映画「借りぐらしのアリエッティ」
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借りぐらしのアエリエッティ
日本
2010
10年7月公開
劇場鑑賞 |
小学校の時にトトロが公開されたようなジブリ世代なもので、ジブリの新作と聞くとやはり心躍ってしまいます。
心臓の手術を控えた少年、翔は療養のために大叔母の暮らす屋敷に1週間滞在することになる。屋敷にやってきた日、翔は庭の草陰に小人の姿を見かける。
屋敷の地下には14歳の小人の少女アリエッティが両親とともに暮らしていた。小人たちは、人間の家から生活に必要なものを借りてくる「借りぐらし」をしており、人間にその姿を見られてはいけないという厳しい掟のもとで生活していた。
そんな中、アリエッティの姿が翔に見られてしまったことが発覚し・・・
この映画、かなり好きです!
近年のジブリ作品(「もののけ姫」くらいから)って変に説教臭いメッセージが前面に出過ぎていたり、無駄に話を小難しくしていたりで、観終わった後、結局なんだかよく分からなかったということも多かったんですが、この作品はとにかくシンプルにまとめていました。大作と言う感じではないけれど、TV放送の度にちょっと観てみたくなるような長く愛される作品になるんじゃないかなぁ。
メッセージも押しつけがましくなかったし(やや唐突な台詞がちょっと浮いてたけど)、音楽も映像も美しくて、シンプルなストーリーを抒情的に描いていたのがかなり良かったです。セシル・コルベルの音楽はかなり良かったなぁ。サントラ欲しい。
冒頭の「借り」(狩りと掛ってるところがまた良い)の場面、アリエッティの初めての冒険を観ている我々にも体感させてくれる見事な映像で、終始ワクワクしてしまいました。この場面もそうなんですが、お茶を入れる場面なんかにしても、ぱっと見、人間の世界と区別がつかなくなりそうな「小人の世界」が、見事に表現されていて、小人たちの暮らしを体験できるテーマパークにきているかのような面白さがありましたね~。鑑賞しながら、小人たちの世界に関してあれこれと空想が広がって、物語では描かれていない、世界観の広がりを感じることもできたし。
物語はシンプルではあるんだけど、翔とアリエッティが恋に落ちるという安易な展開ではなくて、異なる種属同士、互いの存在に興味は持ちながらも、究極的なところで相容れないという描き方をしていて、翔の無邪気な善意が結局はアリエッティたちの生活を破壊してしまうというのは、なかなかに興味深いところでした。
ちょっと難を言えば、たとえば、アリエッティがひもにつかまって上昇する場面など、もうちょっとその場面を観たいなと思うのに、あっさりと場面転換してしまうような部分がちょいちょいあって、もう少し、一つ一つをゆっくりと見せてくれても僕はかまわなかったなぁ。
一方で、カラスの場面は過剰に動的で微妙に浮いてるように思ったんですが、(てか普通に怖かったよ)、こういう場面は何故か無駄に尺が長めっていう。
この作品同様、「となりのトトロ」も大したストーリーが無い作品と言ってもかまわないと思うんですが、「トトロ」には観る者を惹きつけてやまない魔法がかかっているのに、この作品はそれがあまり感じられなかったんですよね。やっぱり、「静」の演出は上手いけど、「動」の演出がちょっとつまらないのかなぁ。トトロは「動」の上手さが半端ない。
こういうところが新人監督と宮崎駿の違いなのかなぁと思いつつ、作風としては嫌いではないので、ジブリの将来に期待をよせることができる作品だったと思います。「耳をすませば」以来、久々にぐっときましたよ。
あと、カラスの場面でのドタバタもそうなんですが、小人だという確信を持ちながらいきなり鼠業者を呼ぶとか行動も意味不明な上に、醜く描かれていたハルさんが、ちょっと強引なキャラ設定だったようにも思うんですが、劇場で子供たちが彼女の行動に一喜一憂し、大笑いしたり、怒ったりしていたので、「子供向け映画」のキャラクターとしてはよくできていたのかもしれません。
ところで、原作がイギリスの作品だとはいえ、アリエッティたちの暮らし何故西洋風なんですかね。途中で登場する同じ小人のスピラーは名前こそ和風ではないけれど、アリエッティたちとは異なる文化圏の小人という感じだったから、アリエッティ一家の祖先は遠い昔にヨーロッパからわたってきたとかそういう設定なのだろうか。
