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2010年1月13日 (水)

映画「愛を読むひと」

愛を読むひと (完全無修正版) 〔初回限定:美麗スリーブケース付〕 [DVD]

the reader

アメリカ ドイツ

2008

09年6月公開

DVD鑑賞

ベルンハルト・シュリンクのベストセラー『朗読者』を、『めぐりあう時間たち』や『リトルダンサー』のスティーヴン・ダルドリーが映画化。映画化されるって知ったときは、どうせがっかりするんだろうなぁ、という気持ちのほうが強かったのですが、監督がスティーヴン・ダルドリーとあっては一気に期待が高まるものです。

といいつつ、DVD鑑賞なんですが・・・。

戦後間もないベルリン。15歳の少年マイケル(ダフィット・クロス)は体調を崩し倒れているところを年上の女性ハンナ(ケイト・ウィンスレット)によって助けられる。やがて、体調が回復したマイケルはハンナのアパートを訪ね、2人は関係を持つようになる。ハンナのもとに通い始めたマイケルは、やがて、彼女の願いで様々な小説を朗読して聞かせるようになる。そんなある日、ハンナは突然アパートを去ってしまう・・・。

数年後、大学生になったマイケルは思いがけない場所でハンナと再会するのだが・・・

とても丁寧に、そつなく映画化しているな、というのが一番の印象。ただ、ところどころ気になる解釈や演出が加わっていたのも事実。原作モノはこのあたりをどこまで許容できるかで評価が大きく変わりますが、おおむね満足できる作品でした。(なんだ、この上から目線なコメントは!?)

時間が動く物語の描き方は『めぐりあう時間たち』で神業的な上手さを見せてくれた監督なだけあってとても安心感がありましたね~。でも、前2作よりかは、おとなしくまとまちゃったかなぁという気がしないでもないです。

この映画、ハンナの抱える秘密が原作よりもあからさまに描かれていて、マイケルがなぜすぐにそれに気がつかないのかがとっても不自然な場面(レストランとか)もあったのがちょっと残念。原作だとホテルの書き置きとかがとても印象的な場面だったのにそこもカットされちゃってたしなぁ。

あと、次第に老けゆくケイト・ウインスレットは見事だったんですけど(ドイツ語風英語をしゃべったところに女優魂を感じたし)、こちらも一貫してマイケル視点のみで描かれた原作とは違って、徐々に老けゆく獄中の彼女を描いてしまったために、ラストで年老いた彼女に再会する場面でマイケルが感じた衝撃がちょっと薄らいでしまったように思いました。

まぁ、でもテープを聞いた瞬間の彼女の姿は本当にうまく描かれていたので、良かった部分もあるんですが。

ついでに不満な解釈をもう1つ言いますと、ラスト、娘に語ってきかせるのって、かなり微妙じゃないですか??原作は物語として自分でタイプしはじめるという終わらせ方だったはず。

登場する時間は短めだったけど、現代のミヒャエルを演じたレイフ・ファインズはしっかりと存在感を見せてくれてましたね~。『シンドラーのリスト』を思い出すとちょっと複雑だけど。

物語のテーマや問題の複雑はやはり小説のほうが深く考えさせてくれたように思うのですが、重要なエッセンスの部分は過不足なく描かれていて、キャスティングもとても良く、演技だけで小説で描かれる様々な感情の動きを見事に表わしていたし、暗く重い作品になりかねないところを、明るめのライティングとともに美しくまとめていたのはなかなか良かったと思います。

原作と比較するとどうしても辛口になってしまうんですが、映画は映画でとても面白かったと思います。でも映画を観たら是非原作もどうぞ!とオススメしたい。

ところで、ミヒャエル少年を演じたダフィット君、制作のニュースを聞いたときからずーーっと楽しみにしているのに未公開だしDVDも出ていない『クラバート』の映画版(原作が子供のころの愛読書)に主演しているんですね~。早く観たいよー。

* * *

参考過去レビュー

ベルンハルト・シュリンク 『朗読者』

何が正しいのか、自分だったらどうしたのか、彼女はなぜそこまで隠そうとしたのか、様々なことを考えさせられ、答えが出せずに複雑な気持ちになってしまいますが、一貫してミヒャエル視点で描かれる原作のほうが深みがある作品になってると思います。

あと、小説ならではで、「主人公の回想録」=「記憶が曖昧な部分は描かれない」のが効果的に使われている作品で、映画だと、このあたりを上手く再現できないので、ちょっともったいないなぁ、ってのも感じられたかなぁ。

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コメント

私はこの映画のダフィット君の演技がものすごく好きですねー。
少年期の初恋の一生懸命さ、純粋さをうまく演じていたように思います。

原作の「深み」はないけれど、ある一組の男女の話、もしくは、ある男の初恋の話、として捉えると結構好きな映画でした。
アメリカはこうゆう演出が好きなのかな。ベンジャミン・バトンしかり。

投稿: しゅり | 2010年1月17日 (日) 20時42分

>しゅりさん

コメントどうもありがとうございます!

ダフィット君は良かったですね~。
少年期の純粋さだけでなく、
大学生になってからも法廷に通う複雑な気持ちを
絶妙に表現していたように思います。
彼が主演の『クラバート』がますます観たくなってしまいました。

自分も、原作の深さはないけれど、
映画としてはなかなか楽しめた作品でしたね。
ハリウッド作品はなんでもかんでも
恋愛要素を重視してますよね。
お国柄なんでしょうかねぇ。

投稿: ANDRE | 2010年1月18日 (月) 00時10分

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» 愛を読むひと [LOVE Cinemas 調布]
ベルンハルト・シュリンクのベストセラー『朗読者』を映画化。監督は『リトル・ダンサー』のスチーブン・ダルドリー。主演はこの作品でアカデミー賞主演女優賞を獲得したケイト・ウィンスレット。そして共演に『ハリーポッター』や『ある公爵夫人の生涯』のレイフ・ファインズと実際にティーンエイジャーのデヴィッド・クロスが出演。オスカー女優となったケイトの作品をようやく観ることが出来ます。... [続きを読む]

受信: 2010年1月13日 (水) 01時47分

» 愛を読むひと [★YUKAの気ままな有閑日記★]
第81回アカデミー賞で、ケイト・ウィンスレットが最優秀主演女優賞を獲得した作品。原作『朗読者』(ベルンハルト・シュリンク著)も先日読了し、映画を楽しみにしていました。 というのも、原作では今一つ内容を感じ切れず、、、「映像で観た方が心に迫るかもしれないなぁ〜」と思っていたからです―【story】1958年。大戦後のドイツ。15才のマイケル(デヴィッド・クロス)は、36才のハンナ(ケイト・ウィンスレット)と激しい恋に落ちる。ハンナはマイケルに本の朗読を頼み、いつしかそれが二人の愛の儀式となる。しかし突... [続きを読む]

受信: 2010年1月28日 (木) 07時45分

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