映画「プレシャス」
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precious based on the novel Push by Sapphire
アメリカ
2009
2010年4月公開
劇場鑑賞 |
今年のアカデミー賞で話題になっていた作品。作品賞候補の10作品の中で是非とも観たい!と思った3本のうちの1本です。
主人公クレアリース・"プレシャス"・ジョーンズは実の父親との間の2人目の子供を妊娠し、学校を退学させられ、家では生活保護を当てにし、働かずに1日中TVの前に座っている母から冷たい仕打ちを受けていた。過酷な状況下で、彼女は人付き合いをせず、ただ自分が有名スターになる妄想の世界に逃げる日々を過ごしていた。
そんな折、彼女は「Each One Teach One」というフリースクールに通い始め、そこで出あった教師のレインやクラスの仲間たちと過ごすうちに人生が少しずつ変化し始める・・。
ものすごく良い映画でした!
いや~、これはプレシャス役の女優によっては評価がかなり左右されてしまう作品だとは思うのですが、プレシャスを演じたガボレイ・シディベは、外見や表情や仕草など、プレシャスというキャラクターに見事なリアリティを与えてくれていて、アカデミー賞ノミネートも納得。
プレシャスと言う呼び名が皮肉すぎるくらいに、世の中の考え得る過酷な状況をこれでもかというくらいに背負わされた主人公を描いている映画ですが(後半なんか、さらにそんなことまで!と不幸の押し売りに驚くばかり)、観ていてそれほど重さを感じないのは(十分重いんだけど)、彼女の心の世界に広がる夢を見せてくれるからでしょうね。
時には現実逃避の手段ともなっている彼女の妄想ですが、学校の先生への片思いやスターへのあこがれなど、前向きな夢を持っている限り、この少女はまだ大丈夫だな、という安心感を感じさせるのかもしれません。
この映画はこの妄想映像と過酷な現実とのバランスのとり方が非常に上手くて、原作付の作品ではあるけれど、原作は読んでませんが、映像化の方法としてはかなり成功しているのではないでしょうか。
プレシャスが入院する場面で友人たちがお見舞いにきますが、彼女の人生でこんなに多くの仲間たちに心配され、見守れたのはこれが初めてなのではないかとなんて考えると、思わず目頭が熱くなってしまいました。
学校へ行きたいと自らフリースクールの門をたたき、勇気を出して自己紹介をしたあの瞬間から、彼女の運命は大きく変わり始めるわけですが、彼女が次第に愛を与える人へと成長していく姿もとても印象的で、マフラーをそっとかけてあげる場面もとても良かったです。素晴らしい教師との出会いもあったけれど、やはり自分の将来のために前向きに行動したプレシャス自身が彼女を成長させたんだと思います。
母の心の奥に眠る寂しさをプレシャスが理解するラストも見事でしたが、母を演じたモニークの迫真の演技にもまた釘付けになりましたね~。TVが降ってきたときは本気で恐ろしくて、どうしようかと思いましたけど。
さわやかイケメン看護師がレニー・クラヴィッツだというのもかなりの驚きでしたが、ケアワーカーの女性がどこかで観たことあるけど、この女優さんは一体誰だったけ??なんて思いながら観ていて、途中で、「あ、マライア・キャリーだ!」とピンときた瞬間、思わず声を出しそうになってしまいました。素朴な感じのマライア・キャリー、なかなか良いじゃないですか。彼女の新しい魅力が引き出されたように思います。
で、こんなに歌える感じのキャストなのに、特に主題歌を歌うわけでもないってのがなかなか面白い。でもちょっともったいない。
そうそう、オープニングにプレシャスが書いたつたない文字でタイトルなどが出るんですが、そこに括弧付で正式な文字を挿入してしまうとちょっと興醒めだよなぁと思ったんですよね。手書き文字を使うのであれば、手書き文字だけでいくべきしょう。
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アカデミー主演女優賞にノミネートされてた百貫デブの女の子のインパクトと、助演女優賞を受賞したモニークがベタ褒めされてたのが印象的な『プレシャス』を観てきました。
★★★★
父からの日常的なレイプによる出産、母による虐待、余りに辛い現実を受け入れられず、妄想の世界に逃げて生きてきた16歳のプレシャス。
「お前は勉強なんてしても無駄!」と言い続けられ、学校には通っているものの教科書は開いたことすら無く、文字を読もうと思ったことは無い…。
これがアメリカの貧困層の現実なのか?(舞台は数十年前です)
プ... [続きを読む]
受信: 2010年5月 3日 (月) 16時31分
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受信: 2010年5月 3日 (月) 17時08分
