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2010年9月 2日 (木)

「しずかな日々」 椰月美智子

しずかな日々 (講談社文庫)

しずかな日々

椰月美智子

講談社文庫 2010.6.
(original 2006)

書店で見かけて表紙にひかれてなんとなく手に取った1冊。野間児童文芸賞と坪田譲二文学賞をW受賞した作品とのこと。

母と2人暮らしの少年、光輝は運動が得意なわけでも勉強がよくできるわけでもなく、家でも学校でもおとなしく過ごしていた。五年生になりクラス替えがあると、後ろの席に座るクラスのムードメーカーである同級生の押野と親しくなり、それをきっかけに光輝の人生が大きく変わり始める。

やがて、母が遠い街で新しい仕事を始めることになり、転校を拒否した光輝は近所に住む祖父の家で暮らすようになるのだが・・・

ストーリーのメイン部分が夏休みの物語になっていることもあって、8月の休日に童心にかえって一気読みするのにはもってこいの1冊でした。

初めての親友、初めての野球、初めての祖父との暮らし、小学五年生という年齢を考えるとやや遅いのかもしれないけれど、主人公が大きな世界へと船出しはじめる希望に満ちた作品で、純粋に面白かったです。

しずかな日々というタイトルだし、「人生は劇的ではない」、と作中でも語られるのですが、主人公の少年の人生は決して平凡ではないと思うし、むしろ、かなりドラマチックなことが沢山起こっているんですよね。しかし、だからこそ、普通の日常が鮮やかに感じられるし、彼の過ごすしずかな日々が煌めくのかな、と。

程度の差こそあれ、誰の人生にも劇的な瞬間というのは存在しているし、小説の題材になるのもそういう出来事ばかりですけど、この作品は巧みにそこを排除して、しずかな日常の煌めきを切り取っているところが魅力ですね。

ちょろっと登場する後日談的な部分含め、主人公のお母さん、大丈夫なのか!?と思わせる設定なのもなかなか面白い。こういうのって児童書では結構珍しいように思います。

あと、この作品、当時の主人公が知り得なかった情報は我々にも与えられないというスタイルになっているので、裏の設定を想像しながら読むのもなかなか楽しかったですね~。

ただ、読んでいて非常に違和感を感じてしまった点が。

これ、大人になった主人公の回想と言う形式で書かれているのに、どう考えても子供時代の主人公が語っているかのような口調&世界の描き方だったんですよね。ところどころでそれがものすごく気になってしまったのがちょい残念。上述の、「当時の主人公が知り得なかったことは書かない」というスタイルも、大人になってからの回想だということを考えるとちょっと不自然だったのは否めません。

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コメント

劇的な性格な作者だし、静かじゃないね。

衝撃を与えるのも、子供向けの作品も・・・。
不思議な作家さんですね。作風が面白いです。

そういえば椰月さん、新作「シロシロクビハダ」が出たそうです。
うってかわって、白塗りの化粧の話ですが、こちらは
いろいろ秘めてる感があって、おもしろいですよ。
ネットを検索していたら、椰月美智子さんを解説する記事も。
http://www.birthday-energy.co.jp/
秘密めいたからくりを生み出すのが得意みたいですね。
あと、小説家になろうとした動機が面白い。

作家さんって、なんかちょっとおもしろいですね。
・・・というか、作品にもご自身の性格がにじみ出るんですね~。

投稿: 雪菜 | 2013年2月 5日 (火) 22時15分

コメントどうもありがとうございます。

これは結構印象深い1冊で、読み終えてから時間がたってますが、結構心に残っています。

文庫化された作品も増えてきたみたいなので、
また何か違う作品を読んでみようかなと思ってます。

投稿: ANDRE | 2013年2月23日 (土) 00時46分

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