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2010年7月24日 (土)

「失われた町」 三崎亜記

失われた町 (集英社文庫)

失われた町

三崎亜記

集英社文庫 2009.11.
(original 2006)

ちょっと不思議で奇妙な世界で楽しませてくれる三崎作品。手軽に楽しめるエンタメ小説は嫌いではないのでどんな長編になってるのかと楽しみにして読んでみました。

30年に一度、どこかの町の住民がまるごと消えてしまう「消滅」という現象の起こる世界が舞台。月ヶ瀬という町の消滅を中心に、その消滅で家族や親しい者を失った人々、思いがけず消滅に関わることになった人々、管理局で「消滅」に関する仕事をする人々の姿を描く群像劇。

三崎亜記の作品の魅力は良くも悪くも「軽い」エンターテイメント小説であることだと思っていて、気軽に不思議な世界を味わえるのが好きだったんですが、この作品は、これまでの軽さがぐっと抑えられていて、読みながら途中何度か置いていかれそうになりパラパラと読み返す場面も多かったです。

読む前は、「町が消える」というできごとに直面した人々を感傷的に描く作品なのかと勝手に思っていたのですが、いくらでも感動的な盛り上げ方ができそうな題材にも関わらず、意外にも、淡々とした空気の作品で、変に盛り上げることもなくSF要素の強い群像劇になっていました。

いつもながらこの作家は、我々の住む世界と非常によく似ているんだけれど、どこかが少しだけ違っているという世界を描くのがとても上手いですね。この作品は単に町が失われるという要素だけではなく、「分離」など、それだけでもSFシリーズが作れてしまえそうな要素も多く絡んでいて、作者の作り上げた世界観はなかなかのもの。しかし、それをちゃんと把握するのがなかなか大変だったのも事実。これまでの作品と比べて、設定が複雑すぎて入り込みづらい。

あと、エピローグとプロローグを入れ替えるという構成は面白いんだけど、そのせいでますます複雑な設定が分かりづらくなってしまっていて、序盤は割とストレスも多かったです。

しかも最後まで読んでもどうもすっきりしない部分も多くて、ちょっともやもやした読後感でした。町の消失の設定があえてあいまいな形でしか提示されていないんですけど、そこがこの作品のキーだと思うので、その曖昧さがそのまま物語のすっきりしなさにつながっていたように思うんですよねぇ。

エピソードとしては「分離」ネタが好き。

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