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2010年2月10日 (水)

「アメリカン・スクール」 小島信夫

アメリカン・スクール (新潮文庫)

アメリカン・スクール

小島信夫

新潮文庫 2007.12.
(original 1967)

芥川賞受賞(1954年)の表題作を含む8編を収録した短編集。

これは面白いという評判をチラホラと耳にするので読んでみました。解説が保坂和志氏だというのもちょっとポイント高し。

うーん、この回の芥川賞は庄野潤三の『プールサイド小景』とのW受賞なんですが、自分は『プールサイド小景』のほうが好きかなぁ。てか調べたらこの頃って選考委員に佐藤春夫や川端康成が入ってるんですね。熱い。

全体的に戦争を題材にとっている作品も多くて、そのあたりと関連して敗北感と恥というのが強く描かれた短編集で、読んでいてちょっとどんよりとしたな気分になってしまうんですよねぇ。滑稽なまでの描写も多いんだけど、笑うに笑えない。

収録作品で一番面白かったのは一番最初の「汽車の中」かなぁ。てか、網棚の上に乗るって、今の日本では考えられないですよね。

他に面白かったのは「微笑」。これはちょっと上述の『プールサイド小景』なんかとも似ていて、プールサイドに見られるおだやかな風景の裏側にある真実を描き出す作品。これは主人公の抱える複雑な悩みがそのままチグハグな写真とつながってくるのが上手い。

「アメリカンスクール」は作品としては確かによくできていると思うんだけれど、ここで描くアメリカに対する劣等感というものは、現代の読者にはなかなか伝わりづらいところがあるんじゃないかと思います。戦後すぐの英語教員って、それだけで色々と複雑な事情を抱えてそうですよね。なんて、過去のできごとな気分で読みつつ、ちょっと他人ゴトではないような気がする場面もチラホラとあったんですが・・・。

全体的に上手くつかみきれないような印象の方が強く残ってしまったので、また機会があったらゆっくりと読み直してみようかと思います。

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