「宇宙飛行士オモン・ラー」 ヴィクトル・ペレーヴィン
宇宙飛行士オモン・ラー ヴィクトル・ペレーヴィン 群像社ライブラリー 2010.6. |
書店にて面白そうだなと思って見ていたところ、各所で話題になっていたので読んでみました。
主人公オモンは幼いころから宇宙に憧れ、航空学校へ入り、やがて、月面行きのパイロットとして飛行することになるのだが・・・
全編を通してページから溢れんばかりの不条理な必死さに溢れた作品で、ただただ圧倒されて読み終えたという感じでした。
物語のメインの月への飛行ってのがとにかくとんでもない内容で、これは是非読んで味わっていただきたいところなんですが、特攻隊的な手段やら、驚異の人力移動など、至る所にツッコミどころ満載なのに、もはや後戻りもできずに、まっすぐに月を目指す主人公の姿はものすごい読みごたえ。
そして最後に明かされる驚愕の事実も含めて、全部、現実にこういうことやってたんじゃないだろうか、と思えてしまうところが怖い。不条理な現実ってのは確実に存在しているし、していたんだろうな、と。
あと、ミチョークという主人公の友人が前世について語る場面があるんですが、この箇所、とても面白くて、単独の短編として読んでも楽しめるんじゃないかと。でもって、ミチョーク君のその後と言ったら・・・。
あと謎の日本人も、ほんのチョイ役なんだけどものすごいインパクト。そもそも特攻隊がヒントになってる話だからなぁ。
ソ連のことをもっと知っていれば、もっともっとこの作品にこめられた皮肉を味わうことができたんだろうけど、残念ながら自分はそこまで詳しくはないので、本当の魅力にたどり着くことはできていないと思うんですが、それでも、確かなインパクトを感じることのできる作品でした。
巻末の解説が結構丁寧で、理解が深まったのも良かったです。
シュヴァンクマイエルっぽい感じで映像化したら面白そう。
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