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2010年8月10日 (火)

「そんな日の雨傘に」 ヴィルヘルム・ゲナツィーノ

そんな日の雨傘に (エクス・リブリス)

そんな日の雨傘に
(Ein Regenschirm fur diesen Tag)

ヴィルヘルム・ゲナツィーノ
(Wilhelm Genazino)

白水社 2010.6.
(original 2001)

海外文学に限り、あまりに文庫落ちしなさすぎるので、業を煮やして月に1冊は文庫以外も可と自分の中のルールをゆるめた第2弾です。

そんなわけで、先日、国際ブックフェアにて購入した1冊。表紙のモノクロ写真からしてなかなか良い感じで、半分くらいはジャケ買いです。

主人公は恋人に逃げられ、定職には就かず靴の試し履きをしてレポートを書くという仕事をする46歳の男。街を歩きながら目についたものや、出会った人に関して、彼の頭に浮かぶ様々な思考や妄想をユーモアたっぷりに描き出す1冊。

どんなストーリーの作品なのかほとんど知らずに読み始めたので、予想をはるかに超えてユーモアにあふれた1冊だったことにビックリ。読みながら声を出して笑いそうになってしまった場面もチラホラありました。

他人が見れば、結構重い人生だと思うんだけど、のんきに皮肉たっぷりに構えている主人公のおかげで作品全体がほんわかムードになってるところが良いです。でもって、そこがまた悲哀ポイントになっているわけですが。

なんか鬱屈したインテリ男の妄想っていう感じは森見登美彦の「太陽の塔」がドイツ中年男になったような雰囲気だなぁとか思ってみたり。

以下、本書に登場する僕のツボにハマったネタをいくつか列挙。

・シュッ男

冒頭のこの単語の登場で一気に物語に引き込まれました。こういう勝手にあだ名つけて罵るのとかかなり好きです。

・綿ぼこり化

この比喩は本当に上手い!

・臨終コンパニオン

馬鹿馬鹿しいけど、言いたいことも良く分かる。

・沈黙時間表

こんなの人に渡した時点で偏屈者として避けられちゃうよ!っていう。でもちょっと有りかもとか思ってしまう自分。

・プロパガンダ<見捨てられた>

こんな表現なかなか思いつかないよなぁ。

・いまにも泣きそう限界

「きみはいま、いまにも泣きそう限界?ひょっとしたら、私が心境をずばりと言い当てたことに、ズザンネは大喜びするかもしれない。」

おっちゃん、最高です!

・回想術研究所

意外と上手くいくところがまた愉快。この関連で、「バックグラウンドマン」てのもとても心惹かれる話でした。TV観てると、こういう職業の人ってもしかしたらいるんじゃないかとか思ってしまいますよね。

 

他にも面白い表現やエピソードがいっぱいあって非常に興味深かったんですが、この物語をどのように閉じるのかと思っていたところ、ラストはなかなか幻想的な映像を見せてきて、彼の心を縛っていた様々な雑音が晴れていくようななかなか素敵なラストでした。

あと、自分はドイツ語が分からないので、もとがどのように書かれているのかは知りませんが、割と訳語が研ぎ澄まされているような印象を受けました。言葉のノリやテンポが良いのはこういう小説では結構重要だと思います。

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