切られてしまいましたね~。
最後の戯曲なんてあまりの分からなさ具合に、
クワッククワックばかりが頭に鳴り響く感じで・・・。
やはり熱帯の国々はクラクラ~っと
どこか遠い世界へトリップしてしまうんですかねぇ。
投稿: ANDRE | 2010年1月30日 (土) 01時37分