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2010年9月

2010年9月25日 (土)

「宇宙飛行士オモン・ラー」 ヴィクトル・ペレーヴィン

宇宙飛行士オモン・ラー (群像社ライブラリー)

宇宙飛行士オモン・ラー
(Омон Ра )

ヴィクトル・ペレーヴィン
(Виктор  Пелевин)

群像社ライブラリー 2010.6.
(original 1991)

書店にて面白そうだなと思って見ていたところ、各所で話題になっていたので読んでみました。

主人公オモンは幼いころから宇宙に憧れ、航空学校へ入り、やがて、月面行きのパイロットとして飛行することになるのだが・・・

全編を通してページから溢れんばかりの不条理な必死さに溢れた作品で、ただただ圧倒されて読み終えたという感じでした。

物語のメインの月への飛行ってのがとにかくとんでもない内容で、これは是非読んで味わっていただきたいところなんですが、特攻隊的な手段やら、驚異の人力移動など、至る所にツッコミどころ満載なのに、もはや後戻りもできずに、まっすぐに月を目指す主人公の姿はものすごい読みごたえ。

そして最後に明かされる驚愕の事実も含めて、全部、現実にこういうことやってたんじゃないだろうか、と思えてしまうところが怖い。不条理な現実ってのは確実に存在しているし、していたんだろうな、と。

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2010年9月23日 (木)

映画「大男の秘め事」

gigante

ウルグアイ アルゼンチン 独 蘭

2009

第7回ラテンビート映画祭

 

「アベルの小さな世界」と同様、ラテンビート映画祭にて鑑賞。

ウルグアイの映画を観るのはもしかして初めてかも。

主人公はスーパーマーケットで夜間警備をしている巨漢のハラ。あるとき、監視カメラに映る夜間清掃員のフリアに一目惚れをしたハラは、やがて強い恋心を抱くようになり、フリアを尾行し始めるようになるのだが・・・

一言でいえばキモピュア可愛い映画。

ベルリン映画祭で3冠(銀熊賞、新人監督賞、アルフレッド・バウアー賞)に輝いたというだけあってなかなかに面白い映画でした。

ストーカーとなって惚れた女性をつけまわす男を描いた作品で、犯罪すれすれの行為に不快感を覚えてしまったら多分この作品を受け入れることはできないんじゃないかと。

ただ、ハラという男が本当にピュアで、常に一定の距離を保ちながら、「編み物の全て」(一番笑ったのはここかも)を片手に彼女には全く気付かれずに後を付け回して、ネットカフェでも映画館でも必死に彼女ばかりを見つめる姿は、同時に、見事なまでに彼の人の良さが溢れるように描かれていて、いつしか彼を応援したくなっている自分がいました。

と、言いつつ、リップクリームはさすがに自分もどんびきでしたが・・・。

影を絶妙に配置した映像もなかなか見ごたえがあって、テンポの良い尺の短さもあって、良質のCMを見ているような感覚のある作品だったように思います。

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映画「アベルの小さな世界」

abel

2010

メキシコ

日本未公開

第7回ラテンビート映画祭
(アジアプレミア)

 

丁度時間があって観に行くことができたので、新宿のバルト9で開催中のラテンビート映画祭に足を運んできました。

9歳の少年アベルは父がアメリカへ出稼ぎに行くと言ったまま音信不通となり、それ以来、口をきかなくなり、病院で療養を続けていた。そんな折、アベルは退院することになり、高校生の姉と幼い弟、そして母親の待つ自宅へと戻ってくる。

相変わらず口をきかないアベルを心配する家族だったが、あるとき、アベルが突然口を開き、あたかも自分が父親であるかのように振る舞い始める。初めは戸惑っていた家族だが、次第にそんなアベルの言動を受け入れるようになっていく。

そんな折、突然音信不通だった父が帰宅し・・・

監督は俳優としても活躍するディエゴ・ルナ。

アベル少年の両親の不和や貧困といった家庭環境が重く描かれる一方で、彼が突如、自らを父親だと思いこみはじめる場面は非常にユーモアに溢れていて、劇場全体に笑いが起こるような場面もチラホラ。終盤にはハラハラの展開も待っていて、結構盛りだくさんで面白い作品でした。

