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2010年6月13日 (日)

「告白」 湊かなえ

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

告白

湊かなえ

双葉文庫 2010.4.
(original 2008)

本屋大賞の受賞でも話題になっていた1冊が映画化を受けてさらに人気を博しているということで、どんなものかと思って手に取ってみました。文庫になるの早かったですよね。

学内で幼い我が子を亡くしてしまった教師がホームルームで生徒たちに向かって、娘の死の真相を語り始める・・・。

これ、本当に本当に申し訳ないんですが、本屋大賞という賞への信頼度がちょっと下がってしまったというか、正直、それほど面白いとは思えませんでした。

次々に語り手が変わって事件への思いを告白していくという形式自体、全く目新しいものではないし、こういう形式の作品だったら『藪の中』(芥川)とか『パレード』(吉田修一)とかのほうがよっぽど面白いと思う。

まず、第1章の森口の語り口調が我慢できないくらいに好きになれなくて、何度も読むのをやめたくなってしまったんですよね。こんな口調の教員とか普通に嫌なんですけど・・・。ま、ただ、この嫌な感じが森口というキャラクターそのものを表しているのであれば、なんとも上手い書き方なのかなという解釈も可能ですが。

その後、次々と語り手が変わっていくんですが、まず、そこまで衝撃的なことは起こらないし、もうちょっと人間の他人には見せない裏側の顔の恐怖などの内面に迫ってくるダークでえぐい語りを期待していたのに、そういうのもかなり軽めで、非常にスラスラと読めてしまう文章の軽さとあいまって、最後までとことん軽い小説だなぁという印象で終わってしまったというか。

もうちょっと人間不信になるような恐ろしい告白が読みたかったなぁと。

あと、追い詰められていく登場人物たちの語りが、特に第四章とか、スピード感はあるのかもしれないけれど、ちょっとやりすぎというか、うっかり笑ってしまいそうになってしまった自分・・・。

全部で6つの章がありますが、好きだったのは第2章かなぁ。第1章を読み終えた後、語り手が変わるということは知っていたんだけど、第1章の後日譚を一人の少女が語るという展開になるとは思わなかったので、それが面白かったのと、優等生的な少女の中にある闇が静かな語りの中にちらほらと見え隠れする感じが結構好きでした。

文庫本の最後に映画版の中島監督へのインタビューが掲載されてるんですが、そちらはものすごく面白かったです。中島監督の作風とこの作品とが自分の頭の中で全然結びつかなかったんですが、そのあたりについて語っているところを見て、ちょっと映画版も観て観たくなりましたし。

そうそう、「世直しやんちゃ先生」っていうネーミングの絶妙さはかなりツボで、上手いなぁと。

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コメント

お、私もちょうど「告白」読み終わったところです。つまらんとは言わないのですが、軽いってのは同意です。というかなにげに、本屋大賞っていつも割と微妙じゃないですか?w

で、やはり私も中島監督の映画見たくなりました。なんか社会現象になりつつあるだのなんだの。公開1週間で社会現象と言われてもなんだかなーですが、むしろどういう解釈で映画化したのか非常に気になります。

あと全然関係ないですが、7月からの土曜ドラマ「鉄の骨」が面白いッスよ!

投稿: だだ | 2010年6月15日 (火) 22時54分

>だださん

コメントどうもありがとうございます。

自分も最後までちゃんと読めたので、
つまらなくはないけど、
そんなに面白くもないという感じでした。
やっぱり軽いですよね。

映画、やたらと流行ってるのを見ると、
逆に地雷な様な気がしてしまう天邪鬼な自分ですが、
中島監督の作品だというのはやはり気になるので、
そのうち観てみようかなと思ってます。

7月のドラマは三木聡やクドカンもあって
久々に心躍ってます。
鉄の骨、NHKの社会系ドラマはこのところ名作が多いので
チェックしておきます!オススメありがとうございます。

投稿: ANDRE | 2010年6月19日 (土) 00時07分

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告白湊 かなえ双葉社このアイテムの詳細を見る 今回は、湊かなえ『告白』を紹介します。デビュー作の割には読ませる文章力があるし、第1章の衝撃の告白「愛美は事故で死んだのではなく、このクラスの生徒に殺されたのです。」以降どうなるのかなと思いながら読むことができました。主人公は加害者A,Bを観察し続けたといっても良いでしょう。それで、反省しているかどうか、罪の重さを感じ取ることが出来たかどうかを監視続けた。 章ごとに語り手が違います。被害者の親であり、担任の教師や加害者A,Bやクラスメートの美月やBの... [続きを読む]

受信: 2010年6月23日 (水) 19時50分

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