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2010年11月

2010年11月28日 (日)

映画「ツイステッド・ルーツ」

Vaarat juuret

フィンランド

2008

フィンランド映画祭にて鑑賞

「プチ・ニコラ」を鑑賞した時、同じ劇場(恵比寿ガーデンシネマ)で開催されていたフィンランド映画祭の作品も鑑賞してきました。10代のころに日本で暮らした経験を持つという女性監督サーラ・サーレラ氏によるトークショーも聴くことができました。

主人公ミッコはアンティーク家具店を営みながら、妻のミルミハ、思春期の娘ピラ、そして、幼女の中国人少女ルミと4人で暮らしていた。

ミッコは遺伝性疾患であるハンチントン病が進行し、意識障害や運動障害などが起こるようになり、店の経営も危なくなっていた。そんな折、長く音信不通になっていたミッコの前妻との息子であるサカリが現れ、しばらくの間一緒に生活をすることになる。

ミッコは子供たちに一族が遺伝性の病気を患っていることを打ち明け、子供たちは動揺し、そんな中でサカリにもまたハンチントン病の初期症状が現れるようになる。サカリにはまた、別れた妻との間に長らく会っていない息子がいた。

そして、互いに反目し合いながらも、同じ病を抱える家族の中で、幼女のルミは自らのルーツを求め、部屋の壁に穴を掘り続けていた・・・

冬のフィンランド北部が舞台ということもあり、画面に映る街の映像なども寒々しいんですが、描かれるドラマもまたどんよりと重いものでした。

アメリカ映画なんかでは近頃は血のつながりこそなくとも家族の絆は生まれるのだというようなことを描く作品が多いですが、この映画では、本人たちが望まなくとも、確実に血でつながれた家族と言う絆があることを描いているところに、フィンランドでの家族観を感じることができたように思います。家族の絆や愛情に溢れた映画でしたね。

そこにアンティーク家具や遺伝性の病の存在がまた上手くきいていて、物は捨てられるけれど、血の繋がりは切れることがないということが、ややあからさまではあるけれど、分かりやすく描かれていたように思います。

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2010年11月27日 (土)

「エロマンガ島の三人」 長嶋有

エロマンガ島の三人 (文春文庫)

エロマンガ島の三人

長嶋有

文春文庫 2010. 7.
(original 2007)

個性的な作品が集まった長嶋有の異色短編集といった趣の1冊。「○○の▲人」という書名ですが、同作者の「ジャージの2人」とは全く関係ありません。

表題作は、雑誌の企画で、名前だけはやたらと有名なエロマンガ島へ実際に行ってそこでエロマンガを読むことになった男たち3人の旅の様子を描いた一編。作者が聞いた実話をベースにしていることもあり、普通に「旅行記」として楽しむこともできる内容でちょっとゆるい空気感とあわせてまぁまぁ楽しい作品ではあるんですが、小説としてはちょっとパンチが弱い印象でした。

ところが、ラストに収録されている「青色LED」という作品がこの表題作につながるように書かれているんだけど、この作品によって「エロマンガ島の3人」という作品の世界がぐぐっと深まって、元々感じていた物足りなさが見事に払拭されました。

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2010年11月23日 (火)

映画「17歳の肖像」

17歳の肖像 コレクターズ・エディション [DVD]

an education

イギリス

2009

2010年4月公開

DVD鑑賞

英国好きとしては見逃せない1本。本当は劇場で観たかったんですが、ようやくDVDにて鑑賞。英国作品ではあるんですが、監督は「幸せになるためのイタリア語講座」のデンマークの女性監督ロネ・シェルフィグ。

1961年のロンドン。主人公は、オックスフォード大を目指す16歳の中産階級の娘、ジェニー(キャリー・マリガン)。ある日、彼女は路上で声をかけられた2倍以上歳の離れたデイヴィッド(ピーター・サースガード)と親しくなり、やがて、彼とその友人のダニー(ドミニク・クーパー)とその恋人であるヘレンと共に出歩くようになり、大人の遊びを覚え、デイヴィッドへの恋心を強くしていくのだが・・・。

期待通りに良い作品でした。

表面のストーリーだけをなぞれば、幼い娘がちょっと苦い経験をして大人への階段を上るという、特に目新しくもない内容なのですが、そこに英国の階級社会が上手いことスパイスとして効かされていて、中の下のジェニーの家族の階級コンプレックスが彼女やその両親の行動に説得力を持たせていたのが良かったです。

学問と文化的な教養、品性など、恵まれた生活をする上で本当に必要なものは何なのか、ジェニーが出会う大人達がしっかりと描き分けられていて、様々な人間性を描いていたのも面白かったですね。

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2010年11月15日 (月)

「水晶萬年筆」 吉田篤弘

水晶萬年筆 (中公文庫)

水晶萬年筆

吉田篤弘

中公文庫 2010. 7.

