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2010年5月 3日 (月)

映画「プレシャス」

Precious

precious
based on the novel Push by Sapphire

アメリカ

2009

2010年4月公開

劇場鑑賞

今年のアカデミー賞で話題になっていた作品。作品賞候補の10作品の中で是非とも観たい!と思った3本のうちの1本です。

主人公クレアリース・"プレシャス"・ジョーンズは実の父親との間の2人目の子供を妊娠し、学校を退学させられ、家では生活保護を当てにし、働かずに1日中TVの前に座っている母から冷たい仕打ちを受けていた。過酷な状況下で、彼女は人付き合いをせず、ただ自分が有名スターになる妄想の世界に逃げる日々を過ごしていた。

そんな折、彼女は「Each One Teach One」というフリースクールに通い始め、そこで出あった教師のレインやクラスの仲間たちと過ごすうちに人生が少しずつ変化し始める・・。

ものすごく良い映画でした!

いや~、これはプレシャス役の女優によっては評価がかなり左右されてしまう作品だとは思うのですが、プレシャスを演じたガボレイ・シディベは、外見や表情や仕草など、プレシャスというキャラクターに見事なリアリティを与えてくれていて、アカデミー賞ノミネートも納得。

プレシャスと言う呼び名が皮肉すぎるくらいに、世の中の考え得る過酷な状況をこれでもかというくらいに背負わされた主人公を描いている映画ですが(後半なんか、さらにそんなことまで!と不幸の押し売りに驚くばかり)、観ていてそれほど重さを感じないのは(十分重いんだけど)、彼女の心の世界に広がる夢を見せてくれるからでしょうね。

時には現実逃避の手段ともなっている彼女の妄想ですが、学校の先生への片思いやスターへのあこがれなど、前向きな夢を持っている限り、この少女はまだ大丈夫だな、という安心感を感じさせるのかもしれません。

この映画はこの妄想映像と過酷な現実とのバランスのとり方が非常に上手くて、原作付の作品ではあるけれど、原作は読んでませんが、映像化の方法としてはかなり成功しているのではないでしょうか。

プレシャスが入院する場面で友人たちがお見舞いにきますが、彼女の人生でこんなに多くの仲間たちに心配され、見守れたのはこれが初めてなのではないかとなんて考えると、思わず目頭が熱くなってしまいました。

学校へ行きたいと自らフリースクールの門をたたき、勇気を出して自己紹介をしたあの瞬間から、彼女の運命は大きく変わり始めるわけですが、彼女が次第に愛を与える人へと成長していく姿もとても印象的で、マフラーをそっとかけてあげる場面もとても良かったです。素晴らしい教師との出会いもあったけれど、やはり自分の将来のために前向きに行動したプレシャス自身が彼女を成長させたんだと思います。

母の心の奥に眠る寂しさをプレシャスが理解するラストも見事でしたが、母を演じたモニークの迫真の演技にもまた釘付けになりましたね~。TVが降ってきたときは本気で恐ろしくて、どうしようかと思いましたけど。

さわやかイケメン看護師がレニー・クラヴィッツだというのもかなりの驚きでしたが、ケアワーカーの女性がどこかで観たことあるけど、この女優さんは一体誰だったけ??なんて思いながら観ていて、途中で、「あ、マライア・キャリーだ!」とピンときた瞬間、思わず声を出しそうになってしまいました。素朴な感じのマライア・キャリー、なかなか良いじゃないですか。彼女の新しい魅力が引き出されたように思います。

で、こんなに歌える感じのキャストなのに、特に主題歌を歌うわけでもないってのがなかなか面白い。でもちょっともったいない。

そうそう、オープニングにプレシャスが書いたつたない文字でタイトルなどが出るんですが、そこに括弧付で正式な文字を挿入してしまうとちょっと興醒めだよなぁと思ったんですよね。手書き文字を使うのであれば、手書き文字だけでいくべきしょう。

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コメント

この作品、とっても観たいんですけど、
近所のシネコンで2週間限定で上映されるらしいので、
あと1ヶ月、粛々と待っていようと思います。
こういう作品が観れる映画館が近くにないので、
たとえ2週間限定、小さなハコでも、上映してくれるシネコンがあることが嬉しいです。
また観たらお邪魔に伺いますね。

投稿: 悠雅 | 2010年5月 6日 (木) 19時18分

>悠雅さん

こちらにもどうもありがとうございます。

お近くのシネコンで上映されるのであれば、
是非ご覧になられてください!
期待を裏切らない作品で本当にオススメです!

ご感想をうかがうのを楽しみにしてます。

投稿: ANDRE | 2010年5月 7日 (金) 00時18分

こんばんは。またお邪魔しました。
やっと、田舎にもこの映画がやってきてくれました。
待ってるのって、長いです。。。

それにしても、確かに噂に違わない、いろんな意味で凄い作品でした。
最初はいったいどういう母親なんだ、という嫌悪感が一瞬掻き消される
終盤のモニークの、淀みと偽りのない台詞のリアルさ・・・
彼女だって、いちばんに愛されたい、娘を心から愛して育てたいと思っていた普通の女性。
でも、ほかにも道はあるんだ、これが全てではない、ということに気づけなかったことが
最大の不幸の元凶だったのだと思います。
もし、プレシャスが男の子に生まれていたら、この一家の現在はどうだったのだろうとも…

観客動員が見込めないだろうに、この作品を2週間限定ながら上映してくれたシネコンに心から感謝です。

投稿: 悠雅 | 2010年6月 5日 (土) 19時51分

>悠雅さん

この一ヵ月ほど、あまりに忙しすぎてブログ関係が全体的に滞り気味なためお返事が遅くなってしまい申し訳ありません。

無事ご鑑賞することができたようで何よりです。
我が家も都内まで出ていかずとも少し遅れて
良い作品をかけてくれる劇場が近くにあるのですが、
そういう劇場は公開予定のラインナップを見るのが
毎回に楽しみになりますよね。

この映画は鑑賞前から、
多分良い作品なのだろうなとは思っていたのですが、
その期待を全く裏切らない作品でしたね。

最初は嫌悪感でいっぱいになったプレシャスの母でしたが、
終盤であれだけの説得力を持って自分の心をさらけだした
モニークの演技は本当に素晴らしかったです。

プレシャスは母になることで力強さを手に入れますが、
男の子だった場合のことを考えると、
また違った物語が描かれるんでしょうね。

投稿: ANDRE | 2010年6月 8日 (火) 00時33分

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