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2010年5月 3日 (月)

「麗しのオルタンス」 ジャック・ルーボー

麗しのオルタンス (創元推理文庫)

麗しのオルタンス
(la belle Hortense)

ジャック・ルーボー
(Jacques Roubaud )

創元推理文庫 2009.1.
(original 1990)

現在、新宿の紀伊国屋書店にて大好評開催中の世界文学ワールドカップの会場にてウリポの枠で選出されていた1冊。なにやらとても面白そうな雰囲気を感じその場の勢いだけで買ってしまったんですが、これがまたなかなかに愉快な1冊でした。

舞台は金物屋が夜間に侵入され店内に鍋が散乱する<金物屋の恐怖>事件に揺れるパリの一画。哲学を専攻する麗しき女学生オルタンスは偶然出会った青年モルガンと恋に落ちるのだが…。

事件を担当する警部のブロニャール、事件に首を突っ込む若きジャーナリストのモルナシエ、大学で哲学を教えるオルセル教授、個性豊かな商店の人々、そして高貴な猫アレクサンドルウラディミロヴィッチら様々な人物が入り乱れる中、明らかになっていく事件の真相とは!?

著者が語り手となるキャラクターたちに振り回され、さらにそこに編集者がツッコミを入れたり、はたまた、読者まで登場し、メタ小説的な要素に溢れた作品なんですが、この物語をさらに面白いものにしているのは、もはや<金物屋の恐怖>事件なんてどうでも良いのではないかという勢いでどんどん脱線しつつも必死にミステリ小説の体裁を保とうとする、なんとも愉快なノリ。

読者が勝手に登場しちゃったところなんか、「おいおい!勝手に読者の発言権を盗らないでくれよ!」と普通にツッコミそうになっちゃいましたが、全編とにかくツッコミどころ満載でして、これはもう作者と読者とによるボケとツッコミの熾烈なバトルを繰り広げながら、ゆるく、かつ真剣に展開するミステリを楽しめちゃったもの勝ちという感じでしょうか。

無駄に饒舌で脱線を繰り返すあたり、ニコルソン・ベイカーの「中二階」を思い出してみたり。ベイカーのほうはすさまじい注釈の嵐だったので、ちょいと趣は異なりますが。それでも、この作品も冒頭3章くらいを読んで、作品内の時間経過のあまりの遅さに唖然としてしまうあたりなんか、やっぱり近いテイストだと思います。

どうやら3部作らしいので残りの2作も是非邦訳を出してください!!

レイモン・クノーといい、カルヴィーノといい、ウリポ結構好きかも。今後もちょいちょい注目していこっと。

 

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