もともと「十字路のあるところ」のタイトルで単行本が出ていた作品に加筆修正を加えて改題した1冊。もともとの作品は十字路の写真に物語がつけられているというものだったのを、物語部分だけをまとめて短編集にしている模様。

いつも通り吉田氏の書く物語のちょっとレトロな香りと溢れんばかりの優しさがつまった短編集ではあったんですが、自分としてはいまひとつハマれなかったかも。理由はよく分からないんですが。

あえて写真を排除して書きなおしたということですが、物語そのものも言葉が大きなテーマとして扱われていたように思います。一番好きだったのは最終話、「ルパンの片眼鏡」かなぁ。でも「黒砂糖」の怪しげな空気も嫌いじゃないです。

読んでいたら、それぞれの物語に本来添えられていたという写真がどのようなものなのかがとても気になってしまいまったので、機会があったらオリジナル版も読んでみたいと思います。

記事がたまっていることもあり、短くまとめてみました。また時間が取れたらどこかで書き足すかもしれません。

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2010年11月 9日 (火)

映画「プチ・ニコラ」

 

le petit Nicolas

フランス

2009

2010年10月公開

劇場鑑賞

この秋は気になるヨーロッパ映画が沢山あって、ちょうど時間が取れたので何か1つ観ようと思いこの作品を選んでみました。フランスの子供映画って結構面白いものが多くてお気に入りなのです。

原作はフランスでは知らない人はいない国民的ベストセラー「プチ・ニコラ」シリーズ。

小学校の作文の時間に将来の夢を書くように言われたニコラは悩んでいた。愉快なクラスメートたちと大好きな両親と過ごしている今の時間が楽しくて仕方なく、将来のことなど考えることができないのだ。

ある日、クラスメートに弟が生まれ、ニコラは弟なんか生まれても両親の愛情を持っていかれ良いことなど何もないという話を聞く。そんな折、両親の様子がおかしいことに気付いたニコラは自分にも弟が生まれるのではないかと勘違い。さらにそのタイミングで父親がやたらと森にピクニックへ行こうと誘い始め、ニコラは自分が捨てられるのではないかと思い始める。

友人たちに悩みを打ち明けたニコラは、自分が捨てられないよう様々な作戦をしかけるのだが・・・。

一方、ニコラの両親は父親の昇進をかけて、社長夫妻を夕食に招こうと準備に追われてた。

学校での友人たちとのエピソードを交えながら、弟問題に揺れるニコラと夕食会でてんやわんやする両親をユーモアたっぷりに描いていく。

面白かったー!!こういう映画大好きです!

かわいいし、笑えるし、皮肉もあるし、ドタバタもあるし、とにかくセンスが良い。

原作のイラストをふんだんに使用した立体絵本仕掛けのアニメーションになっているオープニングから最高にワクワクさせてくれて、最後まで中だるみすることなくたっぷり笑って、幸せなひと時を過ごせる作品でした。

舞台設定は恐らく作品が最初に描かれた1960年代頃なんだけど、「サザエさん」や「ちびまる子ちゃん」なんかと同じように、そういう時代をベースにしつつ、ユートピア的に美化された「古き良き時代」といった感じの描き方で、どこか普遍的に郷愁を誘う何かを感じさせてくれるところが良かったです。

ところどころ漫画的な演出もちょいちょいあるんだけど、それが幼稚な感じにならないギリギリのところで保たれていたのも上手かったなぁと思います。日本で「サザエさん」や「ちびまる子ちゃん」を実写にすると、変に漫画っぽくなりすぎて実写としては不自然だと思うことが多いですが、この作品はそんなこともなくちゃんと実写映画として完成していました。

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2010年11月 7日 (日)

「白檀の刑」 莫言

白檀の刑〈上〉 (中公文庫) 白檀の刑〈下〉 (中公文庫)

白檀の刑
(檀香刑)

莫言

中公文庫 2010.9.
(original 2001)

以前から読んでみたかった莫言の小説が文庫化したので早速読んでみました。在中国作家の現代小説を読むのは初めてです。

舞台は清朝末期、1900年の山東省高密県。鉄道を敷設するドイツに対し、民衆を率いて反対運動を起こした男が逮捕され、極刑に処されることとなる。物語は、地方の伝統芸能である猫腔の調べにのせて、その様子を5人の視点から描き出していく。

趙甲
長年北京で首席処刑人を務め、地元に戻ってきたところで、孫丙の処刑を任され、その誇りにかけて一世一代の極刑をてがける。

孫丙
元々は猫腔の役者。ドイツ軍に対し強い恨みを持つようになり、民衆を率いて反乱を起こす。

銭丁
高密県の知事。

眉娘
孫丙の実娘であり、趙甲の義娘、そして、銭丁の愛人。

小甲
趙甲の息子で、処刑の手伝いをすることになる眉娘の夫。

作品は3部構成。第1部は4つの章から成っていて、4人の登場人物それぞれが語り手となって、孫丙の処刑を目前にしたそれぞれの胸の内を語る。第2部では、神の視点となる第3者の語り手により、処刑のきっかけとなった事件のあらましが丁寧に描かれ、最後の第3部では再び5人の語り手により、実際の処刑の様子が描かれていく。

面白すぎる!