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2010年9月21日 (火)

映画「マイレージ、マイライフ」

マイレージ、マイライフ [DVD]

up in the air

アメリカ

2009

2010年3月公開

DVD鑑賞

ここ一ヵ月くらいの間にアカデミー賞の候補作が次々とDVD化されてますが、こちらもショーレースをにぎわせていた1本。

顧客の企業へと赴き、そこで社員へのリストラを宣告する仕事をしているライアン(ジョージ・クルーニー)は年間300日以上出張でアメリカ全土を飛び回り、いつしか1000万マイル貯めることを夢見るようになっていた。

そんなあるとき、本社では新入社員のナタリー(アナ・ケンドリック)が、直接現地へ赴くのではなく、インターネットを使い、テレビ通話によりリストラを宣告するシステムの導入を提案。出張が生きがいであったライアンは激しく反対し、上司の指示により、ライアンはナタリーの教育係として実際にリストラの現場へと彼女を連れ、出張に出ることになるのだが・・・

ほとんどストーリーに関する情報を得ずに観たので、単純に主人公が人間的な生活の歓びを見出していくという物語でもなかったので、最終的にどこに着地するのかを気にしながら結構面白く観ることができました。

リストラを宣告する仕事の難しさは、恐らくこちらの想像をはるかに超えるもので、だからこそ、こういう代理業も存在するんだろうけど、ベテランと新人の説得の仕方の違いなども、実際に自分がそれで納得できるのかどうかとは置いておいて、なかなか面白かったです。

ただ、軽快なテンポで描いているような感じではあるんですが、自分はいまいちその軽快さに乗ることができず、コメディとはいえ、リストラを扱う重さもあったりで、作品全体のテンションにも今一歩馴染めず。

ちょっと期待しすぎだったのかも。

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2010年9月20日 (月)

「武士道シックスティーン」 誉田哲也

武士道シックスティーン (文春文庫)

武士道シックスティーン

誉田哲也

講談社文庫 2010.2.
(original 2007)

部活を題材にした青春ものは小説も映画も漫画も結構好きです。特に野球とかサッカーとかではなくて、普段あまり読んだり観たりできない部活のときは、色々と興味津々。映画化もされた剣道小説のシリーズ第1作目。

香織は幼いころより剣道を始め、全中で準優勝した剣道のエリート。しかし、中学時代最後に参加した区民大会でまさかの予選敗退。

日舞から剣道に転向し、勝敗は気にせず、とにかく楽しく剣道をしていた早苗は、中学時代最後の区民大会で思いがけず公式戦での初勝利をおさめる。

2人は同じ高校に進学し、香織は自分を負かした早苗に強いライバル心を持つのだが・・・。性格も、剣道への姿勢も正反対の2人が、互いに近づき、ぶつかり、成長していく物語。

香織視点の章と早苗視点の章が交互に現れ、1つの物語を2人の主人公それぞれの視点から描いていくことで、2人の剣道や部活への姿勢や温度差などが非常に分かりやすく対比されて、テンポの良い語りもあって軽快に楽しめる爽やか青春小説の王道を行く作品でした。

ストイックに練習に励むのか、とにかく楽しさを追求するのかってのは部活において常に問題になってくることで、自分も全くの文化系ではあったけれど、高校や大学で何度もこういう問題に直面していたので、考え方の違う2人が歩み寄っていくのを読むのはとても興味深かったです。

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2010年9月15日 (水)

映画「瞳の奥の秘密」

 

el secreto de sus ojos

アルゼンチン

2009

10年8月公開

劇場鑑賞

アカデミー賞の外国語映画賞は毎年良い作品が多いので、今年の受賞作であるこの作品もとても気になっていました。

ブエノサイレスの裁判所を定年退職したベンハミンは25年前の事件を小説にしようと執筆を始める。

25年前、新婚女性が自宅で暴行を受け殺害され、ベンハミンは相棒のパブロや新しくきた上司のイレーネらと共に事件を捜査していた。彼らの活躍の甲斐もあり、事件は解決をしたかのように思えたのだが・・・

