「上海」 横光利一
上海 横光利一 岩波文庫 2008.2. |
万博が開催されているということで、上海気分を小説で味わってみました。
舞台は1920年代の上海。銀行に勤めていたもののあるできごとをきっかけにクビになってしまう参木と、マレーシアで材木業を営む甲谷の2人は古くからの友人同士で、上海ではしばしば行動を共にしていた。あるとき2人は共産党員の女性、芳秋蘭と出会うのだが・・・。日系紡績企業でストライキが起こった五・三〇事件を題材に上海に生きる人々を描く。
うーん、どちらかというとあまり面白くなかったかなぁ。
19世紀~20世紀初頭の上海の租界を舞台にした小説と言うと、カズオ・イシグロの「わたしたちが孤児だったころ」を思い出すんですが、この作品は後世になってから当時の上海を描いたのではなく、その時代に実際に上海にいた著者によって書かれているので、街の様子や、世界中の人が集まっている文化風俗的な記述はとても楽しめました。
しかし、肝心の物語が・・・。
これも当時の上海情勢を良く知っていると、もっと深く読み込めるのかもしれないけれど、社会的な部分には知識不足もあってどうも深く入り込めないし、色恋沙汰に関してはなんとも退屈な印象だったんですよね。
主人公的な人物は出てくるんですが、上海と言う街全体が主人公という印象のある作品だったかなぁ、と。
そんなわけで、今回は短めにまとめて終わります。
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