あまりの面白さに上下巻合わせて文字通りの一気読みでした。

全てが濃くパワーにあふれた作品で、世間狭っ!な感じの強引な人物設定も全く気になりません。

この作品で描かれる人間の生き様というのは時空を超越して読み手の心に訴えかけてくる力強さにあふれていたように思います。1000年後の人が読んでも抜群に面白い小説だと感じられる作品なのではないでしょうか。

それぞれの入り乱れる思いを一度読ませておいてから、客観的に事件を描き、最後に再び一人称語りに戻すというちょっと特殊な3部構成は、ちょっとあざとすぎるのではないかとも思うんだけど、物語を伝える上で最大限の効果をあげるように書かれていて、とにかく語りが上手い。

こういう語りの上手さは、小説というメディアでしか堪能することができないので、漫画や映画では決して味わうことのできない最高のエンタ―テイメントを味わうことができたように思います。

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2010年11月 2日 (火)

5周年

Andre's Review ★ 5周年

11月2日は当ブログの開設記念日。

月日の流れるのは早いもので、当ブログも無事5周年を迎えることができました。この5年間、ブログを通じて大変充実したエンタメライフを過ごすことができました。

毎日チェックしてくださっている皆様、定期的に観てくださっている皆様、本日たまたま通りすがってしまった皆様、当初は自分のメモ代わりになればという気持ちもありましたが、これだけ長い期間続けることができたのは、読者の皆様のおかげです。大変感謝しております。

また、コメントを残して下さった皆様、TBをいただいた皆様、こちらから送った無言のTBを返して下さった皆様、いつもいつも大変な励みとなっております。実生活でもネットでも極度の人見知りなのですが、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

このところ更新が遅れ気味で実際に観たり読んだりしてからブログ記事になるまで一ヵ月くらいのブランクができてしまっているのですが、今後も10周年を目指してマイペースに記事を更新してまいりますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

そんなわけで、毎年恒例の年間人気記事ランキングをどうぞ。

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2010年11月 1日 (月)

エンタ☆メモ 10・11月号

先月、エンタメモの記事を書けず、一月あいてしまいましたが、一応、月刊のエンタメモです。

つい先日まで夏が続いていると思っていたら、いつの間にやら冬到来と言う感じで急に冷え込んでまいりましたが、皆さまはいかがお過ごしでしょうか。

そんなこんなで9月&10月の消費エンタメと11月の気になる作品をφ(..)メモメモ

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映画「しあわせの隠れ場所」

しあわせの隠れ場所 [DVD]

the blind side

アメリカ

2009

2010年2月公開

DVD鑑賞

今年の賞レースで話題になった作品。サンドラ・ブロックは大好きな女優さんの一人なので、彼女のアカデミー賞受賞はかなり嬉しかったですね~。

両親と引き離され、孤独な日々を送っていたマイケル・オアー(クイント・アーロン)。スバ抜けた体格と運動能力を持つ彼は、スポーツ選手として、なんとか高校に編入してもらえたのだが、学力の遅れは著しく、白人だらけの学校に馴染むことができずにいた。

あるとき、帰るあてもなく真冬の路上を彷徨っていたマイケルは、同じ学校に子供たちを通わせているリー・アン(サンドラ・ブロック)に声をかけられ、彼女の家で一晩を過ごす。やがて、その生い立ちを知ったリー・アンは大手ファーストフードチェーンを経営する夫ともに彼の後見人となることを決意するのだが・・・

とにかく爽やかで明るい気持ちになれるし、割と単調な物語にもかかわらず飽きさせない展開で、噂にたがわず良い作品でした。アメフトのルールをもっとちゃんと知っていたら後半の盛り上がりに一緒に熱狂できたかと思うとちょっと残念。

この物語は、フィクションだと言われれば、「そんなバカな」と思ってしまうような、あまりにできすぎたサクセスストーリーなんですが、これが実話だってのはかなりの驚きです。

本当に現代のお伽噺のような物語なんですが、観ながらずーっと思っていたのは、「どんだけ金持ちなの!?」っていう。結局、大豪邸に暮らし、人が一人増えても全く困らないような生活をしていたからこそできた人助けであって、確かにリー・アンの取った行動は素晴らしいんだけれど、子供を含めてパーフェクトすぎる家族といい、あまりに「お伽噺」っぽすぎるような気が。(関係者が皆さん御存命なので、実際には悪い部分があったとしても描けないというのもあるんだろうけど。)

ただ映画の中でもその辺がしっかりととらえられていて、自分の行為が偽善なのではないかと悩んだり、彼らの行為に疑いがかけられたりする場面も描かれていたのがなかなか良かったなぁと。それによって、黒人社会(貧困層)の抱える問題だけではなく、裕福層の人々への厳しい問題提起もなされて、単なるサクセスストーリーだけでは終わらせない深みが出ていたように思います。

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