映画「THE WAVE ウェイヴ」
die welle ドイツ 2008 2009年11月公開 DVD鑑賞 |
劇場公開されているときにとーっても観たかったんですが、過去に劇場で観た「es」が結構トラウマになっているので、なかなか勇気が出なかった1本です。
高校の夏の特別実習で教師のベンガーは「独裁」を扱うことになる。現在のドイツにおいて、ファシズムが起こるはずがないと言う生徒たちに向かって、ベンガーは試しに授業内で独裁政権のロールプレイをしようと持ちかける。
生徒たちは授業内では独裁者の役であるベンガーの命令に従うよう強制され、生徒たちも最初は冗談半分で授業に参加していたが、徐々に集団の一体感に酔いしれるようになり・・・。
これはアメリカで実際に起こった事件をベースにした作品らしいですが、心理学的な実験を行った結果とんでもない事態に陥ってしまうというのは、完全に「es」と同じ。「es」もアメリカで起こった事件をドイツで映画化したものでしたが、この作品も全く同じ流れになっているところがまた興味深いところです。
しかもこの作品においては、ファシズムを扱っている点でドイツにおいて映画化されたことに強いメッセージ性が感じられました。
「集団」は時に安心感を与えるものではあるけれど、やはりいきすぎるとちょっと怖い。ただ、この映画、子供たちが徐々にはまっていくというよりかは、気づいたらみんながはまってました、という感じで、迫りくる不気味さみたいなものがあまり感じられなかったかなぁ。
ただ、ラストの集会シーンは、動き始めた歯車の恐怖をまざまざと見せつけられて、最終的な落とし所も、現代を生きる我々に対して、非常に強いメッセージを持って、ファシズムの本当の怖さを教えることに成功していたと思います。
そして、一番怖いのは、これが実話ベースだということ。独裁を自分が受け入れるなんてことはあり得ない、という我々観客の思いを代弁していた生徒たちがほんの数日でその考えを変えてしまうってのは、実話だと言われてしまうと、非常に恐ろしいですよ。
ところで、制服、集団での起立や礼、発言するときは手を挙げて立つなども含めて、日本の学校ってここであげられた全体主義の様子に近いことを行いますよね。結局、学校というところは集団でいることの不自由さも目立ってしまって、それをそこまで良いものだとは感じられなくなってるけど、別の形で小さなグループで群れる人が多いですよね。日本はどちらかというと集団意識が強いし、我々は大なり小なり様々な集団に属しているので、そんなことを考えつつ鑑賞すると、ここで描かれている恐怖についてより深く考えさせられる作品なのかもしれません。
劇中に描かれるように、心が弱っている隙間にするりとこういうものが入り込んできて、それを拠り所にしてしまうような人物が沢山出てきてしまうと、もっともっと恐ろしいことが起こるんだろうなというのも強く感じられました。
教師を演じたユーゲン・フォーゲルはケストナーの原作を映画化した「エーミールと探偵たち」では悪役のグルントアイスを演じてましたね。ドイツでは有名な役者さんなのだろうか。
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