そして、見ていて、 何度も心の中で突っ込んでしまったのは、都内であの屋敷に住んでるってどんだけ金持ちなの!?てことですね。いや、庭どころか、林も敷地内なんですよね?ドールハウスも普通に高級品そうだったし。
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一部のシアターには、エグゼクティブ・シートと呼ぶ豪華シートがある。
幅も広いし、隣との間もゆったりで、テーブルも付いているが、値段が高い。
(ポイントカード会員は通常料金)
空いているからと言ってかってに座るのは倫理的に問題がありますよ、おばあさん。
孫の教育上もあまり良いとは思えませんが、、、。
さて、映画は、スタジオ・ジブリ作品。
夏休みとあって子供連れでにぎわっていた。
*
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★★★
美しい緑が映えまくる外、家の中の家具、小人の世界のギミックな構造と書き込まれた世界が素晴らく、音楽と相まっていつものジブリ以上に癒し系。
ベテラン役者揃いの声もいつも以上になかなかはまっててイイ。
ストーリーに特出したところは無いんだけど、監督が宮崎駿じゃないせいかひと騒動展開があっても気持ちがかき乱される事はなく、のんびりほっこり観ることができたところが新鮮。
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----これってジブリ の新作だよね。
監督の米林宏昌って初めて聞く名だけど…。
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地上にやってくる一連のシーンを描き、
宮崎駿をうならせたらしい。
その宮崎駿は、今回、脚本と設定を担当。
それを基に、キャラクターを設定し、絵コンテを完成させたのだとか…」
----で、単刀直入に聞くけど、映画はどうだった?
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コメント
TBありがとうございます。
一言での評価はかなり違いますが、個別のご意見には賛同する点が多いです。
>「動」の演出
空と雲が出てきませんでした、というか主人公が飛ばなかった。
小人と言う時点ですでにありえない話なんですが、
設定や展開が現実的でファンタジー性にやや欠ける気もしました。
投稿: KGR | 2010年8月25日 (水) 06時05分
こんにちは。
アリエッティたちの世界の描き方は、とっても楽しくて可愛くてよかったんですけど、
お母さんの性格(も声も)がイマイチ好きになれなかったことと、
ハルさんの描き方もちょっと不可解だったことなどがあって、
実は、心の底から大好き!と言える作品ではなかったのが正直なところでした。
それが、原作ではどう描かれているんだろうと思う原因かもしれません。
でも、シンプルでわかりやすくて、何度でも観たいシーンもあって、
いろんな意味でジブリらしい作品、TV放送されたらきっとその度に観るのかもしれませんわ。
投稿: 悠雅 | 2010年8月25日 (水) 17時10分
>KGRさん
コメントどうもありがとうございます。
今回、空を飛ぶシーンの代わりとして用意されたのが、
リフトに乗って上昇するシーンだと思ったのですが、
その部分でもっと高揚感を味わいたかったなぁと思いました。
現実的な部分が多い描写は
我々の暮らしているすぐ近くにある世界という感じがあったので、
自分はそこまで気になりませんでした。
この作品の感想、賛否両論様々で、
結構色々な意見が出ているので、
そういう意味でもなかなか面白いですね。
*
>悠雅さん
コメントどうもありがとうございます。
アリエッティの母は
肝っ玉母さんが多いジブリ作品にあって
かなり異色の存在でしたね。
そのあたりはやっぱり監督が違う影響なんでしょうか。
原作はその後のアリエッティたちの暮らしも
描かれているようなので、
細かい設定なども気になりますし、
シリーズを是非読んでみたいですね。
投稿: ANDRE | 2010年8月26日 (木) 13時45分