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1987年のハーレムを舞台に、読み書きが全く出来ない少女プレシャスが人を愛し、愛されることに気付き力強く生きていく様を描いたヒューマンドラマだ。アカデミー賞ではモニークの助演女優賞と脚色賞の2冠を獲得、他にも作品賞、主演女優賞、監督賞、編集賞にノミネートされている。主演は新人のガボレイ・シディベ。監督はデビュー2作目とナルリー・ダニエルズ。... [続きを読む]
受信: 2010年5月 3日 (月) 18時52分
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プレシャス◆プチレビュー◆過酷な現実の中でヒロインに希望を与えるのは教育。母親役モニークが鬼気迫る演技を見せる。 【80点】 16歳の黒人少女プレシャスは妊娠して学校を退学になり、問題を抱えた生徒ばかりが集まるフリースクールに通うようになる。熱意溢れるレイン...... [続きを読む]
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公式サイト。原題:PRECIOUS: BASED ON THE NOVEL PUSH BY SAPPHIRE。リー・ダニエルズ監督、ガボレイ・シディベ、モニーク、ポーラ・パットン、マライア・キャリー、シェリー・シェパード、レニー・クラヴィッツ。1987年のニューヨークのハーレム。家庭内暴力、幼児虐待、近...... [続きを読む]
受信: 2010年5月 4日 (火) 18時50分
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オーバーウェイトで文盲かつ2番目の子供を妊娠しているティーンエイジャーの物語がPrecious based on the novel `Push` by Sapphire(プレシャス)。子供の親はプレシャスの父親ですが映像では登場しません。 代わりに家庭内暴力と暴言でMo`Nique(モニーク)演じる母親が強烈な印象を残しますが、オルタナティブスクールで親身な教師と出会うことで主人公は破滅的な人生から這い上がろうともがきます。
「何ら解決しない映画」との批判もありますが、HIV感染が判明した後... [続きを読む]
受信: 2010年5月 7日 (金) 23時18分
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原題:PRECIOUS: BASED ON THE NOVEL PUSH BY SAPPHIRE
24日から公開となった「プレシャス」。初日に鑑賞しました。
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アメリカの今を伝えている。その現実はプレシャスと同じような状況にある人が多いのだろうと思う。もちろん日本にもこういうケースは多かれ少なかれ... [続きを読む]
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[プレシャス] ブログ村キーワード
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受信: 2010年5月14日 (金) 10時46分
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リベンジに出かけたものの、TOHOシネマズ....... [続きを読む]
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あなたは、愛されるべき特別な存在。 [続きを読む]
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失業し... [続きを読む]
受信: 2010年6月17日 (木) 05時48分
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ブログネタ:昨日一番うれしかったこと
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久しぶりに試写会に招待して頂きました。
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妹と行ってきました。
1987年、ニューヨークのハーレムに暮らす16歳の黒人少女、
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ハーレムを舞台に、過酷な運命を生きる16歳のアフリカ系アメリカ人少女、クレアリースldquo;プレシャスrdquo;ジョーンズの人生を描く人間ドラマ。サンダンス映画祭でグランプリを受賞したほか、各映画賞...... [続きを読む]
