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2010年7月18日 (日)

映画「告白」

告白 オリジナル・サウンドトラック

告白

日本

2010

2010年6月公開

劇場鑑賞

原作を読んだときに、文庫の巻末に収録されていた監督インタビューがとても面白く、映画版も是非観てみたいと思ったので劇場鑑賞してきました。(原作の感想

舞台はとある中学校。理科教師の森口(松たか子)は終業式の日に生徒たちに向かって衝撃の告白を行うのだが・・・

中島監督の作風と原作小説とが頭の中でどうもうまくつながらなかったので、はたしてどのような映画になっているのかとドキドキしながらの鑑賞でしたが、これが意外や意外、見事なまでによくできた映画化でした。

非常に原作に忠実に映画化していたんですが、原作を読んだときに、自分が思わず笑いそうになってしまった部分や、遠い目になってしまったような部分なんかがこの映画ではばっさりとカットされていて、エピソードの取捨選択もかなり良かったなと思いました。

原作の一番の感想はとにかく軽い小説だということだったんですが、中島監督のスタイリッシュで軽快な演出が、見事に原作の「軽さ」にはまっていたのが成功の理由ではないかなぁと。

冒頭の森口先生の告白。原作を読んだとき、彼女の口調がどうも気に入らなくて、第1章を読んでいるときに途中何度も読むのをやめてしまおうかなと思ったくらいなんですが、この部分、映画だと、彼女の話を聞く生徒たちの学級崩壊っぷりがすさまじくて、森口という教師がもともと生徒たちから信頼を集めるような人物ではなかったということが感じられたのが良かったです。自分の感じた森口先生への違和感を生徒たちが見事に体現してくれたというか。

この映画、原作とは違って、途中部分が時系列に進んで複数の告白が並行して描かれてましたが、これもコンパクトに分かりやすく物語をまとめるという点ではとても上手かったと思います。

ウェルテルが「みずほ」を連発する際のKYな感じがかなり強調されていたのも面白かったですね。ウェルテル関連だと、タンバリン持って踊ってる場面がやたらとノリノリなのがとても印象深かったんですが、エンドクレジットに「タンバリン指導」というのを発見して、あのノリの良さは指導の賜物か!と一人納得しちゃいました。

<ネタバレっぽくなりそうなので反転>

あとこの映画版、森口がファミレスを出た後に涙する場面が加えられてましたが、この場面の挿入によって彼女が理性を保っているのではないかと感じられて、その結果、ラストにおける彼女の行動が単に少年を脅かすための虚言なのではないかという解釈の可能性が強まっていたように思いました。

原作を読んだときは確実に彼女は実行したんだなと思ったんですが、映画では言葉だけで実際にはやってないのかなという気持ちのほうが強かったんですよね。映画では牛乳の件の解釈も原作とは変わっていたし、何より、ラストに電話を持って彼女が登場したってことは、彼女はその瞬間、体育館の近くにいたわけで、そしたら、本当に爆破したかどうかを見届けることは不可能だったのではないかと。

映画では少年Aの描き方も原作より同情できるようになっていたので、全体的に人間というものをもっと優しく捉えた作品になっていたように思います。少年Bのラストも曖昧にぼかしていたし。

そんなわけで中島監督の作品の解釈はなかなか面白かったんですが、たまに演出にやりすぎ感があったのも事実で、特に一番最後の巻き戻しは、意外な伏線に驚きつつ、いくらなんでもちょっとやりすぎではないかと。映像としては面白いけれど、あまりの豪華絢爛演出に思わず笑いそうになってしまいましたよ・・・。

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