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2010年10月26日 (火)

舞台「ファンタスティックス」

ミュージカル「ファンタスティックス」("The Fantasticks")

@ bunkamura シアターコクーン

10月15日

1960年にオフブロードウェイで初演されて、40年以上のミュージカルの最長ロングラン記録を持つ作品を、宮本亜門が演出する舞台。作品そのものにもとても興味があったのと、宮本亜門演出の作品を一度生で味わいたいというのもあって観に行ってきました。

16歳のルイザ(神田沙也加)と大学生のマット(田代万里生)は隣同士に住み、互いに愛し合っていたが、2人の父親(モト冬樹・斉藤暁)が犬猿の仲であり庭に高い壁を建ててしまったため、親の目を盗んでは壁越しに愛を語り合っていた。

ところが、この父親たち、実は大親友で、子供同士を結婚させようと考えていた。子供は親の言うことに反発するものであると考えた2人は、犬猿の仲を演じ、2人の交際を強く反対することで2人の愛を強くさせていたのであった。

計画の仕上げとして、自然な流れで和解し2人の結婚を認めるように持っていこうと、2人はルイザをわざと誘拐させ、それをマットに救わせる形で両家が和解するというシナリオを思いつく。謎の男エル・ガヨ(鹿賀丈史)に誘拐犯の役を依頼し、劇役者のヘンリー(二瓶鮫一)とその付き人モーティマー(矢部太郎<カラテカ>)らと共に狂言誘拐を企てるのだが・・・

ほとんど予習などせずに行ったんですけど、アットホームな空気のとても楽しい作品でした。

以下、ものすっごい長い感想です。

<全体的な話>

ステージ上にも客席を設けて、菱形の八百屋舞台を観客がぐるりと取り囲むようになっているんですが、セットと呼べるものはほとんどなくて、非常にシンプルな舞台だったんですが、それが逆に観る者のイマジネーションを刺激して何もない空間に確かに広がる風景を感じさせてくれる演出だったように思います。

そして、舞台上だけではなく、客席の通路も縦横無尽に駆け巡って芝居が展開して、時には客いじりなんかも交えることで、非常に観客との距離が近い作品になっていたのも面白かったです。

オープニングでは、「はーい、神田沙也加でーす!」みたいな感じで役名ではなくて自分の名前を名乗りながら登場して、観客の前で衣装に着替えてから舞台が始まるというのも、一瞬かなり面喰ってしまったんですが、客との距離を縮めるのに一役買っていたように思います。

ただ、後半に進むにつれて、客いじりなども次第に排除されていくんですが、前半部分との空気感の違いが生む違和感がどうしても拭いきれなかったかなぁという感じも。ま、そもそものストーリーが後半は明るさを失うんですが。

 

<ストーリーの話>

ストーリーはロングラン記録を持っている作品というだけあってなかなか興味深い展開をみせましたね。台詞にシェイクスピアの引用がちらほらと出てくるのが結構ツボでした。

いわゆるハッピーエンドの場面で第1幕が終了し、第2幕をどのように持っていくのかと思っていたら、この物語の神髄は「ハッピーエンドの後」のほうにあったことが分かり、なるほどそうきたか!という感じの驚きがありました。とんとん拍子のハッピーエンドなんてものはやはり存在しないわけで、人は何か痛みを得なければ先に進むことができないというのがテーマになっているのは非常に面白かったです。

しかし、テーマの面白さがあったものの、その消化の仕方が上手かったかというと、そのあたりがちょっと微妙だったかなぁと。エル・ガヨがルイザに世界を見せる場面が唐突すぎて、急に置いていかれてしまったように感じてしまいました。そのままラストの真のハッピーエンドまでに行くのもちょっと強引だったかなぁ。

 

<役者さんの話>

特にベテラン勢を中心に芸達者な役者さんたちがそろっていたこともあり、非常に見ごたえがあったと思います。特にモト冬樹&斉藤暁の父親コンビに溢れんばかりの仲の良さを感じることができて最高に面白かった!

鹿賀氏はもう言うまでもないですね。今回結構前方の席で見られたので、5メートルほどしか離れていない距離でそのオーラを感じられたのが純粋に嬉しかったです。

若者カップルですが、田代氏は汗がすごかったのが気になってしまって・・・。自分も相当汗っかきで舞台で何かしようものならとんでもないことになるんですが、目に入ったりしないのかとか余計なところが心配になってしまいました(笑)。舞台上で汗をうまく処理するコツとかあれば是非お伺いしたい。

神田沙也加はメンバーの中では一番物足りなかったかなぁ。唯一の女性メインキャラなので、非常に重要な役どころなんですが、元気は伝わってくるものの、自分的にはもうちょっと心に響くものが欲しかったかなぁと。特に歌が・・・。高音とか。コンディションが悪かったのかなぁ。

そして、一番笑わせくれたのはなんといっても二瓶氏ですよ。もうあっぱれとしか言いようがない。さらに彼を見事に引き立たせてくれたのが矢部氏。思っていた以上の活躍っぷりでした。そして、生矢部はその痩せっぷりがテレビで見る以上にインパクトが。

あと忘れてはいけないのが、大道具のほとんど出てこない舞台に於いて、大道具の役割を見事に果たしていたミュートこと蔡暁強氏。この方、劇団四季時代に「キャッツ」のミストフェリーズを演じているのを観たことがありますが、そのときも非常に美しいダンスをされていたのがとても印象的で、今回も、そのしなやかなかつダイナミックで時に力強い彼の動きが見事に生かされていたと思います。

<音楽の話>

ロングランミュージカルというだけあり音楽は非常に素晴らしいです。

この記事を書いている時点で観終えてから10日ほどが経過していますが、今でもふとした拍子に劇中の曲が頭の中でループしはじめることがしばしば。

特に好きな曲は、父親たちの愉快なダンスが印象深かった「ネバー・セイ・ノー!!」、ラテンビートがたまらない「誘拐ソング」、ジャズテイストの渋さが妙に頭に残る「熟れすぎたプラム」あたりでしょうか。

観ているときはそれほど心に残ったような印象はなかったんだけど、その後最も頭の中でループしてるのが「熟れすぎたプラム」だったりします。

そんなわけで楽曲は非常に良かったんだけど、歌になると途端に滑舌が悪くなって歌詞が非常に聞き取りづらくなるのがちょっと気になりましたね。あと田代氏の歌い方とマイクとの相性があまり良くなかったような気が。

あと、歌詞の日本語訳をするとき、英語部分の歌詞を下手にカタカナで織り込むのはその部分だけが非常に浮いてしまっていてとても不自然だと思う。これは日本語ミュージカル全般に言えることだけど。日本語でやるなら妙に翻訳調にせずに、完全に日本語でやったほうが良いと思うんだけどなぁ。

 

<最後に>

あれこれ書いたものの、全体的にはかなり満足しました。ラスト、魔法のような演出が施されていて、口を開けたままボーっと見とれてしまいましたし。

ミュージカルって派手な演出が多いけれど、こういうシンプルで距離の近い舞台というのも楽しいなぁと思えたので、ますますミュージカルの魅力にはまってしまいそうな予感です。

 

さて、次のミュージカル鑑賞予定は12月の「Avenue Q」。可愛いぬいぐるみさんたちと会えるのが楽しみ♪

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