終盤に差し掛かるまで、つまらなくはないけれど、外国語作品賞を受賞するほどの作品かと言われれば、そうでもないかなぁ、なんて考えながら観ていたんですけど、ラストにガツーンとやられました。

ただの刑事モノの枠を超えて、鑑賞後にいつまでも、正義について考えさせられる深いテーマが盛り込まれていて、心をとらえて離さない作品でした。

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2010年9月 9日 (木)

エンタ☆メモ 8・9月号

こんにちは。

9月に入っても暑い日が続き、たまに涼しくなった日は土砂降りだったりで、過ごしにくい日々が続いていますがいかがお過ごしでしょうか。

8月の初めに怪我をした腕は未だに痺れるときがあり、さらに、先週から何やら中耳炎になってしまったり、体調の方もどうもすっきりしないのですが、なんとか気持ちだけは元気(?)に過ごしております。

そんなこんなで今月もちょっと遅れてしまいましたが、8月のまとめと9月の気になる作品をφ(..)メモメモ

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映画「ヴィクトリア女王 世紀の愛」

ヴィクトリア女王 世紀の愛 [DVD]

the young Victoria

イギリス

2009

2009年12月公開

DVD鑑賞

英国王室は映画のネタに事欠きませんねぇ。

自分が英国好きだということはこのブログでも何度も書いていますが、その中でも19世紀のビクトリア朝の英国は一番好きな時代なので、ヴィクトリア女王を描いた作品となったら観ないわけにはいきません。

19世紀ロンドン。ウィリアム国王の体調が思わしくなく、王位継承者となっている王の姪、若きヴィクトリア(エミリー・ブラント)を自らの手中におさめ、権力をつかもうとする人々の争いが激化していた。

ヴィクトリアの母のケント侯爵夫人は夫の亡き後、側に仕えるコンロイと親しくなり、2人はヴィクトリアに対し、王位を継承した際にはコンロイを摂政とするよう何度も説得を試みるが、ヴィクトリアはそれを受け入れようとはしなかった。

一方、ヴィクトリアの叔父であるベルギー国王は甥のアルバート(ルパート・フレンド)を英国へと送り、彼をヴィクトリアと恋仲にさせることで英国との強いパイプを得ようと画策するのだが、英国へと渡ったアルバートはヴィクトリアに本気で恋をしてしまう。

そんな中、いよいよヴィクトリアは即位することになり、首相のメルバーン(ポール・ベタニー)が彼女の側近として仕えるようになるのだが・・・

宮廷ものにありがちな女の戦い的な内容でもなく、ヴィクトリアが「エリザベス」ほど強い女性でもなく、彼女をめぐる周囲の男たちの政治的な策略が上手い具合にスパイスになっていてなかなかに面白い作品でした。もうちょい重厚でも良かったけど。

なんといっても、宮廷やら人々の衣装やらの素晴らしさは英国マニアにはたまりません。

アルバートも、あの「ロイヤル・アルバート・ホール」のアルバートか!とか思うと感慨深いですね。二人三脚の夫婦、とっても素敵です。

ただ、ラブストーリーとして観たとき、それほど物語に起伏あるわけでもないので、そこまではまることはできなかったかなぁ。英国王室の恋愛はドロドロなことが多い中、とても順調に育まれる愛だったしなぁ。全体にヴィクトリアとウィリアム国王、ケント侯爵夫人&コンロイとの関係を描いた場面のほうが印象が強かったです(これは年長キャスト陣の好演によるところも大きいかも)。

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2010年9月 4日 (土)

来日公演「イン・ザ・ハイツ」

イン・ザ・ハイツ

in the heights

来日公演

2010年9月2日 14時

東京国際フォーラム ホールC

(original 2007)

TVでトニー賞授賞式を見たときからずっと気になっていたミュージカルの来日公演とあってとても楽しみにして観に行ってきました!

2008年のトニー賞で作品賞をはじめとして4部門に輝いた作品ですが、こんなに早く来日公演が実現するとは!!この勢いで、あれもこれもみーんな来日しちゃってー!

そんなわけで、舞台の感想を。

舞台は、独立記念日の前日7月3日、ヒスパニック系の移民たちが暮らすマンハッタンの北部にあるワシントン・ハイツ。

ドミニカ共和国からの移民、ウスナビは食料品店を営み、隣のヘアサロンに勤めるヴァネッサに思いを寄せながら、再び故郷へ戻ることを夢見ていた。そんな折、地域一番の秀才で街中の期待を一身に背負いスタンフォード大へ進学したニーナが夏休みでワシントンハイツの両親のもとへと帰ってくる。しかし、彼女は大学で落第してしまい、奨学金を打ち切られて、大学を辞める決意をしていた。

街の皆から慕われ、両親を亡くしたウスナビを育てたアブエラ、リムジン会社を経営するニーナの両親とその会社で働くベニーなど、ワシントンハイツに暮らす住民たちを、ラテンのリズムとヒップホップにのせて描いていく。

■作品全体の感想

会場に入って最初に驚いたのは、その見事なまでのセット。

割とシンプルなセットの作品が多い中、細かく作り込まれた街並みは本当に素晴らしくて、舞台の上には確かにワシントンハイツが存在していました。

でもって、この作品はストーリーが良いですね。ミュージカルでストーリーに感心したのは久々です。ヒット映画をミュージカル化した作品がやたらと増えている昨今のミュージカル業界において(ここ10年のトニー賞作品賞受賞作はほとんどが原作付。)、こういうオリジナル作品が出てきたことは非常に価値があると思います。

ミュージカルに出てくるヒスパニック系の移民たちといえば、『ウェストサイドストーリー』がすぐに思い浮かぶんですけど、WSSの名曲「アメリカ」で歌われた移民たちの夢と憧れが50年の時を経て果たしてどのようになっているのか、ここで描かれる移民たちの暮らしの厳しさは非常に興味深いです。「アメリカ」とはまるで逆に、故郷へ戻ることを夢見る主人公達の姿、しかし、アメリカでの夢に再びかけてみようとする姿がとても印象深かったです。

あと、劇中で猛暑になってる場面が、まさにこの夏の日本とオーバーラップして妙に共感できましたね(笑)

ミュージカルとしては、初めてラップを取り入れたことでも話題になっていた作品ですが、ミュージカルとラップ、別に相性は悪くないです。

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2010年9月 2日 (木)

「しずかな日々」 椰月美智子

しずかな日々 (講談社文庫)

しずかな日々

椰月美智子

講談社文庫 2010.6.
(original 2006)

書店で見かけて表紙にひかれてなんとなく手に取った1冊。野間児童文芸賞と坪田譲二文学賞をW受賞した作品とのこと。

母と2人暮らしの少年、光輝は運動が得意なわけでも勉強がよくできるわけでもなく、家でも学校でもおとなしく過ごしていた。五年生になりクラス替えがあると、後ろの席に座るクラスのムードメーカーである同級生の押野と親しくなり、それをきっかけに光輝の人生が大きく変わり始める。

やがて、母が遠い街で新しい仕事を始めることになり、転校を拒否した光輝は近所に住む祖父の家で暮らすようになるのだが・・・

ストーリーのメイン部分が夏休みの物語になっていることもあって、8月の休日に童心にかえって一気読みするのにはもってこいの1冊でした。

初めての親友、初めての野球、初めての祖父との暮らし、小学五年生という年齢を考えるとやや遅いのかもしれないけれど、主人公が大きな世界へと船出しはじめる希望に満ちた作品で、純粋に面白かったです。

しずかな日々というタイトルだし、「人生は劇的ではない」、と作中でも語られるのですが、主人公の少年の人生は決して平凡ではないと思うし、むしろ、かなりドラマチックなことが沢山起こっているんですよね。しかし、だからこそ、普通の日常が鮮やかに感じられるし、彼の過ごすしずかな日々が煌めくのかな、と。

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