映画「ペルシャ猫を誰も知らない」
Kasi Az Gorbehayeh Irani Khabar Nadareh ( no one knows about Persian cats ) イラン 2009 10年8月公開 劇場鑑賞 |
音楽を題材にした映画で気になるものはやはり劇場で、ということで渋谷にて鑑賞してきました。平日の昼間でしたが、中高年層を中心に一人客が多くて、意外にもなかなかの盛況ぶりでした。
イランでは、反イスラム的な音楽を演奏することが許されず、政府がミュージシャン達の活動を厳しく規制している。
そんな中、インディーズ・ロックを愛するアシュカンとネガルは国を離れて、ロンドンでライブをしようと、偽装ビザとパスポートを手に入れるために、便利屋のナデルのもとを訪れる。
彼らの音楽を気に入ったナデルは、彼らが国を離れる前にコンサートを開くことができるよう協力するようになり、彼らは一緒に音楽をするための仲間を探し、アンダーグラウンドで活動しているミュージシャン達を訪ねて回るのだが・・・
この作品、一応フィクションということになっていますが、扱っている題材が題材なだけに、バフマン・ゴバディ監督によりゲリラ的に撮影され、作中には実際に音楽活動をしているミュージシャンたちが多数登場し、主演の2人と監督は、撮影終了後にイランを離れたとのことで、ドキュメンタリー的要素も多く含まれ、それが故に、心に響く力強い作品になっていたと思います。
歌詞の内容に関して規制が加わるってのはまだ理解できるんだけれど、女性が3人いなきゃダメだとか、もしかしたらそれなりの理由もあるのかもしれないけれど、それだけ聞くと結構謎な規制も登場して、そんな中で自分のやりたい音楽、そしてそれを通して伝えたいことをしっかりと伝えようとする人々の凛とした姿は皆さんとてもかっこよかったです。
音楽活動が厳しく規制されているとはいえ、今の時代、インターネットなどもありますし、海外の音楽も大量に流入しているようで、作中に登場するミュージシャン達の音楽は、ジャンルもロックのみならず、ラップやら、伝統的な感じの音楽も登場し、バラエティに富み、どれもこれも、結構好きな感じの曲が多かったのが嬉しかったですね。シガーロスに憧れてるとか言ってたし。
まさに、音楽は国境を越える、というのを強く感じることができる作品でした。
作中では楽曲を流す場面の映像が、ミュージックビデオのようになっていて、物語の本筋とは関係なしに、現代のイランに暮らす人々や国の姿をとらえた映像がかぶせられていたんですが、この映像がまた色々なことを訴えかけてきていたように思います。ただ、作品の3分の1くらいがミュージックビデオだったような気がしないでもないですが(笑)。
登場するミュージシャンの中で一番ぐっときたのは、子供たちにギターで歌を教えていた青年。シェルヴィン・ナジャフィヤーンという名前とのこと。今後、どっかで活動していたらもっと音楽を聞いてみたい。
この映画、どのように終わるのかと思っていて観ていたんですが、ラストはかなりの衝撃で、あまりに突然すぎる展開に何が何やら良く分からずしばし呆然としてしまいました。しかし、安易に明るい描き方をするよりも、こちらのほうがメッセージ性は強いし、監督が作品にこめた思いが強く伝わったのも事実。しかし、それにしても、苦しい。
イランでゲリラ撮影というと思い出すのは、「オフサイド・ガールズ」(レビュー)。我々の「当たり前」が通用しない場所があるということ、広い世界を知ることができるのは、外国映画を観賞する一つの醍醐味ですね。
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コメント
いろいろと考えさせられますね。
鑑賞のし甲斐がある映画でした。
ラップがすごくうまくて、でもここに出てきたミュージシャンたちもみんな輝いてた。
彼らが望むように自分たちを表現できる日が来ますようにと、願ってしまいます。
投稿: rose_chocolat | 2010年8月26日 (木) 18時53分
>rose_chocolatさん
コメントどうもありがとうございます。
>鑑賞のし甲斐がある
まさにその通りでした!
ラップはペルシア語のラップが初めてだったので
そこにまず興味を持ちつつ、
パフォーマンスも聴きごたえがありましたね~。
こういう映画が作られてしまうと、
逆にますます国内での規制が厳しくなるのではと
いうのも心配されて、
彼らの明るい未来を祈らずにはいられませんね。
投稿: ANDRE | 2010年8月28日 (土) 00時29分