映画「アベルの小さな世界」
abel
2010
メキシコ
日本未公開
第7回ラテンビート映画祭
(アジアプレミア)
丁度時間があって観に行くことができたので、新宿のバルト9で開催中のラテンビート映画祭に足を運んできました。
9歳の少年アベルは父がアメリカへ出稼ぎに行くと言ったまま音信不通となり、それ以来、口をきかなくなり、病院で療養を続けていた。そんな折、アベルは退院することになり、高校生の姉と幼い弟、そして母親の待つ自宅へと戻ってくる。
相変わらず口をきかないアベルを心配する家族だったが、あるとき、アベルが突然口を開き、あたかも自分が父親であるかのように振る舞い始める。初めは戸惑っていた家族だが、次第にそんなアベルの言動を受け入れるようになっていく。
そんな折、突然音信不通だった父が帰宅し・・・
監督は俳優としても活躍するディエゴ・ルナ。
アベル少年の両親の不和や貧困といった家庭環境が重く描かれる一方で、彼が突如、自らを父親だと思いこみはじめる場面は非常にユーモアに溢れていて、劇場全体に笑いが起こるような場面もチラホラ。終盤にはハラハラの展開も待っていて、結構盛りだくさんで面白い作品でした。
父アベルが姉に勉強のことで説教をしたり、弟の世話をしたり、姉の恋人を邪険に扱ったり、そして、実の父と「大人の会話」をしたり、どのシーンもとっても微笑ましい。
話をするようになった息子の姿を歓び全身で受け止める母、初めは鬱陶しく感じつつもいつしか心を開く姉(不在だった父への思いもあったんだろうね)、そして何よりも、「父」としてのアベルに絶対の信頼をおきなつく弟の姿は、彼らの環境や、アベルが病気であることを考えると、どこか切なく胸をしめつけられはするんだけど、愛に溢れていて見ていてとても心地が良かったです。
アベルが母をそっと抱き締める場面なんか本当にぐっとくるんですが、その翌朝の「大切な話」がまた微笑ましくて大爆笑。
アベルとその弟を演じた子役たちは実際に兄弟だということなんですが、2人とも演技そのものが初めてだったとのこと。しかし、それを全く感じさせない見事な演技は素晴らしいとしか言いようがありません。
終盤、もしかしてこの映画はとても悲しい終わりを迎えるのだろうかと思わせる展開になるのですが、ほっと一安心もつかの間、ラストはどこか心にしこりの残る終わり方。アベル少年に明るい未来があるといいな、と願いたいですが、はたして・・・。
派手さはないけれど、いつまでも記憶に残るような良作だったと思います。全国公開されるといいなぁ。
| 固定リンク
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 映画「天使の分け前」(2013.06.13)
- 映画「屋根裏部屋のマリアたち」(2013.05.29)
- 映画「ハッシュパピー バスタブ島の少女」(2013.05.27)
- 映画「リンカーン弁護士」(2013.05.06)
- 映画「偽りなき者」(2013.05.05)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント