「ラギッド・ガール」 飛浩隆
ラギッド・ガール 飛浩隆 ハヤカワ文庫 2010.2. |
廃園の天使シリーズ第2作目。第1作目がなかなか面白かったので楽しみにしていたのですが、長編だった前作に対して、こちらは短編形式で第1作目の前日譚を描くという1冊。
それぞれの短編のクオリティは非常に高くて濃密です。
収録されているのは5作品。
仮想リゾート<数値海岸>を舞台にした『夏の硝視体』
<数値海岸>誕生の背景に迫る現実世界の物語、『ラギッド・ガール』&『クローゼット』
リゾートにゲストが来なくなる大途絶の背景を描く『魔術師』
そして、事件の中心物であるランゴーニの過去を描く『蜘蛛の王』
5作品の中では、現実世界が舞台となる2作品がべらぼうに面白かったです。この2作品だけで言えば、前作をはるかに越えて面白かったように思います。仮想現実の世界よりも現実世界のほうが自分としてはとっつきやすかったてのもあるんだろうけど。
想像力の限界なのか、区界が舞台の作品は脳内処理がなかなか追いつかなくて、どっぷりと味わいきれないんですよねぇ。あと、この本でいえば、現実世界の話がミステリ調だったのに対して、区界の話はアクション寄りだったってのもある。
こういう技術って、遠い将来不可能ではなさそうな感じがするだけに妙なリアルさを感じてしまって、読みながら自分の脳がムズムズしちゃってました。てか、女性たちがみんな怖いよ。カスキなんか『ラギッド・ガール』の冒頭と『クローゼット』を読んでからでは全く印象が変わりますからね。一番好きだったのは『クローゼット』かなぁ。
あと、官能的かつ残虐な描写は相変わらず上手くて、こういう脳をえぐられるような怖さを味わえる作品ってのはなかなか出会えないと思う。
こういうのってやっぱり普及し始めたらものすごい勢いで普及するんだろうか。自分はやっぱり現実世界は現実世界として受け止めたい。現実世界を多重化するってのは『電脳コイル』もそんな話でしたね。
あと、何年もプレイしてない『どうぶつの森』の動物さん達のことを思い出してちょっと切なくなるのは前作を読んだときと一緒です。でも雑草だらけになってるであろう村を見るのが怖くて再びプレイする気にはなかなかなれず。大途絶になってしまいごめんなさい。
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