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» 『プレシャス』(09) [国内航空券【チケットカフェ】社長のあれこれ]
社会の底辺、人生の底辺、いや、ドン底にもほどがあるだろうと、ガツンドカンとやられる。
とりあえずおおまかなあらすじは↓な感じです。
<あらすじ>
実父によって妊娠を2度させられ、母親(モニーク)からは精神的にも肉体的にも虐待を受ける16歳の少女プレシャス(ガボ... [続きを読む]
受信: 2010年12月 8日 (水) 18時49分
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先日2010年12月5日(日曜日)の事…
当日のブログにも書きましたが、その日は夕方までほとんど何もしていなかったのですが、夕方から近所の家電量販店に出かけまし... [続きを読む]
受信: 2010年12月21日 (火) 23時37分
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内容も体重もヘビーだ
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人は生まれるとき誰しも何かになれる可能性と
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宝物という名の子供
それがこの映画の主人公、16歳の女の... [続きを読む]
受信: 2011年2月 6日 (日) 01時43分
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10-28.プレシャス■原題:Precious■製作年・国:2009年、アメリカ■上映時間:109分■鑑賞日:5月1日、シネマライズ(渋谷)■料金:1,000円スタッフ・キャスト(役名)... [続きを読む]
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あらすじ1987年のニューヨーク、ハーレム。16歳の少女プレシャスのお腹の中には子供がいた・・・。感想アカデミー賞脚色賞『ファット・ガール 愛はサイズを超える』のモニー... [続きを読む]
受信: 2011年4月 3日 (日) 09時16分
コメント
この作品、とっても観たいんですけど、
近所のシネコンで2週間限定で上映されるらしいので、
あと1ヶ月、粛々と待っていようと思います。
こういう作品が観れる映画館が近くにないので、
たとえ2週間限定、小さなハコでも、上映してくれるシネコンがあることが嬉しいです。
また観たらお邪魔に伺いますね。
投稿: 悠雅 | 2010年5月 6日 (木) 19時18分
>悠雅さん
こちらにもどうもありがとうございます。
お近くのシネコンで上映されるのであれば、
是非ご覧になられてください!
期待を裏切らない作品で本当にオススメです!
ご感想をうかがうのを楽しみにしてます。
投稿: ANDRE | 2010年5月 7日 (金) 00時18分
こんばんは。またお邪魔しました。
やっと、田舎にもこの映画がやってきてくれました。
待ってるのって、長いです。。。
それにしても、確かに噂に違わない、いろんな意味で凄い作品でした。
最初はいったいどういう母親なんだ、という嫌悪感が一瞬掻き消される
終盤のモニークの、淀みと偽りのない台詞のリアルさ・・・
彼女だって、いちばんに愛されたい、娘を心から愛して育てたいと思っていた普通の女性。
でも、ほかにも道はあるんだ、これが全てではない、ということに気づけなかったことが
最大の不幸の元凶だったのだと思います。
もし、プレシャスが男の子に生まれていたら、この一家の現在はどうだったのだろうとも…
観客動員が見込めないだろうに、この作品を2週間限定ながら上映してくれたシネコンに心から感謝です。
投稿: 悠雅 | 2010年6月 5日 (土) 19時51分
>悠雅さん
この一ヵ月ほど、あまりに忙しすぎてブログ関係が全体的に滞り気味なためお返事が遅くなってしまい申し訳ありません。
無事ご鑑賞することができたようで何よりです。
我が家も都内まで出ていかずとも少し遅れて
良い作品をかけてくれる劇場が近くにあるのですが、
そういう劇場は公開予定のラインナップを見るのが
毎回に楽しみになりますよね。
この映画は鑑賞前から、
多分良い作品なのだろうなとは思っていたのですが、
その期待を全く裏切らない作品でしたね。
最初は嫌悪感でいっぱいになったプレシャスの母でしたが、
終盤であれだけの説得力を持って自分の心をさらけだした
モニークの演技は本当に素晴らしかったです。
プレシャスは母になることで力強さを手に入れますが、
男の子だった場合のことを考えると、
また違った物語が描かれるんでしょうね。
投稿: ANDRE | 2010年6月 8日 (火) 00時33分