「あめりか物語」 永井荷風
あめりか物語 永井荷風 岩波文庫 1952.11. (2002.11.改) original 1908) |
以前読んだ「墨東奇譚」がなかなか良かったので、何か他の作品も読もうと思い、荷風2冊目です。
永井荷風はちょうど100年ほど前の20世紀初頭にアメリカとフランスに数年に亘って滞在しているんですが、そのときに書かれた短編集です。姉妹編として「ふらんす物語」もあるのですが、こちらはアメリカを舞台にした作品を集めています。
面白いのは、彼が残したものが旅行記ではなくて、自分が訪れた土地を舞台にした短編小説であったということ。粋なことをしてくれます。
100年前のアメリカの姿を垣間見ることのできるのはとても面白くて、人種差別のことや、日米の価値観の違いなどにもふれていて、なかなか興味深く読むことができましたね。彼はきっとこの国をそこまで好きではなったのではないかと思う。まぁ、旅の真の目的はフランス滞在のほうだったようですし。
あと、「墨東~」を読んだときに、荷風の情景描写の美しさにハマってしまったので、彼が当時のアメリカをどのように描くのかということをとても楽しみにしていたのですが、残念ながら、思ったほどではなかったかなぁ・・・。後半になると詩的な文章も多くなるんだけど、そこまでハマれず。「墨東~」よりも30年ほど前の若き日の作品なので、仕方ないのかもしれませんが。悪くはないんだけど、洗練されてないというか。(←何様なんだか・・・)
物足りなかったといえば、シカゴやニューヨークなどの風景描写は物足りなかったとはいえやはり面白いし、文化や社会の描写も面白いのに、肝心のストーリーが・・・。(『墨東~』も物語そのものは退屈だったんだけど)
アメリカに渡ったは良いものの、結構苦労を強いられた日本人が多かったようで、そのあたりを描くのは良いんですが、いちいち割とどうでもいい男女関係の物語ばかりで・・・。『長髪』のオチなんか、読み終えるやものすごい脱力感が。
20作品以上と結構な数が収録されてるのに、もうちょっと話の種類にバリエーションが欲しかったですよ、荷風さん。
てか、アメリカに行っても日本人同士が集まって、同じく渡米している他の日本人たちの噂話に花を咲かせているパターンが多かったんですが、今も昔も、スキャンダラスな恋というのは人気の話題だったんですねぇ。てか、渡米している日本人が少ないってのもあるんだろうけど、やたらめったら世間が狭い。
そうそうブロードウェーのミュージカルも歴史が100年ちょいなので、この作品にもしっかりと登場してましたね~。ミュージカル好きとしては結構嬉しい描写でした。
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コメント
あめりか物語
で検索して辿り着きました!
いいとこも悪いとこもあるようですが読んでみたくなりました(^^)!
投稿: あみ | 2011年10月22日 (土) 01時23分
>あみさん
コメントどうもありがとうございます。
悪いことも書きましたが面白い本だと思いますので
是非お手に取ってみてください!
投稿: ANDRE | 2011年10月24日 (月) 00時06分