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2010年2月17日 (水)

映画「ビハインド・ザ・サン」

ビハインド・ザ・サン [DVD]

behind the sun

ブラジル

2001

04年11月公開

DVD鑑賞

先日テレビでブラジルが特集されているのを見ていたら、ふと「セントラル・ステーション」が観たくなったのですが、どうせなら同じ監督によるまだ観ていない映画を観ようと考え直しレンタルしてきました。

舞台は1910年のブラジル北部の荒野。プレヴィス家とフェレイラ家は長年にわたり土地の権利を巡り争い、一族の誰かが一人殺されたら、その報復として相手の一族の者を一人殺すということ繰り返していた。

あるとき、プレヴェイス家の長男が殺されたため、20歳になる次男のトニーニョはフェレイラ家へと向かい兄の仇を討つ。しかし、それは次の満月に、フェレイラ家の誰かによってトニーニョの命が狙われることを意味していた。

無益な殺しの連鎖が続く中、弟を連れてサーカスを見に出かけたトニーニョはそこで芸を見せていた娘に一目ぼれしてしまうのだが・・・

原作はアルバニアの作家イスマイル・カダレによる「砕かれた四月」で、東欧からブラジルに舞台を置き換えて映画化したとのこと。この映画の面白さから考えると、原作はもっと面白いに違いないことが予想されます。うーん、原作が読みたいぞ。白水社かぁ。Uブックスで出してくれないかなぁ。

これはなかなか見ごたえのある作品でしたね~。

主役は次男ではなく、末っ子の三男のほうですかね。愛くるしい子役なのですが、最後の最後まで、美味しいところを全て持って行ってしまう役どころを非常に好演してました。

無益な復讐を繰り返す一家の息子たちがそれに疑問を感じ、自由な世界を夢見る姿を、静かなまなざしで描くんですが、サーカスの娘に恋をする次男も、字も読めないのに1冊の本の中に無限の世界を描き出す三男も、幸せな未来をつかんでほしいと祈らりながら見ていたところに、そうきたか、と唸ってしまうラストが待っていて何とも言えない余韻残りました。

さとうきびを絞る歯車を動かすために同じところを何度もぐるぐると歩かされている牛たちの姿がそのまま復讐を繰り返す一家の運命を象徴しているんですが、そんな牛たちでさえも自らの意思で動くのを目の当たりにした兄弟たちの行く末は必見です。

後、この作品、まず荒涼とした大地の映像に目を奪われるのですが、大地の色、血の染みが乾いた色、炎の色など作品全体が一貫して「黄色」系の色映像に統一されているんですよね。それがラスト、別の色にパーっと変化する場面は鳥肌モノ。

この監督は『セントラル・ステーション』も『モーターサイクル・ダイアリーズ』もそうだったけれど、風景の切り取り方が本当に上手い。

あと映像としては、ブランコに乗って空を見上げたり、ロープで回転したりする映像がとても印象的に使われていましたね。黄色い大地の映像が続く中、突然広がる青空は、自由な世界の輝きを見事なまでに感じさせました。遠い空に飛んでいきそうなのに、ロープにつながれていて決して飛び出すことのないブランコはあの兄弟そのものだよなぁと思ってみたり。

ところで、あの次男はどう考えても、一人だけイケメンすぎて、家族だというのが全く感じられなかったですよね・・・。あの父親からあの息子は生まれないだろ!サーカスの娘さんと2人並んだときにやたらめったら美男美女なのは映像としては美しいけど、なんか不自然だったよぅ。

この次男トーニョを演じたロドリゴ・サントロ、『ラブ・アクチュアリー』に出演していたというので、どこに出でったけ?とか思ってDVD引っぱりだして確認したら、OLさんが片思いをする眼鏡のインテリ風デザイナーでしたか!全然気付かなかったよ。てか、ブラジル人だということさえ分かってなかったっすよ。彼女が「ちょっと待って」と言って壁の影で喜びを爆発させるシーンは名場面の多い『ラブ・アクチュアリー』の中でも屈指の名場面ですよね~。

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コメント

こんにちは。
随分前に観て、いい加減な感想しか書いてないですけど、TBさせていただきますね。

わたしは、『ラブ・アクチュアリー』の黒縁めがねの彼だと知ってて観たんですけど
ロンドンにいる姿が当たり前に思っていたので、
ブラジルの強い光の中にいる彼を、不思議に思ってしまいました。
全く違う動機で観た作品で、適当な感想を書いたわりには、
未だにこの作品の印象がとても強く残っています。
再見の機会がないままなんですが、
改めて、しっかり見直したい作品の1つなんです。

投稿: 悠雅 | 2010年2月17日 (水) 17時19分

>悠雅さん

コメントどうもありがとうございます。

悠雅さんもご覧になられていましたか!

周りでもあまり知っている人もおらず、
割とマイナーな作品だと思うのですが、
これがなかなか心に残る良い作品でしたね。
この監督は『パリ、ジュテーム』の作品も良かったし、
今のところハズレなしです。

ラブ・アクチュアリーに眼鏡のデザイナーがいることは
ちゃんと覚えていたのに、
それが彼だとは全然気づかず、
見直してみてかなりビックリしてしまいました。

投稿: ANDRE | 2010年2月19日 (金) 01時19分

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